表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
賢者の図書館  作者: ゆるり
第1章
51/69

第45話 常識の違い

北部の拠点になる場所。

ここにあった粘土の小山は、すっかりレンガ班によって消されていた。

大量に出来たレンガはカールによって各村へと続く道の舗装に使われる。


「アルト、教えて欲しいことがあるんだけど」

小山がなくなり、平らになった土地では、アルトが忙しなく家を建てている。

切り出された木材に複雑な凹凸を付け、組み込んでいく。

手段として魔法は使うが、家そのものの作りには魔法による補強などをしていない。

百年以上住める古民家風の作りをアルトは選んだようだ。


「ちょっとだけ待て」

作業中で手が離せないようで、しばし待たされる。

その間、アルトの作業様子を観察していると、慎重に太い梁をかけようとしていた。


魔法で細かな調整をあまり得意としていないアルトだが、額に汗を浮かべながら柱と柱の間に魔法で持ち上げた梁を合わせている。

手が震えているのは、梁が重いからではないだろう。

これ、失敗すると、せっかく建てた柱ごと、建設中の家が潰れてしまうのだから。


魔法のメリット、デメリットはこういうところに出る。

これを魔法使わずに数人がかりで梁をかけるのであれば、吊るしてゆっくり持ち上げ、微調整しながら合わせていける。

しかし魔法は基本的に一人で一気にかけるしかない。

狙った箇所に合わせたら、一気に梁をはめ込むのだ。

外すと大惨事な一発勝負。

はめ込む直前まで魔力を使い続けると、せっかく付けた凹凸が魔力の影響でゆがむらしい。

ゆがんだ凹凸では、しっかりとはめ込むことができない、欠陥住宅になってしまう。

アルトのプライドがそれを許さないので、一発勝負にかけているのだとか。


位置を合わせ終わったのか、魔力を解いて、一気に梁を落とす。

見事狙った凹凸にはまり、梁掛け作業は無事終了したようだ。


「お待たせ」

やり切ったいい笑顔でこっち来る。

なんかちょっとむかつくのは……うん、気のせいだよね。

私、役立たずだからって、拗ねてるんじゃないから。


「いえいえ、そんなに待ってません」

つっけんどんな物言いに、アルトが不思議そうな顔をしている。

いかん、いかん。


「ええと、普通の家の補修方法についてちょっと聞きたいんだ」

アルトは孤児院の補修を任されていた。

地魔法を使って、壁など補強していたはず。

その仕組みを知りたいのだ。


「そんなことか」

和風建築という新技術の分野で何か質問されるのかと思ったらしい。

拍子抜けといった感じだ。


「こう、壁に穴が開いたとするだろ?」

そう説明しながら、その辺に転がっていた穴の開いた板切れを持ち出す。


「で、この穴に土を入れる」

地面から一掴みの土を取り、穴に詰めた。


……いやいや、私が聞きたいのはそこですよ。

なんでサラサラな土が立てた板の穴に留まるんですか。


「普通、土は重力に従って、下に落ちるのに、なんで穴に留まってられるの?」

その仕組みが知りたいんだ。


「あ?」

アルトはというと、なんでそんなことを質問されるのかがわからない様だ。


「重力ってのは何だ?土なんて、穴埋めに使ってるんだから、落ちるわけないだろう」

元々の常識がアルトとはずれているようです。


「重力とは……えっと……言葉で説明すると難しいな」

当たり前に知っていることなので、逆に説明しずらい。

仕方ないので、落ちている石を拾って上に投げる。

するとすぐに落ちてきた。


「こういうこと」

まったくわかっていないアルト。


「上に投げたものは、その場に留まらないで落ちて来るでしょ。落とす力が働いているからなの」

ざっくりと説明する。

別に重力をアルトに理解してほしいわけではない。

わからないなら、わからないでもいいのだ。


「話を戻すと、穴埋めに使った土も重力に従って、落ちないとおかしいんだよ。なのに穴に留まってる。どうして?」

こう説明して、やっとアルトが質問の意味に気付いたようだ。


「ああ、そこか。土は小さな粒子の集まりだろう。粒と粒を魔法で繋げるんだよ」

地魔法には土に粘性を持たせることができるそうで、これを利用しているそうだ。

このくらいのことは、歩き始めた赤子でも出来るという。


ええ、わかっています。

私はこの世界では赤子以下ですとも。

大人になっても、魔法に関しては赤子に敵いません。

しかし、知りたいことは知れた。


「なるほど、粘性か」

フィリップが魔法部屋を完成させれば、私は魔法を抜く作業に取り掛かる。

その作業で必要なのはイメージ力。

抜いた魔法をどうしたいのかイメージしないといけない。

やりたいことは決まっているのに、その仕組みがわからず、イメージできないでいたのだ。


「何とかなりそうだな」

地魔法に粘性を持たせる効果があるのなら、やりたいことが出来そうだ。


「こんなのが、何かの役に立つのか?」

まったく意味が分からないという顔をしているアルト。

まあ、そうだろう。


「役に立つよ。どう役に立つかは後のお楽しみだけど」

感想ありがとうございます。

今、ちょっと忙しくて、返事が書けず申し訳ないです。

落ち着いたら返事を書きたいと思います。

もう少しお待ちください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