表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガンズ・アンド・バッドメディスン 〜異世界の傭兵さんはお薬の力で無双する〜  作者: ユッケ
Attack of The Masquerade

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

116/189

お前を殺す。

「マスカレードねぇ。この道で食ってくなら一度はその名前を聞く。うちらと同じはぐれ者の集まりではあるが、あいつらはちと過激すぎる」


 ペニーの声色は楽しそうである一方で、どこか面倒くさそうな仕草で後ろ髪を搔き上げると、それを見てソリドは鋭い眼差しを向ける。


「だからこうしてお前達に頼んでる。同じクズ共の中でも群を抜いて優れたお前達にだ」


 それを聞くとペニーは愉快そうに頷き、言葉を返す。


「成程、なかなか言ってくれるじゃないか。なぁに、心配しなくたって依頼は受けてやるさ。勿論それはお前さん達が筋を通してくれるならの話だけどな」

「報酬の話をしているのなら心配いらない。私はとても律儀な性格なんだ。相手が誰であろうと約束は守るさ」

「それが口だけじゃないことを祈ってるよ」

「六人の幹部を一人消すたびに百万払おう。頭のフェイスレスを消せば三百万くれてやろう。文句はあるまい」


 なかなか太っ腹な話だ。一つのパーティを壊滅させるだけで九百万の収入になる。

 この上ない条件ではある。だが逆に言えばそれだけマスカレードというパーティが危険な存在なのだという裏付けでもあった。


「お前達も知ってはいるだろうがマスカレードの幹部の殆どは顔が知れていない。奴等は犯行のとき、決まってマスクを被るからだ。だから、必ず死体は残しておくことだ。マスクも一緒にな」

「それでマスカレードの幹部だって判別が出来るのかい? 死体やマスクなんていくらでも用意出来ると思うけど?」

「そんなつまらないことをして、後でどうなるか考えられない程馬鹿な集団ではないことを願うばかりだがね」

「聞いただけだよ。ただぶった斬れば済むことをややこしくはしないさ」


 すぐにでも話は纏まりそうな雰囲気だった。

 俺はその様子を眺めながら隣のアンリにふと浮かんだ疑問を投げかけた。


「あいつらさ、どうやって顔も知らない奴の身元判別するんだ? 俺等が本物の死体連れてきても身元が分かんないなら本物か偽物かなんて判別がつかないんじゃないか?」


 隣に立つアンリはテーブルの二人に目を向けたまま抑揚のない声で俺の疑問に答えてくれる。


「死体さえ残っていれば冒険者の核から身元を追える。そいつの経歴を調べればどういう人生を送っていたかは大方分かる。勿論、それだけではそいつがマスカレードに所属していたという裏付けには不十分だが、もし向こうからケチつけてきたなら、そのとき後悔するのは向こうの方さ」

「つまりそれって……」

「待て、向こうの話が少し荒れそうだ」


 俺の問いを遮ってアンリはペニーの方を指差した。

 アンリに倣って俺もそちらを見やると、そこには険しい顔をしたペニーがソリドに向けてガンを飛ばしていた。


「私の聞き間違えか? 期日は三日、そう聞こえたが?」


 今にも殺しに掛かりそうな威圧感を醸し出していたがソリドは一向に構わずペニーに返事を返す。


「聞こえなかったか? 期日は三日、そう言ったんだ」


 風向きが悪い方に向かっているのはすぐに分かった。

 目に見えてペニーの機嫌が悪くなっていた。


「奴さんの居所の情報はなし、顔も出せる情報がない。でも三日以内に奴等を皆殺しにして欲しいと?」

「そうだ。普通の依頼をお前達に頼みはしない。普通の人間には不可能なことだからこそ、お前達に頼むんだ」

「お前さん、私達を神様か何かと間違っていないかい? それとも頭に脳味噌詰まってないのか、どっちだい?」


 ソリドから一つ大きな溜め息が漏れた。

 呆れて物も言えないといった具合だったが、次にソリドは悟すように、ペニーに告げた。


「私は大局的に物事を見ている。私達には時間がないのだ。確かに難しい依頼かもしれない。だが不可能ではない。お前達の持てる力を総て使い、最適な判断を下せば決して無理な依頼ではない筈だ」

「随分とまぁ、知ったような口を叩くじゃないかい?」

「知ってるさ、お前達で飼ってる化物を暴れさせれば本来三日もいらない筈だ」

「……何の事だか」

「言わないとわからないか? ザグール・ガードナーの事を言っているのだよ」


 刹那、部屋に静寂が訪れた。

 最近、殺気というものが分かってきた。

 それは心から『ブッ殺す』という意思表示を相手に伝えること。

 それが恐怖や居心地の悪さを感じさせて、周囲に影響を与えるのだ。

 今のペニーがまさにそんな感じだ。視線だけで人を殺せそうな三白眼でソリドを睨め付け、骨まで剥き出しになりそうなぐらい硬く握った拳を椅子の肘掛に乗せている。


 ペニーの表情から彼女の次の行動を予測してみる。

 殺すか、殴るか、どちらにしても荒れるだろう。


 俺はどうすべきか。

 止めるか、一緒に殴るか、どちらにしても誰かに怒られるだろう。

 俺も少し苛立ちを覚えている。ザグールこそ、このパーティの良心だと思っている俺としてはソリドの発言を黙って見過ごすわけにはいかなかった。


 ペニーは微かに残った自制心を働かせて、静かにソリドに告げる。


「一つ忠告しておく。次にうちのパーティの人間を化物呼ばわりしたら、お前を殺す」


 ここでソリドも素直に頷いておけば場は丸く収まったかもしれない。

 だが彼は選択を誤った。


「気に障ったか? なら良いことを教えてやる。奴は冒険者のブラックリストからはとうに消去されてる。この意味がわかるか? 私達は奴を人というカテゴリから外したんだ。言うなれば、奴はモンスターだ。今ここで射殺しても誰からも咎められない。寧ろ感謝されるんだよ。街に巣食うモンスターを一匹駆除したとな。たかが化物呼ばわりがどうした? 今生きてるだけでも私に感謝して欲しいぐらいだとも」


