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愛と修羅な人生  作者: 成瀬ケン
第二章 死闘 修羅の荒野開演
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修羅の荒野開演編2

「どうした? ビビッちゃった?」

 眼前で飄々と笑みを浮かべる三崎。俺を見下した自信の表れだ。


「別にビビッちゃいねーさ。ただ、他の奴よりはやるなって思ってな」

「へーッ認めるんだ。俺の凄さ」

 確かにこの男中々の強さを秘めてる。傾いたアルタイルをここまで回復させた実力が窺い知れた。


「まぁな。ひとつ訊いていいか。てめー、格闘技かなんかやってるだろ?」

「当たり、ボクシングを少々な。これでも前の学校の時、一年の頃は東日本じゃ無敵だったのよ」


 淡々と伝える三崎。それで理解した、他の奴とダンチな強さを。


「一年の時って、昔の話じゃねーか。しかもてめー、傷害で前科(マエ)があるんだってな。つまり今はスケコマシ、ボクシングの世界から逃げ出しただけ」

「トゲのある言い方だな。否定はしないが」


 そして沈黙が包み込む。実際こいつ、半端な覚悟じゃ倒せないだろう。俺様の本気の実力出さなきゃ。

「歯ぁ食いしばれ! 大阿修羅の実力、てめーの身体に刻んだる!」

 力を籠めて修羅の狂気を解放する。拳を振りかぶり、強烈な拳を打ち放った。





 人間としてこの世界に生まれ落ちた俺だけど、修羅としてのプライドはある。襲い掛かる荒波なんか突き破る、立ちはだかる壁はぶち壊す。それが修羅の覚悟。俺様の邪魔はさせねー!





「がぁっ!?」

 室内に叫び声が響き渡った。


「大阿修羅がどうしたって?」

 へらへらした笑みを浮かべる三崎。攻撃を喰らったのは俺の方。三崎のカウンターパンチが、俺の頬を貫いたんだ。



「やっぱ面白いわ、貴様。呆気なく倒すのが惜しいぐらいだ」

 完全に己の勝利を確信してるのか、余裕過ぎる表情だ。


「貴様は、なんの罪を背負って、生まれて来たんだ」

 椅子に腰掛け、意味深に言い放つ。


「何だって?」

 俺はバックステップで回避する。『罪を背負って』なんて質問、普通の奴なら訊ねない。明らかな真意がそこにある。



  だが三崎は答えない。怪訝そうに太助達を見据えるだけ。察するに、暗に奴らが邪魔だって言いたいんだろう。



「太助、おめーらは邪魔だ。倒れ込む雑魚連れて、ここから出てろ」

  口元から流れる血を腕でぬぐい言った。それに素直に従う太助。春菜共々、倒れ込む雑魚をひきづり、室内から出ていった。



「どういう意味だ?」

 俺の問い掛けに、髪を掻き上げる三崎。

「貴様修羅だろ。理解してんだよな、前世での事。お前の噂は数年前から訊いていた。喧嘩の最中、よく俺様は阿修羅だ、って言うらしいから」

  確かに俺は『俺様は修羅』それが口癖だ。それは事実だが、三崎の問い掛けはとぼけた台詞だ。いったい何を訊きたい。



「まさか自分だけが特別だと思ってねーよな。この下らない世界に、叩き落とされたのが自分だけだって」

  だが三崎の表情は至って真面目。裏付けがあって、その台詞を言ってる。


「まさかてめーも、前世の罪を背負って、この世界に生まれた、って事か。しかもその記憶がある」


「そうだ。俺は聖霊界出身。金狼(きんろう)族の戦士だ」

  金狼族ってのは聖霊王の眷族(けんぞく)だ。どうやら奴の言ってる事は事実だ。俺と同じく覚醒(かくせい)してる。



「なるほどな、あんとき感じた覇気はてめーのもんか」


 あのマリアとのやり取りの時、上から感じた覇気は奴のものだ。


  勿論、あの学園に別の世界の住人が封じられてるのも理解してる。俺と同じ修羅や、冥界の獄卒や囚人。天界の神や堕天使。多くの奴らはそれを理解せず、己の血のたぎりと解釈して、欲望のままに闘いを繰り広げてる。

  俺の場合はその矛盾に気づき、前世の記憶が蘇った。それと同じ事があってもおかしくない、それが三崎翔だっただけだ。



「俺に対する罰は、欲しいものをこの手に掴めないって罪。馬鹿げてるだろ、女さえ本気で愛する事もできないんだ」

 さばさばと頭を振る三崎。煙草をとりだし火をつける。


「貴様の罪はなんだ? どうせ下らないモンなんだろ?」

 言って俺を睨む。前世が修羅だと分かっても、その罪と素性は知らないらしい。


「確かに下らねーよ。自慢できる罪じゃねー」

 言って俺は血混じりの唾を吐く。三崎の拳で、口内が血だらけだ。じくじくする痛み、頭のてっぺんまで痺れがくる。



「だからって女どもを浚って、こんな馬鹿げた余興を繰り返してるって訳か」

「俺は前世でもスケコマシだったのよ。諜報活動に乗じて女を犯す。そのままなぶり殺しさ。だからこんな罰、与えられたんだがな」

「下らねー男だな。自業自得だ」

「確かに言えてる。否定はしないさ」

  三崎は前世から生粋のドスケベだ。女嫌いな俺様が言う事じゃないが、女からしたら最悪の敵。その毒牙にマリアがかからなかった事を、少しだけ安堵する。



「貴様は、この背負わされた罪を、本気で償う事ができると思うか?」

「そんなの出来っか出来ねーかじゃねー。俺様はこの最悪の牢獄を生き抜いて、修羅界に転生すんだから」

 俺は即答する。罪とか罰とか、そんなのはカンケーない。俺様は修羅界に再転生しなきゃならないんだ。それが、俺が人間界を生きる意味だから。



「ムリだぜ。俺達が今いる空間は、六界から切り取られた空間。人間界にシンクロしてるが、閉ざされた迷宮なんだ」

  だがその三崎の台詞が、俺をどん底に突き落とす。

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