第34話 農業の村
4つ目の集落。
名前をネプス村と名付けた。やっぱり意味は無い。
「村長はヘルマでいいのね」
私が確認すると、いい笑顔で頷く。
そんなヘルマ村長にげっそりした村民達。
「やあ、エル待ってたよ」
エルとはメエコの名前だ。
これは私が付けた名前ではなく、エル自身がもともと持ってた名前だそうだ。
昔の賢者と契約したときに付けてもらった名前で、代々長が受け継いでいるという。
そしてエルは流暢ではないが、人語が話せた。
これにはびっくりだ。
両手を広げてエルを迎え入れるヘルマ。
「出た……」
エルの方は腰引けてる。
どうやら集落の代表を呼んだ時にヘルマはエルを見つけて一目惚れしたらしい。
思いっきり抱きつかれて、岩場の集落に行くと約束したことでその場は解放されたそうだ。
そんな約束、なかったことにしちゃえばいいのにと思ったが、エルは義理堅いようで、約束は守る主義らしい。
「ヘルマさん、エルは静かな暮らしを好むので、あまり構い過ぎると嫌われてしまいますよ」
見かねたミケが助け舟を出す。
「おお、そうなのか。気をつけねばな」
さっと離れて、近いながらも少し距離を取った。
それにホッとするエル。
「ラノアさん、ヘルマ村長が暴走したら……」
ヘルマの妻ラノアに、暴走したら止めてくれるよう頼もうとして言葉に詰まった。
ラノアがエルをヘルマ以上の熱い視線で見つめていたからだ。
好みが同じの似たもの夫婦らしい。
「えっと、お二人が暴走したら、止めてくださいね」
ミケは村人達にお願いしたが、イマイチ頼りない表情だった。
身の危険を感じたエル。
「ユスト、友達、キイサ、呼ぶ、いい?」
護衛も兼ねて友達のキイサをこの村に呼びたいという。
キイサはサルみたいなものだ。
「来てくれるなら歓迎だよ」
そう答えると、エルが安心したようにホッとため息をついた。
「まず3つに分かれて下さい」
ミケが指示を出す。
エルの農作業手伝い兼メエコの毛刈りグループと、果樹園の作成管理プラス綿花栽培のグループ。
それに果実の加工グループ。
かなりの広さの平地なので、果樹園を作ることにした。
果樹園でできる木陰を利用して、キノコ栽培にも挑戦する気でいる。
収穫された果実は、岩場の風通しが良い所でドライフルーツを作る。
果実は食べごろが短いので、できるだけ日持ちする形にしたいのだ。
あとは、てん菜やサトウキビも作って貰って、ジャム作りもしようと思う。
ついでにキノコ栽培が成功したら、これも干しきのこにするつもりだ。
いいダシが出る。
ちなみにメエコの刈った毛や綿花は北部の中央あたりで村が無い場所に領主の拠点を作って、そこに運んでもらう。
それを各村のあまり動けない人やお年寄りに糸紡ぎをしてもらい、編んだり織ったりして服などを作る予定だ。
グループ分けは男女の区切りをつけなかったので、バランスよく分かれてくれた。
ヘルマとラノアはもちろん農業手伝いで、メエコの毛刈りを楽しみにしている。
「フランツ、リト、よろしくね」
さっきまで担当範囲が多くてげんなりしていたフランツだが、この村に来てから妙に力が入っている。
「任せて、エルはしっかり守るから」
ああ、フランツもエルがお気に入りか。
エル、妙に人気があるなと思いつつ、フランツはエルの番人ではなく飼育担当である。
この村にばかり居座られては困るのだ。
「リト、頑張って」
リトは13歳の女の子で風魔法を使う。
農業部門の果実担当だが、彼女の主な仕事はフランツやヘルマ、ラノアからエルを守るのが主な仕事になりそうだ。
「ユスト、かなり他人事だよね」
ジト目で見られたが、乾いた笑いで誤魔化した。
クリスマスから年末年始とイベント目白押し!
また小説のストック作りしとかないと……




