第21話 モウシの特殊能力?
目を覚ませば、辺りは暗くなり始めている。
あまり賢者の図書館に長居したつもりはないのだが……やはり時間の流れが速いらしい。
「お嬢様、起きられましたか」
落ち着いた様子のミリアが声をかけてくる。
「うん」
まだちょっと頭がボーっとするが、起きていると言っていいだろう。
「コケコ達に説明をしていただきました」
寝る前にそんなこと言ったなと、鈍い頭で考える。
私の周りには、寝る前まで積みあがっていた成果物は大量の本に変わっていた。
「それと、私の判断で、孤児院の子達を連れてきました」
うん?
なぜ、そんなことになったのだろう。
頭が回らない。
昼寝のし過ぎは良くないと、身に染みた。
「この作物の栽培に人手がいるのでしょう?」
ああ、この森をもらうとき、父様にそんなこと言ったなと思う。
「ユスト」
ミリアではない、少年の声。
「来てもらったのに、寝ててごめんね。アルト」
孤児院のリーダー格で16歳の少年だ。
「いや、いい。理由は俺も聞いたから」
大量の家畜と、広大な畑。
立派な果樹園が広がる。
農業を知らないアルト達には、びっくりの光景だろう。
「ユストよ、我の望みのものはあったか?」
待ちきれない様子のアッシーが割って入ってくる。
ちょっと苦笑して
「ありましたよ。立派なお米作ってくださいね」
そう言って、米のサンプル袋を出す。
「すぐに始めますか?」
もうすぐ夜になる。
明日の方がいいだろうか?
「うむむ」
早くやりたいが、さすがに夜はまずいと思ったらしい。
栽培環境の記録作業だ。
夜間作業作物になったら大変だ。
「……うむ」
長い葛藤の末、明日の朝一ということになった。
早朝作業作物になったらどうしよう。
「そうだ。ちょうどいいから、明日はアルト達も見学して。作物の栽培を習得してもらうんだから」
私の言葉にアッシーが喜んだ。
技術を継承させる弟子を要望していたので、早速誰にしようかと選び始める。
そんなアッシーと私の言葉に戸惑いを見せる孤児院の子達。
「とりあえずお嬢様、夜の森での移動は危険ですので、今日はこちらにお泊りください」
湖畔に大きめの小屋が出来ていた。
「コケコ、すごっかったぜ。魔法使って、あっという間に木を組み上げていくんだ」
興奮気味のアルト。
さすが建築マニア。
簡易的に見える小屋だが、実はすごい技術があったらしい。
私にはわからないが。
「とりあえず、みなさん食事にしましょう」
おっとりした感じの、茶髪に白いメッシュの入った、くりくり黒目の可愛らしい男の子が話をまとめてきた。
……どちら様でしょう?
私の知らない子です。
孤児院に新しい子でも入ったのかな?
「お嬢様、この子は子モウシです」
疑問符浮かべた私にミリアが答えてくれる。
「……え、だって、子モウシはモウシだよね?」
決して人間ではない。
「ですが、この子は子モウシでした。お嬢様の周りの作物が本に変わっていくと、子モウシも人へと変わりました」
思い当たるのは、フィリップの言っていた特殊能力。
「僕がユストと契約したとき、ユストが願っていたのは農業の発展。だから僕はユストの助けとなるために農業をしやすい姿になったんです」
なるほど、確かに特殊能力だ。
言葉は……元々かな?
モウシは人語を話していたので、判断付かない。
投稿時間の予約を使ってみた。
ちゃんと投稿されるかな。




