表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガンズ・アンド・バッドメディスン 〜異世界の傭兵さんはお薬の力で無双する〜  作者: ユッケ
Underground Labyrinth and Sniper

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

100/189

ラウンド2

 

 その銃声を聴いた瞬間にアンリがどんな銃を担いできたかは理解した。

 この距離でも届く甲高い特徴的な炸裂音と嫌でも目立つマズルフラッシュを有してる銃なんて一つしかない。

 一直線に迫り来る弾丸を弾くのではなく、最小限の動きで躱す。

 首の横を弾丸が通り抜けていった先から俺の肌にビリビリと衝撃が走る。

 後方で着弾した地点で砲撃にでもあったかのように地表が弾け飛び、土塊が辺りに飛散する。

 俺はアンリの持つ銃に戦慄し、目を剥いた。


「対巨竜ライフル……!なんてもん持ってきてやがる」


 それはスナイパーの出せる火力の極致と言っても過言ではないだろう。巨大モンスターを狩る際のスナイパーの必携武器で、バオッという少し間抜けな発砲音が特徴だ。その威力たるや、小型のモンスターなら一撃で跡形もなく吹き飛び、四人が同じものを担いでいけばラスボスクラスの巨竜がものの数分で溶ける威力を誇っている。

 間違っても人に撃っていいものではない。当たったら薬を使った状態の俺でも無事では済まないだろう。


「アンリてめぇ! そんなに俺を殺したかったか!?」


 彼女の想いを知るには余りに遅すぎた。それを彼女は打ち明けようとはせず、俺はそれでいいと思っていた。今すぐじゃなくて彼女の心の準備が出来たとき、仲間として分かり合えたときに話してくれればいいだろうなんて考えてた。

 どうすれば良かったかなんてわからない。だが今やるべき事は確信を持って言える。


「来いよアンリ! 全部撃ってこい! それで俺が殺せると思ってんなら好きなだけ撃ってみろ!」


 目一杯足に力を込めながら俺とアンリの間合いを測る。二キロ程度なら何の邪魔もなければものの数分で詰められるだろうが、そう易々と近づかせてはくれないだろう。

 この距離なら弾が発射された後でもどうにか躱すことは出来る。だが距離が縮めばどうなるかは、俺にも分からない。

 ここで反射神経の限界に挑戦してみるのも良いかもしれないなどと馬鹿げた考えもそこまでにし、徐々に走る速度を速めていき、前傾姿勢を取ると、息を大きく吸い込んだ。


「お手並み拝見といきましょっか」


 俺が思いっきり地を蹴ると同時にアンリも二発目を発砲してきた。弾は俺の進行方向の手前に着弾し地を抉る。飛散した土の粒が降りかかり煩わしいもののそれだけだ。速度を維持しながらアンリがいつ撃ってきても対応出来るよう注意を向ける。

 すると彼方前方で何かが光り、連続して銃声が轟いた。頭で考えるより身体が動いていた。一瞬のブレーキと方向修正を同時に行うことで、ほぼ減速せずに真横へスライド移動する。その刹那、先程まで俺がいた場所へ精確に二発の弾丸が撃ち込まれ、土砂が噴水のように跳ね上がる。

 彼女の狙撃に対し俺は何の脅威も抱きはしなかった。頭の中にはただ前に進むことしかない。

 対巨竜ライフルというものはその威力こそ大したものだが、その分いくつか欠点もある。


 一つは普通の狙撃銃と比べて倍近くの重量を有しているだけにまともに扱うにはBランク以上の筋力ステータスを必要とするし、それでも担いだままの移動は極端に遅くなってしまう。この連射のしようからアンリの筋力はB以上と見ていい。

 問題は二つ目の欠点だ。それは装弾数が乏しく、それを補う術がないということだ。その凄まじい反動を無理矢理制御して連射することは出来ても弾倉に入る弾の数には限りがある。


