第七話
始めに・・・。この小説を書いている作者は、ガッチガチのド文系です。因数分解でめまいがします。大学で文系なのに、一年生で受ける一般教養の理数、自然系分野の単位が取れず、四年まで尾を引きました。
したがって、本話に出てくる科学っぽい所も作者の中学生以下の理数頭脳を絞り出して想像した。若しくは適当に調べて出てきた、えせ科学です。その点に留意してお読みいただきますようよろしくお願いします。
第七話です。ようやく彼らの仕事がはじまるます。
「ここから、火星までは約8300万km。航海日程は向こうでの銭湯興行七日。予備日三日をふくめ、全行程40日で予定しています。」
エレノア課長が概要を話す。火星までの距離は二年周期で変化する。最短で約5600万km、最長約4億km。初めて火星に到着したのは、NASAの有人宇宙探査船オリオン。この時、到着にかかった日数は約二年。その時船に乗って居たのは四人だけ。当然、火星に行く事が目的だったため余分な物は一切持っていない。当時の宇宙飛行士は自分達の船で使いもしない大量の水を輸送するなんて、考えもしなかっただろう。
2189年現在。宇宙での水輸送を生業とし、片道約二年かかった道筋を、たった15日で航行し、その上火星で銭湯を開こうとしているなんて誰が想像できただろうか。まぁ、今でもかなりの異端であることには変わりない。
「基本的な、ポジションは通常通り。甲板部部長はノーマン社長。当然、船の艦長としても乗船いただきます。事務部部長はマーガレットさん。無線部部長は私エレノアが。機関部部長寿ジィにお願いします。別館が航海している間、本館の方の番台頭代行はいつも通り、ラルフさんにお任せします。今回の航行で、新人二人が初航海となります。一応、顔合わせ済んでいるはずですが改めて、自己紹介を。」
(エレノア課長聞いてないよ。)
一平太が上司の無茶ブリに、狼狽していると、先程まで先輩にからかわれて真っ赤になっていたはずのユーリが席を立って前に出る。
「今日から、メガロケートスに乗艦する惑星間宇宙船三級通信士のユーリ・ノインツです。憧れだった銭湯屋大湯船の皆さんと、これから仕事が出来るかと思うと、とてもワクワクしています。皆さんどうぞよろしくお願いします。」
まるで、用意してあったかのように(ユーリは、新人が挨拶することを聞いていた。)
言葉を発すると、盛大に拍手を受けて席に戻ってきた。唖然とユーリの挨拶を聞いていた一平太に、次は一平太の番だぞ。と、目で合図を送ってくるユーリ。一度だけユーリに、ヘルプの意味を込めた視線を送ると、向けられた本人は、どんな意味にとったのか大きく頷いている。進退窮まったと、観念して前へ出る一平太。
「えぇ~、只今ご紹介に預かりました。小山一平太でございます。本日はお日柄も良く……。『宇宙にお日柄もクソもねぇぞ!!』……惑星間宇宙船三等航宙飛行士です。どうぞよろしくおねがいします。」
「短ぇぞ!!」
「「アッチは長いといいわネぇ」」
「初々しいなぁ~。ハハッ」
文句とヤジ。朝からの下品な邪推。プラス、イケメンフォロー。多様な言葉が年が近い先輩方から投げかけられる。そしてベテラン社員の方々は、いつものことなのか、温かく新人二人を見守っている。
朝からとどめを刺され、力無く席に戻るとユーリがニッコリ微笑んできた。
(ちきしょうっ!!何で俺ばっかり……)
「挨拶も終わったことですし、二人もそれぞれの部の先輩に話を聞いて早く仕事に慣れるように。社長。何かあれば。」
「そうだね、今回の仕事は、我々にとってルーティンのようなものだ。新人の二人にはちょうど良い訓練になると思う。だからといって先任諸君は気を抜くことの無いように頑張ってくれたまえ。」
「以上でブリーフィングを終わります。各員は、速やかに乗船用意をして発艦準備を整えてください。新人二人も用意が出来次第、先任とともに発艦準備をしてください。」
