ライブとは大変なものだと聞いていない
「わん、つー!」
大きなタレ目の中の瞳は青く、髪もくせのある金色。
「じぇーんぶ!」
「「じぇ~!」」
女の子にしては、少しある背丈。(165はないが)
どうやら『じぇ』と語尾につけて話すらしい。
ステージに立って踊って歌う『彼女』を、由々はどうしても
「…上、ことのっちって」
灯に聞こえないように上の耳元でささやく。
「コタロウくん、なのかな…?」
「そんなワケねーだろ。コタロウは男だぞ?どんなに女っぽくても
まずあんな格好で歌えねーって」
けらけらと笑う上に、由々は「まぁそうだよね」と頷く。
が、納得はできなかった。
($・・)/~~~
それくらい、似ていたのだ。
「コタロウはいいよな~。あんなかわいい子と寝られるんだぜ~?」
「それ言ったらいくらあの優しいコタロウでもキレるぞ」
「それ以前に、一緒に寝てないと思うよ…」
ライブ会場の中の自販機でジュースを買って3人で座って飲む。
灯はまだ熱が冷めないようで、かわいかったと熱弁をふるっている。
「えっ?由々は寝てねーのか?」
「うん。…灯くんはきょうだいいるんだっけ?」
「弟がいる。一緒に寝てるぞ」
「えーっ?!」
「って言っても、
弟、まだ4歳だろ?」
「おう。あいつ一人じゃ怖いとか言ってくるからな」
「お前ら性格全然違うのに、顔は本当そっくりなんだよなー」
上が苦笑いする。
夜が怖いと言って甘えるあたり、たしかに灯とは正反対の性格だろう。
「明はマジで天使だよな~…あんなかわいい子いねーって」
「ことのっちの方が100倍かわいい」
「そんなにかわいいの?」
灯の言葉を無視して上に問う。
「あぁ、前に明が大切なおもちゃを落としたって泣いちまってな、
そのときにおれが見つけて渡してやったら『ありがとお、お兄ちゃん』って!
『お兄ちゃん』って!ヤバくね!?涙目で見上げられたんだぜ!?
…あれはヤバかった」
「おい、おれの弟だぞ」
上が珍しく目を泳がせて息を荒げている。
由々はオレンジジュースをかたむけて飲むと、「そっかぁ、会いたいな」と言った。
「今度会わせてやるよ。あいつも喜ぶ」
(うわぁ…お兄ちゃんだなぁ…)
ふっと口角を緩めて目を細めて笑う顔は格好いい。
と、
「あっ!お兄ちゃんいた!」
まだ発音が上手とは言えないかわいい声がして、3人はそちらを見た。
「わっ!?灯くんが小さくなった!?」
オレンジのふわりとした髪、大きなジト目、小さな八重歯がちらりと見える
幼児がてけてけと歩いてきていた。
「いや、おれここにいるから」
「…えっ!?じゃああの子が」
「お~!明!久しぶりだな、覚えてるか?」
上がすくっと立ち上がってその男の子に近づく。
「…お兄ちゃんのおともだち。
上お兄ちゃん、こんにちは」
「おおお!覚えててくれたのか!明、こんにちは」
警戒したように口元をぎゅっとつむぐ顔は、本当にかわいらしかった。
「お兄ちゃん、がっこおのかばん忘れてたの」
「あぁ、今日学校じゃないから、大丈夫だったんだけど
…まぁありがとな」
にかっと笑った顔がかわいくて、上と由々が大ダメージを受けた。
(*^_^*)
「ことのっちの握手会もだいぶ並ぶな~」
「人気だからな」
明くんがバッグを渡してくれたので灯の荷物はだいぶ増えたが
上と由々はまだ待つ気力を貰えた。
「かわいかったね~Vv」
「本当だよな!」




