第55話 畳問題
畳の製作状況を確認するためにウヌス村へ移動。
ゲンじいさんの工房からは忙しない物音と、たまに怒声が響く。
うん、修羅場だな。
こうなった人間に関わっちゃいけない。
本能に従ってUターン。
「ユスト様だ」
見習い畳職人に見つかってしまった。
逃走失敗。
「……順調?」
大量に作る必要があるので、お決まり文句で状況を確認する。
するとゲンじいさんの弟子達から一斉にジト目で睨まれた。
「順調そうに見えますか?」
声音が冷たい。
結構、ご立腹らしい。
「土床に直接畳を置くと、湿気で痛むんですよ」
ため息混じりに、ご立腹の原因を説明してくれる。
「アルトさんが持ってる技術書には、通気性を考えた部屋で、板張りの床に置いてました」
どうやら大量注文に対して怒っているのではないらしい。
湿気と板張りの床か。
すっかり忘れてた。
結露でフローリングの床が傷むからと、よく乾拭きしてたっけ。
なるほど。
通気性無視した全体土の家。
こんなところに畳を置いたら、カビの温床だ。
「ごめんなさい。私のミスです」
ここは素直に謝ろう。
そして早急な対策を立てねば。
「ゲンじいさんはどこ?」
そう言えば、さっきから見あたらない。
「師匠なら、自分の家で寝込んでます」
うーん、どうやら私の無知が、ご老人を追い詰めてしまったらしい。
大量の畳製作に、劣悪環境での使用。
それに伴う、終わりなき補修の日々。
リアルに想像したら熱が出たそうだ。
マジ、ごめんなさい。
「それならば、一時しのぎだけど、すのこを使おう」
お手軽で、便利な物があるんですよ。
すのこを知らないようで、首を傾げる弟子達。
「作り方は簡単だから見てて」
その辺に放置されてる木の板を集めると、はしご状に組む。
最後に四角い棒を足として固定すれば出来上がり。
「確かに、これは簡単に出来ていいですね」
試作品なので、畳にサイズが合っていないが、床と畳の間に隙間が出来ることはイメージ出来たようだ。
「ちなみに、こうすると棚にもなる優れもの」
すのこを立てて、足の部分に板を置く。
もう片側のすのこを作ってないので、あくまでイメージだが。
「……………」
場が白ける。
はい、誰もこんなこと聞いてないですよね。
「余計な手間おかけします。すのこで対応してください」
今度から魔法珠を作るときは、この辺り気を付けようと心に誓う。
遅くなりました。
いつの間にか週明け。
慌ててスマホからポチポチと。
短文ですが、畳問題のご指摘とアイデアを頂きましたので投稿。
お気付きの点がありましたらお知らせ下さい。
可能な範囲で対応します。




