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世界の支配者はリア充がしたい  作者: 魔月琴理
14/23

文学少年の彼は小さくはない

『由々ちゃん。僕は…』

思いだすのは、あの幸せな時間。

『君が、大切なんだ』

『だから?だからそうやって』

そのあとの言葉は、無知な少女には表現できないものだった。

幼い少女の目に涙があふれる。

まだ幼い由々の兄も、涙で顔がぐちゃぐちゃだった。

『そうだよ。君は僕が嫌いかい?』

こんなに自分を捨てる自分が。由々は嫌いだろう。

しかし

『…げねとさん』

小さな口から発せられた言葉は、逆のものだった。



             『大好き』



          ●~*●~*●~*●~*●~*


「はは…何思いだしてるんだろ、僕」

「ん?何か言いました?」

こんなに近くにいるのに。

君の中に、もうあのときの僕はいない。

(そんなこと知ってるのにな)

「ううん。何でもない」

「元世界の支配者さんって、名前何ていうんですか?」

ふいにツイッタ―を閉じた由々が元世界の支配者と目を合わせる。

「えっ?」

「言いにくいので、教えてくれるといいんですが…」

「…いや、そんなの忘れちゃったな」

本当は忘れてなんかいない。

しかし。

(思いだされるのが怖い)

自分で消したのだ。自分に関する由々と雅の記憶は、全て。

「それならいいです」

冷たい目で言った由々。

もし、今あのことを思い出したら彼女はなんて言うだろう。

(はは…僕って臆病だな)

痛む胸をおさえて、無理して乾いた笑いをもらした。



次の日の昼休み。

「王子様たちだ…今日もかっこいい…!」

「上くん、ヤバい超イケメン…!チャラチャラしてるとこもいい!」

「灯くんクールで背高い!かっこいい!」

「コタロウく~ん!かわいい!あざとい!」

由々を囲んで歩くのは3人の王子様である。

(やっぱ人気なんだよね)

自分がどうしてここにいるのか分からない。

それは、一週間経った今でもであった。

「由々ちゃん?パン食べるか?」

「あ!ありがと、コタロウくん」

ふにゃ…と嬉しそうに笑った小太郎にきゅんとする。

「由々、今度の試合見に来てくれるって言ってたよな。

 この紙に日時と場所書いといたから。来てくれよ」

「うん。ありがとう、ライトくん」

ぶっきらぼうにそっぽを向いた灯は恥かしそうに頬を染めていた。

「由々!おれの応援も頼むぜ?」

「も、もちろん。応援だけしかできないけど…」

「ははっ!いてくれるだけで、嬉しいから」

優しい笑顔。

こんな顔もできるんだな。と、どきっとする。

王子様。3人の由々の王子様は、心臓に悪い。


「詩杏きゅん!本重たいでしょ。私が持つよ!」

「ううん!私に貸して!」

「ちょっと!詩杏きゅんを助けるのは私!」

突然大勢の女子の高い声が聞こえた。

「ん?何だ?」

「詩杏?」

小太郎と灯が首をかしげる。

詩杏。その名前には聞きおぼえがある。由々は小太郎からもらった

イチゴパンを机において立ち上がった。

そして女子の声のした方に向かって駆けだす。

「由々ちゃん?どこ行くんだ!?」

小太郎がイチゴパンをおいて由々を追い掛ける。上と灯もそれに続いた。




「詩杏くん!」

「何じゃ。そなたか」

「大丈夫?部活の時に一緒に持っていこうって言ったのに…」

大量の本を積み上げて持っていこうとした詩杏が由々の方を向く。

水色のさらさらした髪。切れ長の目は濃い赤い色。高い鼻。小さな口。

そして、てっぺんのアホ毛。小さな背丈は160もないだろう。

彼は小太郎とは違ったタイプの童顔だった。

「いいのじゃ。小生だけで持てる。わざわざ由々の手を使うことなどない」

「でも、重いよね…」

「ふん。小生だって男なのじゃ。これくらい一人で……うぁっ!」

「詩杏くん!」

由々が詩杏を抱きとめる。

大量の本が床にばらばらと落ちる。

「あ…大丈夫?」

詩杏は目を見開いて下唇をかみ、真っ赤な顔で由々の目を見ていた。

(あ…れ?)

その瞳はくるくると泳ぐ。詩杏の胸に当てた手で

心臓の鼓動が異常に速くなるのを感じた。

「あ…うあぁあああっ!?」

「おいいいいいいいいいいい!!!」

詩杏が甲高い大声を上げる。

と同時に、上の大声が近づいてきた。

ーどかーん!!!

漫画ならそんな効果音がつきそうな勢いで…上が、詩杏と由々の間に

飛び込む。

「ぎゃっ!?」

「な、何じゃ!」

「何じゃじゃねー!!お前、由々はおれの彼女だぞ!どこ触ってんだ!」

「えっ?」

由々がきょとんとする。

「えっ何どうしたの?」

「あ…いや、その…」

詩杏が口ごもる。

「とにかーーく!許さねぇぞ!」

「で、でも小生のせいじゃないのじゃ!」

「うるせー!チビのくせに生意気なヤツm「そっちがうるさいのじゃ!

迷惑になってることも気付かんのか!」

詩杏が上の声をさえぎる。

はっとして周りを見ると、食堂にいる全員の注目を集めていた。

由々が真っ赤な顔で口に人差し指を当てている。

「あ、悪い…」

「はっ、この阿呆め」

「なんだと…?「上!しーっ。迷惑になってる…かな」

いらいらっとした気持ちを落ちつけようとするが、得意顔の詩杏に

またムカつく。

「…てめぇ、どこの誰だ」

「1‐C、相留詩杏あいる しあんじゃ」

「上、詩杏くんは文芸部の後輩だから、仲良く…ね?」

「まぁ由々の友達なら、そうしてぇとこだが。

 って、お前、後輩なら敬語使えよ!おれにも由々にも」

「由々には許可を取ってあるからいいのじゃ。

 おっ?そなた、先輩だったのか。気付かなかったぞ?」

口角を上げて笑う詩杏をまた苛立った目でにらむ。

「てめ…「上!もういいよ…」

「そうだぜ!詩杏くんかわいいぜ~」

小太郎が詩杏の頭に手をのせてぽんぽんと撫でる。

「うるさいのじゃ!」

あはははっ。小太郎がしゃがんで本を積み始めた。

「詩杏って、たしか、おれたちと同じだったよな」

灯も小太郎を見てしゃがんで本を積み上げる。

「うん」

灯の言葉に由々が頷く。

「詩杏くんは、皆と同じように、『王子様』って呼ばれてる。 

 4人目の王子様だよ」



相留詩杏(cv島崎信長(高め))でお願いします!

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