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世界の支配者はリア充がしたい  作者: 魔月琴理
12/23

お嬢様なトップアイドルの彼女が何を思うのか分からない

「はぁ…今日も疲れたぜ」

「じぇ、でしょ、ことのっち!」

「み、ミーコちゃん、もうライブは終わったからいいんd「じぇ!」

ミーコと呼ばれた女がことのの口を手でおさえる。

「…んんっ」

「どこで聞かれてるか分かんないでしょ、ことのっち♪」

「じぇったい、わざとだじぇ…」

「そ!それでこそことのっちね」

うふふっ。今度はことのの口に指をあてる。

ミーコこと『立花美子たちばな みこ』は、27歳。

ことのっちのマネージャーをしている。スカウトをしたのもこの女だ。

そして、ことのっちの大切な秘密を知っているのも

ミーコだけである。

「ミーコちゃん、スカートは嫌だじぇ?」

「知ってるわよ。だから衣装全部短パンにしてるじゃない」

「…じぇんぶ、おまかせするじぇ」

「任せてVv」

ミーコがくるりと一回転して黒いポニーテールをゆらす。

「そうだわ、ことのっち」

唐突に声のトーンが下がる。

ことのが姿勢を正す。

ミーコがこういう低い声を出すときは、あの『秘密』についての話だ。

「今度の番組の企画なんだけど」

次の言葉を待つ。ミーコがことのの隣に座る。

「…実はね」


そのとき、楽屋のドアがばんっと大きな音を立てた。

ことのとミーコが顔を見合わせてそちらを向くと、ドアが開かれていた。

「ことのっち?いらっしゃいますの?」

「えっ!?」

「私が、次の番組で勝負いたしますわ!」

ふふんと鼻を鳴らして言った女の子には見覚えがあった。

「…えっと、たしか」

「『のぞみん』ですわ!『天野希未あまの のぞみ

 トップアイドルの名前も知らないんですの?失礼な人ですわね」

(トップアイドルで自分でいうのか…。

 そっか、のぞみんか。前に歌番組で歌ってて、すごいって思ったんだよな)

薄い桃色の長い髪を赤いリボンでツインテールにしている。

前髪はよく言う「ぱっつん」だ、それに隠れてときどき見える眉毛は少し太め。

大きな目の中の水色の瞳は、きらきらしていてかわいらしい。そして150センチ前後の小さな身長。俗に言う『ロリータ』を連想させるマスコット的な容姿。

…だが、このお高くきまったお嬢様気質。

ファンにはそれがいいらしい。

ことのっちは、ふわふわした金髪はショートカットで、前髪は長くて横に垂らしている。細い眉毛とタレた大きな目の中の深い青の瞳は、きらきらしている。165センチくらいの身長だって、運動の時には役立つ。『ロリータ』と言ったってすぐ通用するだろう。

…だが、語尾に「じぇ」をつけてしゃべるし、一人称は「おれ」である。性格だってかなり活発だ。

ファンにはそれが人気なのだが。

(ギャップってやつなのか?

 でものぞみんって、いつもロリータな曲を歌うんだよな)

『♪かわいさだけで勝負しちゃダメダメ!

 こっち向いてくれたら…ぎゅぎゅっ!』

(まぁ、おれは絶対歌わないけどな)

歌と衣装がピンクや白で統一されてるのだ。しかしトークのときは、とてもしっかり者のお嬢様だ。

「ちょっと聞いてますの?

 今度の番組で、あなたと水泳で勝負いたしますわ!」

「…えっ?」

ことのがきょとんと首をかしげる。

「って、ことなのよ」

「まさか、ミーコちゃん!さっきの話って」

「そう。ことのっち、今度の番組で…」

「私と水泳勝負ですわ!!」

「えええええええっ!?無理だz…だじぇ!」

「何でですの?」

次は希未がきょとんとする。

「そ、それは」

「ははぁ…もしかして」

希未の口角がくいっと上がった。

「…ことのっち、泳げないんですの~??」

「!」

「ふふふ。それなら仕方ないですわね?」

「ち、違うじぇ!」

思わず大声が出る。

美子がはっと息をのむ。

「お、おれは学校代表で水泳大会行ったことあるじぇ!」

「そんなの、私だって普通にありますわよ」

「お前にはじぇったい勝つじぇ!」

楽屋にことのの声がこだまする。希未は驚いて固まっていたが、すぐにまた口角を上げた。

「楽しみにしてますわよ。まぁ、勝つのは私ですが」

楽屋から出ていく彼女。

ぱたんと閉まるドアの音で、ことのがへたりと座り込んだ。

「…やっちまった」

「どうするつもりなのよ…」

「何でちょっと楽しそうなんだよ!これ、ヤバいだろ!?」

「そうね、あと、ことのっち。口癖抜けてるわよ♪」

「どうすればいいんだじぇ~っ!!」





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