 俺の記憶が正しければ装弾数は五発だった筈だ。残り一発、撃ってきた瞬間仕掛ける。

 そう考えてた矢先、銃声が響き渡った。何の工夫もない単調な狙撃に逆に驚いたが、身を旋転させ危なげなく弾丸を躱す。

 これで五発、読み通りなら弾切れの筈だ。脚のバネを溜め、一気に解放する。

 爆発的な加速度と共にアンリとの距離を一気に縮めていく。狙撃はこない。やはり弾切れか。このままいって一気にケリを着ける。

 そこまで考えて、事が上手く進みすぎてるなと脳味噌の冷めた部分が遅くも嫌な予感を感じ取った。

 アンリが何の罠も仕掛けないで待ってるわけないだろ、と俺の鈍い直感が語りかけてきている。

 アンリとの距離が一キロを切った辺りで俺の行く先の地面で怪しい点状の光が灯り、咄嗟にブレーキを掛けるが、その正体に気付いた瞬間また駆け出した。

 同時に地面が意思を持ち始めたかのように盛り上がり始める。

 姿を現したのは土を固めて造った起伏に乏しい出来の悪い巨大な人形だった。


「ウッドロックゴーレムの種か。WSで見たことあるぜ!」


 その種を地面に植えればほんの一日で根を張り二日で成体となり生物を無差別に補食するモンスターとなる。

 これもアンリが仕掛けたのだろうが、オークやゴブリンよりは厄介な相手だが、今の俺ならただの障害物に過ぎない。

 次々に地面に光が灯り地面が捲れ上がると、数えるのも億劫な数のゴーレムが姿を現す。原型を留めてない地表に瞬く間に大量のゴーレムが出現する。

 俺は全身に力を漲らせるとゴーレムの群れへと突っ込んでいった。身体が空気摩擦で燃え尽きてしまうのではないかと思える速度のまま最短で立ち聳えるゴーレムに頭から衝突する。

 星を拾った配管工よろしく、触れた箇所からゴーレムの土塊の肉体が弾け飛び核となる種が粉微塵と化す。

 その勢いは止まることなく、立ちはだかるゴーレム達をタックルで突き破り、拳で粉々に吹き飛ばし、蹴ってはまとめて吹き飛ばし、ある時は核となる種を嚙み千切り、弾丸さながらの勢いで別のゴーレムに発射し、核を撃ち抜く。


 意思表示のないゴーレムに慈悲の感情など一切なかった。砕いて、潰して、殴り飛ばして、蹴散らしながら一直線に突き進んでいく。

 普通に走るよりもゴーレムを破壊しながら走った方が速いという事態に可笑しくも悪くないと思う。それよりもこのゴーレムの数、倒してもキリがないなんてもんじゃない。ほぼ無尽蔵に出現してるようにも見える。壊しても壊しても、目の前の視界を塞ぐゴーレムは一向に減る気配がない。


