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世界の支配者はリア充がしたい  作者: 魔月琴理
22/23

そこで起こったことなんて私には関係n…!?

「伊扇」

「何?まこっくん」

「おれたちは、本当に『齢をとってる』のか?」

真琴は自身の手を見つめながら聞いた。

「…」

伊扇の目が少しだけ見開く。そんなこと分からない。いや、考えないようにしてきた。

責任が『二代目』に転嫁してから1年。真琴の誕生日は過ぎた。しかし彼の体は未だに22歳のままだ。あのとき、12歳足した体にされたが…身長は伸びているのだろうか。

「っていうか、もう死ねるのか?」

「な、何を言ってるの?」

『二代目』に転嫁したから自分たちはもう『神』ではない?世界が自分の思い通りになる力は確かになくなった…が、齢をとっている感覚は全くない。まさか力をなくしただけなのか…?自分たちはまだ不老不死なのだろうか。

(現に、英助はおれたちのことをまだ思いだしてないし…)

『お前、誰だ?』

久登の手を握りながらこちらを警戒していた英助の顔を思い出す。自分は実の兄なのに、弟は覚えていない。

(3人で一緒に暮らしてたのに…)

自分たちが『一代目』にされてから5年たった。英助たちが『二代目』にされてから1年たった。周りの人は神にされた人に関する記憶を全て失う。それは3人で暮らしていた、伊扇、真琴、英助にも同じだった。英助は一代目にされた伊扇と真琴に関する記憶を失ったのだ。

英助が二代目にされた直後、自分たちのことを思い出してくれるのではないかと思ったが、全く思いださなかった。

「えーすけ…」

「…あんた、本当に英助のことが好きだよな」

「当然だよ。家族だもん」

「…」

そっぽを向いた真琴がいつものように野菜ジュースの袋をくしゃりと握った。



「…おれから言えるのは。神になるといろいろ不便になるってこと。

 一つは『自分の思ったことが現実になる』これは経験してるでしょ?」

ファミレスの席。伊扇が人差し指を立てる。由々はこくりと頷いた。

「えっと、お兄ちゃんの顔が突然変わったこと、かな」

「ふふふっ。本当は他にも経験してるんだけどね~。まぁ最近起きたことと

 これから起きる『いい偶然』は全て君の思ったことが起こってると思えば

 いいよ~」

「そっそんなにですか?」

「うん。二つ目は…『不老不死になる』。

 ゾンビと違って痛みは感じるけど、ゆゆちゃんはもう齢をとらないんだ。

 神になっちゃったからね。それから、屋上から飛び降りても死なないよ?

 まぁ、痛いし血が出るからおすすめはしないけどね~」

伊扇はへらへら笑った。由々は絶句する。

「本当…ですか?」

「おれは嘘は言わないよ~経験したしね。

 三つ目もあるんだけど…ゆゆちゃんには関係ないかな」

へらりと笑った伊扇の顔に少しだけ影が差す。言いたくないことなのだろうか。あえて追求するか迷っていると、伊扇が立ちあがった。

「じゃあ、ゆゆちゃんも食べちゃったことだし、ここ出ようか。

 紹介したい人がいるんだ」

たれた目から黄色の光が覗く。「はい」と返事をして店を出た。


しばらく歩くと、ランドセルを背負った小学生が歩いているのに気付いた。

「日曜なのに、何かあったのかな」

スマホの中に言ったつもりだったが、隣を歩く伊扇が返事をしてくれた。

「あぁ。今日は参観会だったからね」

「そうなんですか…あれっ、いおうさんってお父さんなんですか?」

「やぁだな~。おれまだ25歳だよ。体は、だけど」

最後の言葉はよく聞き取れなかったが、由々は伊扇が25歳だということに目を見開く。

「えっ!?」

「あははは~そんな風には見えないでしょ~」

「あっ、ご、ごめんなさい…」

「いいよいいよ。おれ、老け顔だから」

ほほ笑む顔がとても大人っぽい。顔のつくりというより表情や雰囲気がかなり大人に見えるのだろう。

「えっと、どんな人に会うんですか?」

「あぁ、真っ黒な髪しててピンクと紫の中間の瞳した男だよ。

 おれと一緒に住んでるんだけどね~。今家にいると思うから」

伊扇の家。神社の隣…?

「大きな神社ですね…」

「あぁ。これおれの。

 入って?お茶用意するね…まこっく~ん!」

今、とんでもないことを聞いた気がする。由々は伊扇を二度見してしまった。

伊扇は居間に由々を案内して二階に『まこっくん』を呼びに行った。

「あれ~?まこっくん?いないの?」

(いないのかな)

「むむぅ、いまさら引き算など、何を考えているのじゃ。

 この国のきょういくきかんは」

高い女の子の声がすぐ近くで聞こえて、由々は驚き肩を上げる。

見ると、小学2年生くらいだろうか。小さな女の子が座って、机にノートを開いて唸っていた。

「…えっと…?」

「むっ!そなたは誰じゃ?いおーの友達か?」

女の子が由々を見上げる。白と赤の巫女の服を着ている。

ぽってりとしたほっぺたがかわいらしい。目がかなりたれている。大きな瞳は黄色。大きめの口。髪は黒い。一部だけメッシュを入れたように白いが。

それを見てすぐ分かった。この子は伊扇の子供だろう。

(この子は伊扇さんに似すぎだよね。

 伊扇さん、子供いないって言ってたのに)

「私、伊扇さんの友達です」

「そうか!わらわは『東屋暦あずまや こよみ』じゃ」

立ちあがって得意げに腰に手を当てる暦はとてもかわいらしい。

(あずまや、って英助くんと伊扇さんの名字だったよね。

 子供かぁ。かわいいかも)

「ごめんね~、まこっくんどっか行ってるみたい。

 あっ、こよみ姉さん。帰ってたの~?」

お茶を持ってきた伊扇が放った一言に由々は「えっ!?」と声をもらす。

「ね、姉さん…?子供じゃないんですか…」

「だから、おれは子供がいないんだよ~?

 今はこうだけど、こよみ姉さん実h「こらぁぁあああ!!」

お茶を机に置いた瞬間、暦のとび蹴りが伊扇に炸裂する。

「ひぐっぐっ!?痛いなぁ。本当のことじゃないか」

「いいから黙ってろ。今は8歳の女の子なのじゃ」

伊扇が「まぁそうだね」と苦笑した。


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