第17話 押しかけ家畜
私は今、やることがない。
なので湖に魚の原種の卵が入った袋を沈めてみた。
しばらくして孵化する。
そのまま稚魚が湖へと散っていった。
「あれが大きくなって……」
湖面から巨大なトカゲみたいなのがジャンプして、また水面に潜っていく。
「…………ネッシー?」
首長かったし、そんな感じだ。
あ、アーノン領の湖だし、アッシーか?
なんか別の意味になってる気がする。
「あれ、魚だったのかな」
魚の卵から孵化したんだから、そうだろう。
そう、納得しよう。
湖に生物が全くいないことは、気絶から回復したミリアの水魔法で探索かけて確認済み。
アッシーはどう活用できるんだろうか。
やっぱり荷物の運搬とかかな。
「お嬢様、いい加減こちらに戻ってきてください」
ちょっと現実逃避していたら、ミリアに叱られた。
「だって、手に負えないんだもの」
湖の周りには家畜がいっぱいいる。
みんなココの友達だそうだ。
モウシはココの一番の友達で、困っていたから、ここに誘ったのだという。
その話を聞きつけた森の種の長達が、自分たちも仲間に入れろと詰めかけてきた。
ブブタは豚で、ニンジンの種を食べ、
メエコは羊で、キャベツの種を食べ、
隣の領地の森から山羊のメメルが、しぶしぶサツマイモで手を打った。
ココ、ものすごく顔が広い。
サンプルの習得……私の出番は最初だけ。
根菜系は任せろとブブタが大根、ニンジン、ゴボウ、てん菜を担当。
葉物は任せろとメエコがキャベツ、レタスを担当。
ついでにネギ、玉ねぎ、にんにくも引き受けてる。
イモ系は任せろとメメルがサツマイモ、ジャガイモを担当。
茶毛モウシは大豆、トマト、ナス、キュウリを担当。
白毛モウシはトウモロコシ、蕎麦。
ココは余ったサトウキビと菜種を担当している。
ココの耕した広大な土地はフル稼働で種子の栽培環境記録の定着作業が進んでいく。
ちなみにミリアは、昨日、収穫した新品種の果物がひどく気に入り、今日持ち込んだ果物の種を使って品種改良に勤しんでいる最中。
なんとミリア、あの高速成長の樹木から、収穫時期の来た果物をきっちり熟れ頃で収穫してる。
ココが昨日使ったカマイタチの要領で、水魔法の水刃でスパンと収穫。
それをいろいろな品種の果物と並べて植えることで、新品種を作ろうとしているようだ。
最初の種蒔きさえ私がやれば、皆さん好き勝手に自分好みの作物を作ってます。
それをベースにマニュアルが出来るのだから真剣だ。
「またフィリップ、びっくりさせちゃうんだろうな」
今日の成果物を数えてみる。
作物は、ジャガイモ、サツマイモ、キャベツ、レタス、大根、ニンジン、ゴボウ、ネギ、玉ねぎ、ニンニク、トマト、ナス、きゅうり、サトウキビ、てん菜、菜種、トウモロコシ、大豆、蕎麦。
家畜は、白毛モウシ、茶毛モウシ、白茶毛子モウシ、ブブタ、メエコ、メメル。
魚は……どうするんだろう。
マニュアルできるのだろうか?
ぼうっと湖畔を眺めて、ため息を付く。




