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愛と修羅な人生  作者: 成瀬ケン
第二章 死闘 修羅の荒野開演
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修羅の荒野開演編6

「とにかくこいつ、どうにかしないと」

 言って立ち上がり、部屋を繋ぐドアを開ける。


「シュウ君!」

「勝ったんだね!」

 雪崩れ込むように春菜と太助が駆け込んでくる。その視線が捉えるのは、すやすや眠るマリアと、床に倒れ込む三崎の姿。俺の勝利を確信し、喜びを爆発させるように手を取り合いはしゃぎまくる。




「とにかく帰るぞ。こんなエロの巣窟、いつまでもいる訳にはいかねー」

 俺は言った。三崎が起き上がる恐れはないだろうが、他のアルタイルメンバーが加勢に現れる可能性もある。そうなれば面倒だ。とは言え課題は残ってる。



「ねぇ、シュウ。マリアちゃんどうしょうね。殴るのかな」

 ボソッと投げ掛ける太助。

「確かにあのパンチは、俺様でもびびる」

  そう問題はまだ残っている。危険な眠り姫をどうすればいいかだ。実際この女、マジ危険極まりない。三崎程のボクサーを打ちのめしたその能力。流石の俺も戸惑いを覚える。



「私が担いで来た時は、何ともなかったのに」

 春菜が怪訝そうに首を傾げた。

「ここまでは私が連れてきたの。だけど殴られたりはしなかったんだ」

「そりゃーおめー。その時は満腹で機嫌が良かったんじゃねーか? 腹が減れば誰だって機嫌がわりー」

  実際そういう事かも知れない。野良犬だって同じだ。奴らも空腹の時が一番強暴。だが太助は俺様の意見をあっさり断ち切る。『マリアちゃんはお嬢様だよ。そんな筈がある訳ないよ』だけどわかんねーだろ、お嬢様といえど生き物だ。




 そんなふうにグダグダと討論を繰り出す俺達を余所に、春菜はじっとマリアを見つめてる。そして意を決したように、マリアに腕を伸ばした。


 俺と太助、意味が分からず息を飲む。逆な意味で呆気に取られた。マリアは無反応だった、春菜に対し攻撃を繰り出す事はない。


 春菜はホント肝っ玉母さんタイプだ。優しくマリアに語りかけ、その肩に担ぎだす。マリアは穏やかな状態。けして春菜に手を出すようには見えない。実際何でだ? 春菜が女だからか。そもそもそれが正解だとして、どうして意識がないのに性別が判る。何か特別な訓練してんのか。




「帰りましょ。シュウ君、太助君」

 そんな困惑も余所に、春菜はあっけらかんと伝える。その何でもない台詞が、俺の戸惑いを吹き消した。確かにそうだ、考えても仕方ない。今は帰るのが先決だ。





  こうして俺達はビルの外まで脱出する。

  街並みは穏やかだ。空を覆う立派な三日月、それに照らされ水滴がキラキラ光る。



「追っ手がこねーうちに、バックレんぞ」

 言って俺は国道方面に向き直る。



 ガシャーン! 後方でガラスの割れるような音が響いた。



  振り返る俺の視線に、飛び散るガラスの破片が映り込む。キラキラ輝く破片、それをバックに大きな影が宙に浮いている。やがて停めてあった車にぶつかり、ズルズル崩れ落ちた。


  よく見ればそれは人間だ。ボーズ頭の男、一階の窓から吹き飛んできたらしい。



「おいおい、俺を忘れるなよ」

 聞き覚えある声が響く。それは一弥だ。壊れた窓に片足をかけ、覚めたような視線を送っている。



「一弥、悪い忘れてたぜ」

「まったく」

「いいじゃんかよ。それよりそっちは終わったのか?」

「ああ、楽勝だよ」

 俺の問い掛けに拳をかざす一弥。体も顔も傷だらけで、着てる衣服もボロボロだ。それでも浮かぶのは堂々たる表情。二階から一階にかけて激しい乱闘を繰り広げたんだろう。



「派手な争いだな。……ワカバヤシは死んだのか?」

「……誰だそれ。林田だろ」

「何だっていい。とにかくよくやった。流石は俺様の兵隊だ」

「誰が兵隊だ」

  こうして全ての無事を確認した俺達。自然と言葉が溢れた、互いの勝利と無事を祝う。色々あったが、こうして無事帰れるんだ、それで良しとしよう。



 だが一方の一弥は別の方向を見つめている。


「シュウ、その女、お前が連れて帰るんだろ?」

 そして言った。その一弥の台詞は、俺に取っちゃ意外な台詞だ。


「この際、どうしてお前が、この場に殴りこんだのか、なんて気にはしない。隠しておきたい感情ってものあるだろうからな」

「な、何の事だ? 意味わかんねーぞ。それに俺は女が嫌いだ」

 戸惑い返した。マジで意味が分からない。この男、何を勘違いしてるんだ?

「ストレートに言う。その女、お前が責任もって送り届けろ。お前が女嫌いだろうと、それが男としての使命だからだ」

 それでも一弥は堂々たる表情。


「おいら、春菜を送っていくよ。一応男だし」

 すかさず太助が言った。マリアに殴られるのが怖くて、安パイを取ったって構図だろう。



「ほら、傷だらけの斉藤までそう言ってるんだ。お前も男だろ」

 更に言い放つ一弥

 

「だから、何で俺様がそんな事。おめーが送り届けろ!」

「馬鹿、俺はお前の加勢に来ただけだ」

「だったら俺も同じだ。太助の加勢」

「馬鹿、話をはぐらかすな」

 こうして俺達は、マリアを送り届ける件で言い争いを続ける。


「マリアちゃん送っていくにしても、彼女のアパート、どこにあるか知っているの?」

 不意に春菜がいった。

「えっ、春菜って、マリアちゃんのアパート知らない?」

 呼応して訊ねる太助。

「そうなの実は」

 項垂れる春菜。その様子に誰もが言を失う。確かに意外だ。マリアと春菜はかなり仲がいい。それなのに住んでるアパートを知らないなんて。




 春菜がいうには、一度だけマリアの勧めでアパートに招待される機会があった。だがそれは現実とはならなかった。行く途中で謎の人物に道を訊かれて、そのどさくさでマリアとはぐれたらしい。


 結論からいって、それは階下のソウイチロウの仕業だ。あのアパート、基本的に白城一族と、その護衛しか足を踏み入れられない。住宅街の、袋小路の一角に建てられているんだが、その一本道はいつでも工事中。ミカドグループによる規制だ。



 俺がマリアの警護をする前は、かなり強引にマリアの警護が行われていたらしい。マリアに近づく者は容赦しない。男はお仕置き、女は排除。学園内じゃ、影で暗躍する黒服集団、と恐れられていた。


 前に一度だけオッサンに聞いた事がある。『オッサンはマリアをカゴの鳥にする気なのか』って。そしたらオッサン『そんな訳あるまい。ただワシの部下共、たまにやり過ぎる事がある。悪党と友達の区別もつかんのじゃ』つまり春菜は、その大人達の馬鹿げた計画でマリアの住んでるアパートを知らないって事だろう。

レイアウト変更してます。詳しくは前ページで

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