表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界の支配者はリア充がしたい  作者: 魔月琴理
2/23

これは私のせいじゃない

世界の支配者の力ってどういうことなんだろうか。

 2


夕ご飯はおいしくなっていた。

(どういうこと?)

いきなり変わるなんてありえない。

「お兄ちゃん、どうしてそんなに…」

「あぁ、実はな」

キッチンで皿洗いをしていた雅に声をかけると、キッチンにあった袋の中から

『顔面パック』を取り出した。

「これ、やって見たんや!」

ドヤ顔で叫ぶ。

「…え?」

顔面パック…?

「でも、途中で寝ちゃってなー時間過ぎてたの気付かんくて

 いそいではずしたらこうなっとった」

あははっと笑う兄に首をかしげた。

「な…」

「よく分からんけど、こっちの方がええやろ?」

「そ、そりゃあ」

(そっちの方がいいに決まってる)

とは言わずに、小さくうなずいた。

「でも、それ誰からもらったの?」

「ん?上からやで?ゆゆの友達の上から」

「えっ?」

上。眩恩園上はゆゆの幼馴染である。

クラスが一緒。人気者。ちなみにツリ目のイケメン。

派手な茶髪はツンツンしており、同じ色の瞳がきれいな高校生。

「あいつ、何やってるんだか」

「お兄ちゃん、嬉しかったで~。ゆゆが男の子と仲良くしてる

 って聞いて」

兄がふぅっとためいきをつく。

「ま、まぁ上は、ね」

一番話しかけてくれる。

「…!まさかゆゆ!おまん、もう上と恋人なったんか?!」

「ええっ?!」

「あかんであかん!

 お兄ちゃん許さへんで!そんなん絶対あかんて!」

首をふって肩を持ってゆすってくる兄。

「ち、違うって」

「ゆゆ。

 …ゆゆにはお兄ちゃんがいるんだから、さみしいなんて思わなくて

 いいんだぞ?」

突然のイケボ。きれいな青い髪がふわりとゆれる。

(ズルいよ)

兄はふとしたところで関西弁がなくなる。

しかし、それはゆゆも一緒である。

「お兄ちゃんは心配しなくてええ。

 ウチはさみしいなんて感じたことあらへん」

「なら、よかった」

にかっと笑う。

ゆゆはこの笑顔が大好きだ。

(今は、イケメンだからよけいに)

でも、格好良くなったのは顔面パックのせい。

ということは

(これはあたしのせいじゃない)





次の日、兄の作った『おいしい』朝ごはんを食べて

いつもより早く登校した。

「ゆゆ!待ってや~」

「お兄ちゃん、遅れるよ?」

普段は一緒に登校しないのだが(兄が格好悪かったから)

今日からは一緒である。

「に、してもゆゆが『お兄ちゃん』って呼んでくれる日がくるなんてな~」

「ちょ、ちょっと気が変わっただけ」

「お兄ちゃん嬉しいで!」

「分かった分かった」

真っ赤になって言っても説得力がないのは分かっているが

しょうがない、照れ隠しだ。

「みて!あのイケメン誰?」

黄色い声が聞こえて前を向くと、大勢の雅の同級生…女子の先輩たちが

雅の方に向かって走ってきていた。

「きゃああ!超かっこいい!」

「誰誰~?こんなイケメン人この学校にいたっけ?」

雅の顔をのぞきこんだりきゃあきゃあ話したりする女子たち。

「お、お兄ちゃん…」

不安になって兄を見上げると雅がゆゆの腕をぎゅっとつかんだ。

「安心して?お兄ちゃんはゆゆだけ見てるから」

きゅうんっ。

これほどまでに胸がきゅんとなったことなどあるだろうか。

兄はにかっと笑うと、前を向いて女子たちに言った。

「何や何や。おれ、雅やで?

 椿坂雅。3‐Bの」

兄のアホ毛がぴょこんとはねてくるっと二回ほど内側に回転する。

女子たちの目が見開かれ、すぐにまたハートになった。

「うっそ~!雅くん?」

「前からちょっとカッコイイかもって思ってたけど

 これほどとは~!」

「ゆゆ、お兄ちゃん委員会あるさかい、先行くな?」

「うん」

女子たちに手をひっぱられて教室に向かう兄を見送っていると

頭にボールがあたった。


「ぎゃっ!?」


「あ、悪ィ!」


サッカーボールである。

(誰だろ。痛いなぁ)

「ゆゆ!ボールあたったよな?」

聞きなれた声が聞こえて振り向くと、見なれた顔だった。

「上」

「いやー、今のはおれじゃねェんだけど。一応おれの後輩がやったことだから

 謝るな。ホント悪ィ」

「べ、別にいいけど」

「…あのさ、ゆゆ」

ふいに声が低くなって驚いて上を見上げる。

「ちょっと、聞いてほしいんだけど」

上が珍しく真剣な顔をしている。

「…おれの、彼女になってくれ」

目を見開いて、かたまってしまった。


「は…?」


(なんですかこれは?!)


たしかに、上のことはイケメンだし、付き合いたいとは思っていた。

でも、まさかこんなに早く。

ーキミが世界の支配者だ!

あの声と顔が脳裏にうかぶ。

(ま、まさか)

これが力?

(でも、困るよ急にそんな)

上とはまだ友達でいたい気もする。

ゆゆが言葉を発せないでいると、上が口を開いた。




「あ、彼女っていうか彼女のふりだけど」


「…はにゃ?」


変な高い声が出てしまって赤面する。

「実はこの頃、ストーカーがひどくてよ。

 …ゆゆを彼女って言えば皆諦めるかなって思って。

 おれ、モテモテすぎて困っちゃうぜ~」

あっははは!あっけらかんに笑う。

「な、何それ」

涙声になっているのが自分でも分かった。

「ゆ、ゆゆ?」

「そんなの、私じゃなくてもいいじゃん」

自分にはいいところなんて一つもないんだから。

「もっとかわいくて素敵な女の子いるじゃん!

 私なんかよりっ!」

「お前がいいんだよ」

優しい声だった。

(あ…れ?)

こんな声知らない。

こんな上知らない。

うるさくしたから、てっきり怒られてしまうかもと思っていた。

「う、あ、そ、それならまぁしょうがないかなとか」

目をそらして言うと、手をつながれた。

「そうと決まったら、恋人っぽいことしなくちゃな!」

「う、上!もう授業はじまっちゃうよ?!」

すごくうれしい。けど

(これもストーカーのせい。

 …私のせいじゃない)

脳内再生は、雅(CV,山下大輝)上(CV,柿原徹也)でお願いします

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