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愛と修羅な人生  作者: 成瀬ケン
第二章 死闘 修羅の荒野開演
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修羅の荒野開演編5

「確かな手ごたえ。久々に現役の頃を思い出したぜ」

 三崎が言った。勝利を確信したように、髪を掻き上げる。口元に浮かぶのは笑み。自らの強さに酔うような満面の笑みだ。だけどそれが命取りなんだ……



「現役って何だよ、てめーは現役じゃねーだろ!」

 俺は吠えた。倒れる事無く奴の襟首に腕を伸ばす。そして強く握り締めた。


「嘘だろ、何故俺の拳を喰らっていて」

 愕然と言い放つ三崎。


「悪いが、俺様の頭はダイヤモンドなんだ!」

 俺はその顔面に強烈な頭突きを喰らわした。三崎の鼻頭がグニャリとひしゃげる。堪らず後方に身を引いた。


  三崎の放った拳は、俺の額を直撃していた。額ってのは、頬や顎と違ってかなり硬い。三崎はその言葉とは裏腹に、かなりスタミナを消耗していた。だから足がよろけて、的確な拳が打てなかったんだろう。


「そのぐらいで勘弁すっか!」

  俺は雪崩れ込むように右拳を奴の腹に叩き込む。

 腰をくの字に曲げ、それを(しの)ぐ三崎。すかさずその首筋に、回し蹴りを叩き込んだ。



「くっ、なんて奴だ。どこにそんな元気がある」

  堪らず後方に回避する三崎。口から流れる血を腕で拭い、斜に構え言った。


「てめーそれだけの強さ誇ってて、何でこんな馬鹿げた芸当してんだ」

「馬鹿げた芸当だと?」

 三崎の表情も引き締まっていく。


「てめーは逃げたんだろ。プロになれなくて悪党の世界に逃げ出した。前世での罪がどうだとか騙って逃げ出した。そんな弱虫に俺様が負ける訳ねーって言ったんだ」


 確かにこいつは、ボクシングでならした猛者だ。だが現状、その世界じゃ生きていない。傷害事件を起こして、ライセンス剥奪、永い懲役を喰らった。つまりそれ程のレベルじゃない。



「貴様に俺の何が分かる。必死に目指し、それでも(てのひら)からこぼれた覚悟、それが分かるのか!」

 三崎が吠えた。さっきまでと違う、酷く剣のある台詞。鼓舞(こぶ)するように大きく拳をかざす。


「てめーの覚悟なんざどうでもいいんだ。問題は俺様の覚悟にあると思え!」

 呼応して俺も吠える。三崎の強さは俺でも認める。だが問題はそのスタミナだ。圧倒的パワーで俺を追い込んではいたが、長期の死闘で息があがったまま。三崎の口からは、うっすらとアルコールの匂いがこぼれている。その上さっきから煙草を吸い放題。そんなんじゃスタミナ云々の問題じゃないだろう。ボクシングってのは禁欲の世界。三崎がプロになれなかったのは快楽の世界に逃げたからだ。




