何も変わってるはずがない
イケメン公表アイドルオタクキャラってなかなかいないですよね。(隠れはいるかもだけど)
3
教室に入ると、クラスメイトがざわついた。
それもそのはず、上が『一人の』女の子と手をつないでいるのである。
しかもゆゆと。
「どうしたんだよ。お前、今日はナンパ失敗か?」
男子がへらへらと言うと上が笑顔で答えた。
「いや?コイツ、今日からおれの彼女だから」
「「「ええええええ?!」」」
大合唱が起きる。それもそのはずである。
「いやいや?!それはないだろ」
「何でよりによってゆゆなんだよ」
「他にかわいい子いっぱいいるだろ?」
(うわあ、みんな言いたい放題だぁ)
なんだか悲しくなってくる。
「そうか?コイツ、なかなかかわいいと思うけど」
「お前、ロリコンだったのかよ」
「ちげーよ」
あっけらかんに笑うと、「おい」と声がした。
「上。テメェ、いつからロリコンになったんだよ」
「いや、ちげーって。っていうかお前にだけは言われたくねェよ」
「ことのっちはロリータじゃねェ。
同い年だぞ」
「…コイツだって同い年だぜ?」
宮原灯。『ライト』と呼ばれることもある。
オレンジのゆるふわ無造作ヘアー、前髪の一部だけが赤く
ジト目の瞳は髪と同じオレンジ。口を開けると八重歯が見えるイケメンである。
『ことのっち』と言う有名アイドルにゾッコンで、他の女の子には興味を
示さない。男子高校生としてはあり得ないが。
「お前なぁ、おれが誰を彼女にしても関係ねーだろ」
「でもゆゆはねェだろって言ってんだよ」
灯が冷たく言う。
(どうしよう、よく分からないけど、私のせいで灯くん怒ってる…?)
しかし、考えてみたら灯や他のクラスメイトが不思議がるのも当然だ。
学年一、二を争う人気者の上に、中の下のごく普通のゆゆがつりあうワケがない。
「ご、ごめんね」
涙があふれてきて灯を見上げる。
「そうだよね。私が上の彼女のワケない…」
泣き崩れてしまうと、上が肩を支えてくれた。
「ライト!お前、何女泣かせてんだ!」
上が怒鳴って灯の方を見ると
灯が真っ赤に顔を染めていた。
「…ん?」
きょと…上が首をかしげる。
「なっ。何でおれが…ことのっち以外の女子に」
ぼそぼそと小さくつぶやき、頭をかかえて走って廊下に逃げてしまった。
「おい、ライト…?」
(本当によく分かんないけど…これ、私のせい?)
「まぁ、気にすんな。そんな深く考えねェほうがいい」
上が頭にぽんと手をのせた。
「でも…」
「大丈夫。おれにはアイツの気持ちがよく分かる」
「私は分かんないんだけど」
ちょうどその時、チャイムがなった。
「灯欠席か~?」
「いや、さっきまでいましたー」
「そうか」
少しだけ罪悪感が残っていたが、すぐに昼食の時間になった。
戻ってきた灯と上の間で食堂まで歩く。
「…ゆゆ。その、さっきは悪かった」
「いや、私こそ…?」
「おれがどうしてあんな気持ちになったかは分かんねェが
おれはことのっち一筋だからな」
(真顔で言われると怖いんですけど)
灯のことはよく分からないが、どうやら一緒にいてくれるようだ。
(そういえば、灯くんよく上といるもんなー)
二人はモテ男である。全く違うタイプだが。
上は明るく元気で無邪気。灯は無愛想で無気力。
(対照的だけど、仲がいいな。
あ、もしかして私ういてる?!)
そんな気がしてきた。いや、絶対そうである。
(どうしよう)
「お、ついたぞ。ゆゆ。
何欲しい?おれ買ってくるぜ?」
「いいの?じゃあ、私はイチゴクリーム入りパンで」
「上。おれのも頼む。ゆゆと同じヤツ」
「お前、本当甘いの好きだよな。見た目の割に。
って、ライトの分まで買うのかよ!なんだよしょうがねェなぁ~」
そう言いながらも灯のぶんも買いにいく。
「なぁ、隣座っていいかな?」
高いかわいらしい声が聞こえて、振り返る。
「ゆゆちゃんだよな?」
目がちかちかとした。男の子とは思えない童顔が目に飛び込む。
きらきらの金髪、青い瞳。なのに、日本人顔。
おっきなタレ目。かわいい顔して一生懸命男っぽい口調にしている。
だが、隠しきれないかわいい仕草にファンがたくさんいる。
同じクラスの『九十九 小太郎』である。
本当は『ショウタロウ』だが、『コタロウ』と呼ばれている。
「あ、いいけど…」
(話したことないのに、何でいきなり?)
「今日朝びっくりしたぜ~。まさか上くんと付き合うなんて」
きゃはっ。かわいらしい笑顔。
「う、うん。私もびっくり」
「ゆゆちゃんかわいいからな」
普通にそんなことを言えるなんてすごいと思う。尊敬する。
「あ、ライト。先輩がいい加減に生徒会来いって怒ってたぜ?」
「知らねー。言わせとけ」
「もう、そんなんだから成績悪いまま「おれはことのっちさえ見れればそれでいいんだよ」
「そ、そう…」
コタロウが苦笑いする。
(あ、灯くん引かれてる)
アイドルが好きなのは分かるが、公表しすぎだ。
「あ!コタロウも来てたのか!
ゆゆとライトのぶんしかパン買ってねェんだけど」
「ああ、いいぜ。おれは買ってあるからな」
またもやイチゴパンだ。
「皆イチゴ好きなのかー。おれも今度食ってみるかなー」
「テメェ吐き出すんじゃねェぞ」
「そうそう。そんなことしたらイチゴに失礼だぜ」
「上、食べ物粗末にしちゃダメだよ」
「何だよお前ら、おれ吐き出したみたいな言い方すんなよ」
皆の笑い声が辺りにこだまする。
脳内再生、宮原灯(CV,小野友樹)、九十九小太郎(CV,加隈亜衣)でお願いします。