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世界の支配者はリア充がしたい  作者: 魔月琴理
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私が世界の支配者なんてありえない

自分の思ったことが本当になっちゃうなんて、うらやましいなぁなんて思いながら書きました。

帰ってきたら、すぐに階段を駆け上がり部屋の鍵をかける。

そして、ふぅっとためいきをつく。

中学生の時から全く変わらない部屋。シンプルでかわいさのかけらもない。

(今日も頑張ったよね、私)

中の下。

平々凡々というよりは下の女子高生、『椿坂由々《つばきざかゆゆ》』は、毎日に飽き飽きしている。

高校1年生だというのに夢の一つも持てないし、進学先のことも考えたくない。

今はただ、時が過ぎていくのを周りに流されながら生きていくだけ。

周りの女子高生は殆ど『リア充』つまりリアルに充実している。

友達や家族、恋人などに恵まれ、楽しい生活をしているのだ。

残念だが、由々にはそういった経験は全くないし、これからもしないだろうと思っている。

(リア充か……)

この間、友達が付き合った。

「ごめ~ん。由々、彼氏と帰るんだ~」

あんな笑顔、見たことなかった。

(私は、しなくていい……かな)

楽しそうだと思うが、別に願っていない。

充実はしていないが、今の生活だって別に悪くはない

(……はずだよね)

今日もパソコンの電源を入れて、いつも通りにネットを始めた。


「ゆ~ゆ~?どこやねん?」

ネット開始早々、兄の声が聞こえた。

「何?」

兄は2歳年上。静岡《しぞーか》に越してくる前に住んでいた大阪《おーさか》の

関西弁がいまだに抜けない。

名前は『椿坂雅《つばきざかみやび》』。

由々に似た太めの眉毛、くるくるとする髪、横に長い目、そして同じ様なアホ毛が垂れている。

ちなみに、不細工である。

由々は身長が低く、ぴょこぴょことしたリスのような雰囲気があるからまだ可愛い方だが

兄の方は全然格好よくない。

「ご飯作ったさか「いらない」

ご飯もおいしくない。自分で作った方がいい。

「ゆゆは反抗期なんやなぁかわええ」

「……」

由々のことが大好きである。

(本当うっとおしい!)

親は仕事で二人ともめったに帰ってこない。

由々は兄と二人で生活している。

「で、いつお兄ちゃんって呼んでくれるんや?」

「呼ぶわけないでしょ!あっち行ってて!」

目の前でぴしゃりと自室のドアを閉めた。

(バカ兄なんてだいっきらい!)

もっとかっこよければよかった。

性格は優しいところもあるのに。

ピンクのイアホンを耳に入れて、動画の音量を上げた。

(あ、そういえばメール来てるかな)

ホーム画面に戻ってメールを確認する。

すると、めったに来ないそれが届いていた。

誰からだろうと思って開けると、いきなり画面が白くなった。

「や、ヤダ。バグ?」

首をかしげてマウスを動かそうとすると耳に爆音が走った。


「びーーーーーーっ!!!」


「きゃっ!!」


何が起こったのか分からないが、おそるおそる画面を見ると

画面が真っ赤になっていた。

(ウソっ。どうしよう!これって都市伝説とか怖いヤツじゃ…?!)

急に怖くなって、動けずにいると

「ふぅっ」

イアホンから誰かの息が聞こえた。

(ヤバい!絶対これ怖いヤツだ!)

すると、真っ赤なものがぱちりと閉じた。

「…?」

それはだんだんルーズしていき、また開かれる。

真っ赤なものは、目だった。

真っ黒な髪、真っ赤な瞳…整った顔立ちの青年が微笑んでいた。

「やあ。君が由々ちゃんだね?」

「?!」

「こんばんは。僕は世界の支配者だよ」

「え?」

デフォルメといわれる感じ…二頭身くらいのかわいい青年は画面をぴょこぴょこ

はねながら言った。

「せ、世界の支配者?」

「うん。まぁ、今日から君に変わるけどね」

意味が分からない。

(わ、私何か変なソフトを買ったっけ?)

頭の中で「ボーカロイド ソフト」という言葉を検索する。

(何もダウンロードしてないのに、急に画面に現れるなんて変だ)

「あの…あなたって何ですか?」

「封印された世界の支配者だよ」

「中二病なんですか…?」

「本当だよ?」

信じられない。

(意味分からない。シャットダウンしよっかな)

電源ボタンを押そうとすると、中の青年が手でバツを作った。

「あ、閉じないでよ。僕の話を聞いて?」

「イヤです。こんなのオカシイです」

「聞かないと、今から起こることが分からなくなるよ?」

今から起こる?何が?

「信じられません。あなたは何なんですか」

「だから、世界の「もういいです!」

それしか言わないらしい。うん。もう閉じよう。

電源ボタンを押した瞬間、イアホンから青年の声が聞こえた。

「今から君がこの世界の支配者だ」

すっと声が遠ざかっていく。

(ヤダ、いやがらせかな)

怖くなってパソコンを閉じると、階段を駆け上がる足音が聞こえた。

(はぁ…またバカ兄か。懲りないなぁ)

ため息をついてイアホンを耳から外すと、透き通るような優しい声が聞こえた。

「由々!何かあったんか?!」

ドアが開いて、入ってきたのは

奇麗な青い髪、太めの眉毛。

由々と同じような垂れたアホ毛。

パーツは全く変わらないはずなのに、誰か分からなかった。

「お、お兄ちゃん…?」

「由々…何があったん?」

とても、奇麗になっていたのだ。

イケメンと呼ばれる顔。そして、細い体。

「パソコンが壊れたんか?すごい音したさかい見に来てもうた」

はっとして首を横に振る。

「ううん。多分大丈夫」

言った瞬間、何故か目の奥が熱くなった。

(ん?何これ)

鼓動が速くなる。顔が上気するのが分かって、恥かしくなる。

ぽたりと手に熱い水が垂れた。

「ど、どうしたん!?」

「お兄ちゃん、怖かったぁ…っ!」

泣いてるんだ。私。それが分かったら、もう止まらなくなる。

由々。と優しい声がして、ぎゅっと抱きしめられた。

いいにおいがする。胸板が厚くなっている。

お兄ちゃんが変化したことは後で聞いてもいいような気がした。

それより今は、意味が分からないことでいっぱいだった。

「いきなり大きな音がしてね、怖かったの」

胸の中でぐずぐずと泣きながら言う。

「そしたらね、なんか人が現れて意味分かんないこと言って」

「もう大丈夫や。今日は一緒に寝ような」

涙でぐちゃぐちゃになった顔を上げると、見たことないイケメンがいた。

急に恥かしくなって、視線をそらす。

「…お兄ちゃん」

「やっとお兄ちゃんって呼んでくれた」

額にキスをされて、頭の中がぐちゃぐちゃになる。

(うっ。ずるいよお兄ちゃん…)



世界の支配者って何かかっこいいですよね?あれ?あたしだけっ?!

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