「どんだけ植えてきてんだよあの女!」


 微かに集中力が途切れた次の瞬間だった。足下から起き上がってきたゴーレムに気付かず足を掬われる。

 転びこそしなかったが、前につんのめってしまい、それは誰から見ても大きな隙となった。彼女なら絶対に逃すことのない絶好のチャンスだったろう。

 予想通り、水を得た魚のようにアンリの銃が爆音を轟かせた。一瞬だけ視界に移った一列に並んだゴーレムが次々に弾け飛んでいく光景に神々しさすら感じた。

 避けようとする気もなかった。速度、タイミングからしてギリギリ避けられないタイミングで撃ってきていたからだ。


「あぁ、あのクソ……」


 絶望的な速度を保ったまま、対巨竜ライフルの弾丸が腹にぶち込まれる。俺の逸物よりも太い金属の弾丸が身体に捻じ込まれたなんて考えたくもなかった。

 着弾部を中心に衝撃が波のように広がり、今まで感じたことのない凄まじい痛みに神経が焼き切れたような熱が走る。

 全身揺さぶられたように目の前が激しく揺れ動く。全身の血管から血が吹き出し、ある種の破壊的エネルギーにショック死するかと錯覚してしまう。


「ああクソ!クソッたれ!!マザッファカ!!!」


 激痛で脳味噌が弾け飛びそうだ。喉の奥から口中を埋め尽くす程の血が溢れてくる。胃袋に穴が空いたかもしれない。肝臓が吹っ飛んだかもしれない。

 気付いたら足が止まっていた。走ってなんていられない。歩いたらその衝撃で脚が折れるかもしれない。

 此処はゴーレムの密集地帯、止まるには最悪の場所だと分かってても動く気がしない。


 ずるずると体に生えた根を千切りながらゆっくりと近づいてくるゴーレムが地獄からの使者にも見えてきた。

 なんて笑えない冗談だ。三十秒前の俺を思い返せ。自分を不死身と本気で考えてそうな俺を今すぐ呼び起こすんだ。

 生きる理由はあっても死ぬ理由はない。

 ゴーレムの平な手が伸びてくる。アンリも次を撃ってくるだろう。


 脳味噌と身体を再起動だ。今すぐに。


「回復。回復しろ。回復した!」


 反射的に手が動き、ゴーレムの手を掴んでいた。

 ゴーレムが押そうが引こうがもう動かすことは出来ない。大きな欠伸を一つ。もう片方の手を口の中に突っ込みぐらついた奥歯を摘んで一思いに引っこ抜く。

 後引く痛みが先程までの痛みを忘れさせてくれる気がした。自分の一部だった歯を放り捨て、ゴーレムに向きなおる。四方からもゴーレムが迫ってきているを見て、自然と笑みが深まった。


「こうでなくッちゃいけねぇや」


 腕に軽く力を籠める。剥き出しの血肉が膨れ上がり、同時にゴーレムの身体が宙に浮き上がる。

 身体全体を使ってハンマー投げの要領でゴーレムを振り回す。ゴーレム同士がぶつかり合い、破砕音が響く。ゴーレムの身体が砕けて軽くなると更にゴーレムを振り回す速度が増していく。

 アンリは撃ってこない。俺が目を回すのを待っているのか知らないが好都合だった。


「そンじゃ反撃といくか!」


 ここ一番の力を込め、ゴーレムを振り回す。

 限界に近い速度に達したとき、俺はアンリ目掛けてゴーレムを投擲した。数百キロの岩の塊がアンリの居場所に一直線に飛んでいく。当たればアンリだってただじゃすまない筈だ。

 だが、ゴーレムはアンリに届くことなく空中で爆散する。

 空中のゴーレムを狙撃で破壊したと考えるのが正解か。彼女の腕ならあの大きさのゴーレムが弾丸のように飛んできても難なく対処できるだろう。


 こうもあっさり対処されると逆に清々しくなってくる。次ゴーレムを投げようとすればアンリは間違いなく俺を撃ってくるだろう。

 このままゴーレムの包囲網を突破しようにもアンリの狙撃が邪魔だ。もしゴーレムを投げれたとしても的がでかすぎる。

 今更になってこの状況がとてつもなく面倒で勝ち目が薄いということに気が付く。

 対巨竜ライフルに次当たれば恐らく死ぬだろう。耐えるぐらいなら死んだ方がマシに思える程痛いんだアレは。

 俺が対巨竜ライフルに耐えられる程強靭なボディならまた話は別なのだろう。

 ふと周りを見てみる。上手くいきそうにない案が一つ頭に思い浮かんだ。いや、ないなと思いつつももしかしたら上手くいくかもしれないという思いが交錯し、俺はゴーレムに歩み寄っていく。

 この状況を打破するなら何でもすべきだろう。それがアンリの虚を突く事になるかもしれないからだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