優しい顔と性格の彼がどうしたいのか分からない
由々のことなんて考えずに、支配者のことなんて考えずにいればよかった。
今になって思う。まさか会ってしまうなんて。
一人目。一人目はもう、由々の近くに潜んでいたのだ。
「はは…ごめんね由々ちゃん」
パソコンの中で、「『元』世界の支配者」は上を向いて眉を下げる。
「…でも、僕の力じゃ無理だったんだ」
つぅっと大きな目から涙がこぼれおちた。
「君なら、きっと彼らを変えられる。
…だから、許してね」
パソコンの中から、見えない外に向かって言う。
「9番目にしてしまったことを…」
($・・)/~~~
その頃、由々は。
「椿坂さん」
男らしい芯の通った声が自分の名字を呼んだ。
「…えっと?」
振り向くと、自分には程遠い大人なオーラのクラスメイトがいた。
「英助くん?何…」
高い身長、黒い短髪、優しそうなタレ目、大きな口。
優しくて友達おもいの『東屋英助』である。
周りの男子はまだ幼さが残るのに、英助はもう男の人と呼べるくらいの
大人っぽさだ。それも自然な。
そんなクラスメイトが自分のことを呼ぶなんて。
「どうしたの?」
「いや、今日一緒に昼食食べれるかなって思って」
照れたように首をかく。
「えっ。えっ…?」
びっくりして言葉が出ない。
「おいおい、由々はおれの彼女だぞ~?」
口をとがらせて、わざとらしく英助の方を見る上。
「おれは上には聞いてないんだけど。椿坂さんの意見が聞きたいだけだ」
少し声のトーンをおとして言う。
(あれ、なんか。ヤバい?)
英助はあまり低い声を出さない(地声よりという意味で)ので、
心配になってしまった。
「わ、私は、いいけど」
「「どっちが?」」
「ふぇっ?!えっと」
きょときょとと二人の顔を交互に見る。
(ヤバい喧嘩になるかも)
思ったとき、英助が「なんてな」と笑い混じりに言った。
「ゴメンな。そうだよな、いきなり誘って悪かった」
英助が引いた。
「…」
「あははっ、おれもちょっとマジになっちまった」
上も笑う。
(さすが英助くん)
よかった。でも何で。
(私なんかを)
英助くんはほそやんでお願いします!