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愛と修羅な人生  作者: 成瀬ケン
第二章 死闘 修羅の荒野開演
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聖王学園編




 俺の通う学校は『聖王(せいおう)学園』。私立の男女共学高だ。



 中学時代の大半を引き篭もりで過ごしてた俺だが、流石に高校ぐらいは卒業しなきゃまずいと思った。親はガッコーぐらい行きなさいってうるさいし、世間体も悪い。確かにこの人間界、ベンキョーぐらい出来なきゃ暗い老後が待ってる。


 なんてったって、俺の目標は人生大往生。楽して生きて、苦痛なく死ぬこと。その為にはベンキョーも大切。




 昼時を迎えた校内。誰もがそれぞれの時を満喫してる。季節はまだ冬真っ盛りだが、射し込む太陽の日射しで暖かい。



「シュウ、なにやってるの?」

「おめーは黙ってろ」

 あっけらかんと言い放つ太助に、俺は返した。太助は不思議そうな表情だ。こうして壁際に張り付く俺を、不思議だと感じてるんだろう。


 ここは二階にある理科室の隅の方。対面の校舎が見渡せる場所だ。視線には一年A組の教室が見える。もちろんマリアの警護の為。一日数回、マリアの様子をオッサンに連絡する義務があった。とはいえそんなこと、太助には言えない。



「邪魔だから消えろ」

 言って塩にぎりに食らいつく。これは俺様がこしらえた代物だ。たった一個じゃ腹も減るが、それは仕方ない。俺はオッサンの命令で数日前から一人暮らししてるんだ。マリアのアパートの隣に住んで、あいつの護衛しろって、滅茶苦茶な命令だ。



 俺としちゃ面倒なことだと思っていた。家賃などはオッサンが払ってくれるが、掃除や食事の用意など自分でやるのは大変だ。


 しかも急な一人暮らしなんか、両親が許す筈はないと思っていた。だが意外とあっさり了承した。『勉強に集中したいから、一人暮らししたいんだよな。勿論家賃は、俺がバイトして払うから』という俺様の説得に、『本当なのかシュウ? シュウも立派に育ったもんだ』『本当ね。少し前までは家に引き篭もって、夜中に徘徊してただけなのに』と涙を流して喜ぶ始末。


 そういう訳で俺の一人暮らしはあっさり決まった。



 翌日俺は、生活必需品を段ボールに詰めて教えられたアパートに向かう。その日は予告通り寝坊した。ついでだからガッコーは休んでやった。



 だがそのアパートの姿を見て、俺は絶句した。そこは近所の奴らが化け物屋敷って呼んでる場所だ。それ程おんぼろで不気味な様相だから。



 確かに外から見るとぼろくて汚いアパートだ。だが大家と名乗る南米系の浅黒い大家に連れられて中を覗くと、意外と綺麗な部屋だった。狭いながらも台所とトイレ、シャワールームも完備されている。内装の方もかなり見栄えはよかった。貼り替えられた壁紙に真新しい青畳と、新しい生活の匂いも感じられる。オッサンの見立てとしては、なかなかだと思った。


 窓から見える街並みは見慣れた風景だ。それもその筈、実家とは一キロも離れていない距離だから。それでもその雰囲気からか、妙に清々しく思えた。



 そんな訳で俺の引っ越しはものの数十分で終了した__





 そんなことも知らず、ふぅーん、と納得する太助。弁当箱を広げ、躊躇いなく食らいだす。実際こいつ、俺様の台詞を訊いていたのか? 相変わらず手の込んだ弁当だ。真ん中にはハートマークが書かれてる。太助いわく、『おかーさんの愛情弁当』だそうだ。こいつはマジマザコンだ、お袋がいなきゃなにも出来ない性格。



 とにかくこんな奴にかまってる暇はねー、一応は昼の定期連絡しないと。マリアは春菜と仲がいいようだ。ほとんど一緒に行動してる。とりあえず今んところは異常ない。教室の奥では数人のヤンキーが乱闘してるが、ごく普通の光景。直接マリアには関係ないだろう。そんなことでオッサンにはメールしよう。



「……なに見てんだ」

 メール内容を入力しようとして言った。


「気にしないで、私は午後の授業の準備してるだけだから」

 覚めたように響く声。理科室の傍らには真優の姿があった。もちろん最初からいるのは分かっていたさ。それにしてもこの女、気配は消せるのにその存在感だけは健在。まるでくノ一、女スパイ、諜報に長けるプロだ。



「最近シュウ、一人で行動すること多いよね」

 視線も向けず、淡々と準備をこなしてる。

「いいべよ別に。元々俺様は、単独行動が好きなんだ」

「そうね、夜中でも徘徊するくらいだから」

「あのなー」

 こんな状況じゃメールはできない。実際こいつら迷惑な存在だ。




「ひとまず隠れるぞ」

「ああ」

 その時ドアが開いて、別の奴らが入室してきた。短い金髪の男と、スキンヘッドの男。同じ学年のヤンキー二人だ。スキンヘッドの方は頬が切れて血が滴ってる。俺様の存在に気付いて何故か青ざめる。


「そんな所に隠れてもムダなんだよ」

 続いて現れる茶髪。それは一弥。教室のドアに左手をかざし、二人相手に息巻く。一瞬の沈黙がある。


「クソったれ!」

 最初に動いたのはスキンヘッド。ぐっと気を吐き、回転からの蹴りを一弥に放つ。


 それを低く身を反らし避ける一弥。スキンヘッドの足を左手で絡めとり、バランスを崩す。蒼白になるスキンヘッド。そのまま倒されて、頭を床にぶつける。



 その後方から、金髪が襲い掛かかる。拳を乱打し、一弥に狙いを定める。


 だが一弥は冷静。フットワークを駆使して、それを鮮やかにかわしていく。逆に金髪の方が息が上がった状況だ。まるきりでたらめな攻撃だからスタミナが持たないんだろう。その隙を突き、飛び込む一弥。間合いを詰めて金髪の顔面に右のフックを叩き込んだ。



 こうして場は、再び静を取り戻す。



「相変わらずネズミ花火だな」

 俺は言った。ネズミ花火ってのは、俺様が一弥に付けたニックネームだ。ちょろちょろウザい一弥への愛情籠ったニックネーム。実際こんな雑魚相手に、ここまでやることがあり得ない。大物なら大物らしく堂々としてろ。


 しかし一弥は気負わない。倒れ込み、ガクガク震える二人を覚めたように見下ろしてる。



「この二人、シュウの悪口言ってたんだ。陰でこそこそとな」

「あんだって、俺様の悪口だと?」

 俺様の怒りは最高潮に達する。修羅張りの狂気を二人に向けた。



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