「問題は俺と貴様、その覚悟がどっちが上って事か」

「そうだ覚悟だ。それが問題だ」

 こうして俺達の覚悟は決まった。どちらの覚悟か上かを証明し、力でここから脱出する。


「ならば見せてみろよ、貴様の覚悟! その女を助け出す覚悟をな!」

「てめーみてーな外道に、マリアはどうこうさせねーよ!」


 怒号と共に二つの体躯が飛び出す。それぞれに思いを籠めて拳を振りかぶる。


 やがて響く強烈なる衝撃音。がたがたとなる、風の音だけが耳障り。




「……貴様、何の真似だ?」

 三崎の掠れるような声が響いた。

「悪いな。プロの拳ってのは凶器みたいなもんなんだろ。だからハンデだ」

 俺は手に持つ灰皿を床に放り投げた。大理石製の大きな灰皿。これで三崎の拳を防いだ訳さ。


「俺の拳が……」

 がっくりとその場にひざまつく三崎。わなわなと震え、砕けた拳を握り締める。

「畜生が、よくもやってくれたな!」

 それでも方膝を上げ、左のバックブローを飛ばす。

「無様な言い草だな。悪いがてめーは負ける、俺様に無様にな!」

 俺は後方に飛び退きそれを防いだ。


「無様だろうと俺は勝つ! それが俺の覚悟だ!」

 三崎の怒りは治まらない。左手一本で怒涛のような攻撃を繰り出してくる。奴を駆り立てる原動力は分からない。チームを引っ張るリーダーとしての責務か、俺に対する怒りか、もしくはリキ丸に対する恨みか。だけどそれ以上の思いが、そこには感じ取れた。奴を擁護する訳じゃないが、過去の因縁、背負わされた罰、それらが関係してると思えた。


 結局中途半端じゃ終われない。完全なる決着が必要だ。




「仕方ねー、俺様の最強パンチで引導を渡してやんよ」

 言って俺は右拳を後方に引き抜いた。

「何が最強パンチだ。プロ相手に舐めてんじゃねーぞ!」

 対する三崎も気合を籠める。


「フィニッシュだ。歯ぁ食い縛れ!!」

 俺は空気を切り裂き、拳を振りぬいた。対する三崎は片膝を付き、ぐっと神経を研ぎ澄ます。


「確かにこれは喧嘩だ。だったらそれ相応の対応をさせてもらう!」

 三崎が両手で手前にかざしたのは、さっきの灰皿だ。自分同様、俺様の拳が砕けるのを期待しているんだろう。



 だが俺は躊躇わない。拳に力を籠める。


「俺様の拳で砕けない物なんか、この世に存在しねーんだよ!!!」

 灰皿を打ち砕き、三崎の頬に強烈なる攻撃を打ち込んだ。



「がはーっ!」

 顔面から吹き飛ぶ三崎。ゆっくり宙に舞い、壁に体躯をぶつけて座り込む。



「クソったれ、何なんだこの展開は。こんなとこで、負ける訳にはいかないのにな」

 それでもその狂気だけは健在だ。体躯に力を籠め、立ち上がろうと床を必死に這いずる。だがそれは虚しいだけ。砕けた拳には力が入らない。足もふらふらで体勢を立て直すのも容易ではない。



「ははは、まいったわ、俺の完全なる敗北だ」

 やがて全てを諦めたか、煙草を口にくわえて火をつけた。


「だけど気を付けろよ、黒瀬修司」

 そして意味深に言い放つ。ほの暗い室内、煙草の紫煙が棚引く。


「この女を狙ってるのは、俺だけじゃない。感じてんだろ、ガッコー中に漂う、おぞましい覇気」

「それは王城とも関係あんのか?」

  俺は訊いた。現状、マリアと関係あるのはあのコゾーだ。朧気(おぼろ)な表情で天を仰ぐ三崎。



「それは違うさ。……奴は何も指示してない。……全て俺が仕組んだ。全ては俺がやった。奴に指一本でも出したら、俺が貴様を叩き殺す……」

 そして静かに瞼を閉じた。とぼけた奴だったが、最後の台詞は本気だろう。そう思える強い意志が感じ取れた。



 室内に静寂が舞い戻る。さっきまで荒れ狂っていた外の天気も、いつの間にか回復していた。かすかに射し込む月明かり。まるで俺の勝利を祝福してるように思えた。



「はー、ホントひでー、闘いだったぜ」

 俺は度重なる連戦の疲れから、床にへたり込む。マリアは相変わらずか細い吐息と共に寝ていた。俺達の苦労など、露とも知らずに。






近々、大幅レイアウト変更予定です。一部削除予定、ご了承願います。



追伸。レイアウト変更完了。魔王と天使編消して、聖王学園編に組み込みました。


だからページが2ページ減ってます

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