 ちょうどペニーと以心伝心したところだ。

 この初対面の男、今ここで殺そう。


 有り難いことに、まだ薬の効果は残っていた。

 椅子をなぎ倒して、ソリドに牙を剥くペニーを見るや俺は、拳を固め、床を蹴った。


 その直後だった。

 突如真正面から飛来した黒い影が俺を捩伏せ、壁へと押さえつけた。

 何が起きたか理解するより早く、俺を宥めるように目の前から声がした。


「やー、ダメですよバッキーさん。せっかくのお客さんなんですから、殺しちゃもったいないです」


 話しかけられて初めて、俺を止めたのがアシュリーだと理解する。

 目にも留まらぬ速さで距離を詰めてきたアシュリーは片腕で俺の喉元を押さえつけ、下から覗き込むようにして、へらへらと妖しい笑みを飛ばしていた。


「それにペニーさんはともかく、バッキーさんが保安部に喧嘩売っちゃったら今度こそ死んじゃいますよ?」

「……ペニーはいいのかよ?」

「いいんですよあの人は。どうせ私じゃ止められないですし。それに、ああいう時の為にドクターがいるんです」


 俺と同時にペニーも飛び出した筈なのに、場は嫌に静かな状況だった。

 アシュからペニーの方へと視線を移すと、そこには完全に意識が吹っ飛んでるペニーが、背後からドクターに襟首を摘み上げられていた。

 意識のないペニーの腰には琥珀色の液体の入った注射器が刺さっていて、それは紛れもなくドクターが刺したものだった。

 半壊した椅子にペニーを座らせると、ドクターは剣呑な眼差しでソリドを睨むと、静かに告げる。


「大型モンスター用の麻酔を打った。人間に打てば二ヶ月は目覚めないが、こいつなら五分で目覚めて、今度こそ確実にお前を殺すだろう。俺の言いたいことわかるか?」


 ソリドの口から溜め息が漏れた。

 五分以内にさっさと出て行けという忠告の意味を理解したからだ。


「依頼の方はどうする? まだお前達のリーダーから回答を受け取っていないのだが?」

「言うまでもねえ。受けてやるさ。受けねえなんて選択肢は元からないんだろ?」

「お前は話が早くて助かるよDr.マルク」


 話は決まり、ソリド達は早々に立ち去ろうとしていたが、椅子から立ち上がろうとするソリドをマルクが制した。


「それと、次に俺の前でザグールの話したら、客だろうとお前さんには消えてもらう」

「肝に銘じておこう」


 マルクの警告を一蹴するようにソリドは席を立ち、踵を返した。


「三日後、奴等の首を揃えておくことだ。そうでなければお前達こそ消えてもらうぞ?」


 そう言い残してソリドは部下の二人を連れて早足で去っていった。


 保安部の連中が去った後、暫く誰も話そうとしなかった。

 アシュリーの拘束から解放されると、俺は軽く彼女の肩を小突いた。ただ一方的にアシュリーにしてやられたことへの照れ隠しだ。

 アシュリーもそれをわかっていて意地悪く笑みを浮かべていた。

 次こそは、などと考えていると、こめかみを揉んで考え事に耽っていたドクターが不意に静寂を破った。


「さて、どうしたもんかな。とりあえずアンリ、ザグールを呼んでこい。久方振りにパーティ全員でミーティングだ」


 アンリは返事代わりに頷くと部屋を出て行き、ザグールを呼びに行った。

 アンリの隣にいた俺とドクターの目が合うと、ドクターはフラットな感情をこちらに向けて、問いかけてきた。


「聞いたまんまだ。頭使うのは苦手でも、クソ野郎の顔面を吹っ飛ばすのは得意だろ?」


 その言葉を受けて、思わず顔がにやけてしまった。

 ああ、結局はいつもとやることは同じなんだと、少し安心したからだ。


「任せとけよドクター、そういう単純なの大得意だぜ」


 軽い調子でひらひらと手を振っていると、ドアが開いてアンリと、続いてザグールが大きな体を縮めて部屋にやってきた。


 部屋に入ってくるなり、意識のないペニーを目にするとザグールは呆れ気味に首を振った。


「また暴れようとしたんだね。なんだか嫌な予感がしてたけど、僕もいた方が良かったかな?」

「いや、いなくてもこうして対処出来た」


 ドクターが素っ気なく答えると、ザグールへ椅子に座るよう促す。

 パーティ一同が揃い踏みだ。ザグールが椅子に座ると、俺達も倣って部屋の隅に置いてある椅子を引きずっていき、小さな輪を作るようにして各自腰掛けていく。


 そして、ドクターの宣言した五分が経過し、ペニーが意識を取り戻した。

3ヶ月も間が空き申し訳ない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