慌ただしくなるオフィスで新人二人はオフィスで待機していた。二人は昨日から船室に入っているため、特に用意する物もないのである。
「ママァー、行っちゃヤァァァ!!」
「仕方ないでしょう、ママお仕事なんだから。コレが終われば暫くこっちにいるから。分かって?ね、アレックス。」
「ボクも行くぅぅぅ!!」
「無茶言わないの。」
「エミリアお姉ちゃんと、一緒に待ってよ?ね?」
「おばさんだけじゃイヤァァア!!」
「おばっ………」
親子の会話と、説得して傷つく大人のアンサンブルを聞いていると、
「長距離輸送のときは、いつもこうなんだ。 アレックスもそれなりに聞き分けはいいんだけどね。いざそうなると子供だからね。やっぱり、寂しいんだよ。 」
と優しげな声が掛けられる。振り向くと、隻眼なのにそれを感じさせない、柔和な笑顔を浮かべた男性がいた。
「ラルフ・ブレタです。ゴタゴタしてて、挨拶も出来なかったからね。よろしく二人とも。」
ブレタ夫妻の息子さんだけあって、とてもやさしげだ。挨拶を二人で返していると、二人にローグ先輩から声がかかる。
「する事無いなら、発艦準備の手伝いするぞ。一平太は俺。ユーリは、課長か変態ブラザーズの後に生まれた方に話を聞きにいけ!!」
ぶっきらぼうに指示をとばすと、ローグ先輩は足早に去っていく。
「ほーら、先任から指示が下ったぞ。慌てず迅速に、『サー、イェッサー』だ。俺は良いから行ってきな!!」
「「ハイ」」
しっかり返事をすると、急いで後を追う一平太と先任を探しに行くユーリ。そんな二人を見て、
「若いってのはいいねぇ。俺も頑張らにゃ。」
そう一人ごちる、ラルフであった。
急いで先輩の後を追う一平太は、途中でユーリと別れ艦橋にきていた。すぐに、ローグから指示が飛ぶ。
「メインエンジンの出力を確認しろ。アイドリング出力まで来ているか?」
「出力30%。いつでも発艦出力までいけます。」
「機関部と連絡とって確認なさイ!」
いつの間にかきていた《変態ブラザーズ》の先に生まれた方こと、リーも指示を出す。
「了解。機関部と連絡取ります。」
一平太も必死に、指示について行く。
「確認取れました。いつでも行けるそうです。」
「了解。艦長。いつでも行けるワ。」
「分かった。無線部につなげ。発艦許可を申請。」
{発艦許可申請了解。《ルナ・ファミリア》管制コネクト、発艦許可受理。パイロット(水先案内人)に当艦のコントロールを一時的に移します。}
地球の海を航行する船は、出航する際湾内をでるまで、若しくは湾外の潮目の難しいエリアをでるまでパイロットが舵を切る。熟練の腕で、なるべく事故を減らすのが目的なのである。それは宇宙でも変わらない。技術の進歩により、パイロットが直接船で舵を切ることはないが、リモートコントロールにより湾内の安全と発艦する船を守る。
「コントロール移行確認。発艦合図を待ちます。」
メガロケートスは、リモートでドックの所定位置まで移動し、徐々に隔壁があがる。
いよいよ宇宙に出るときが近づいて来た。もう五分後には、知らない世界だ。一平太は今更襲う実感に武者震いしていた。
艦橋前方のスクリーンには《ルナ・ファミリア》で留守番をするアレックスとエミリアさん。そして、ラルフさんが手を振っていた。
「アイ・ハブ・コントロール。発艦合図おりましタ。」
「微速前進。」
「微速前進了解。びそーくぜんしーん。」
「「びそーくぜんしーん。」」
「メガロケートス発艦っ!」
ついに、大型水輸送船メガロケートスは一平太をのせて、大宇宙に漕ぎ出したのである。
《ルナ・ファミリア》居残り組も含め、宇宙輸水水道社の関係者全員だせました。
そして、一平太は宇宙に飛び出しました。……ちょびっと。
また、話が進まなぁい。楽しむ時間が増えたって事にしておこう。自分の中で。
読んでいただき有り難う御座います。