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湯船始めました。  作者: 世良美素
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第六話

 第六話です。言いたいことは、あとがきで書きます。今いえることは、「未来は誰にも分からない。」「スミマセンでした。」と言うことだけです。

 船室に戻って、荷解きをする。宇宙に物を持ってくるだけで、結構お金がかかるので手荷物は必要最低限の物しか持ってきていない。下着、私服、タオル、薬、耳栓、時計、ちょっとしたお菓子に家族の写真。最後の写真は、少しだけ格好つけて持ってきたものだ。

 何せ今は2189年、家族とは気軽に、{──ちょっと、一平っ!!聞いてるのっ!?──}話せる。

 一平太も詳しくは知らないが、量子ネットワーク通信とかいう技術を使って地球と、月周回軌道上にある《ルナ・ファミリア》までの距離約39万kmをラグなしに繋ぐことは雑作もないことらしい。しかも装置の小型化により船室の中の端末と、地球を直でつないでいる。流石に各家庭に一台と言うわけには行かないようだが、電話交換手よろしく量子ネットワーク通信交換手なる仕事があり、割と身近な宇宙だったりする。身近すぎた故に「若者の地球離れ」なんて事態になるのである。

 「わかってるよ!!母ちゃん。生水にも、食い過ぎにも気をつけるからっ。」

 {腹出して寝ないようにしなさいね。毎朝キチンと歯も磨きなさい。}

 自分達で付けた癖に(「太」がいらなかったわねぇ。)なんて言いながら「太抜き」の名前で呼んでいても母親は、母親のわけで。いつの時代の母親も、遠く離れたわが子に言うことは変わらない。これだけ進んだ技術があっても、心配の種は息子の健康だ。

 「わかった、わかった。」

 もう何度目かの「わかった」を繰り返していると、端末に映る母親の顔が真剣になり

 {……無事に帰ってくるんだよ。}

 と心底心配そうな声を上げた。

 「わかってる。明日から航海だから、暫く連絡出来ないかもしないけど心配しないで。母ちゃんこそ、季節の変わり目なんだから風邪なんか引かないように気をつけて。」

 日本は春から夏へと移り変わる時期。とはいえまだ肌寒い時もある。一平太も、年老いた。とまでは行かないが社長夫妻ほどの年齢の両親が心配なのである。

 {なぁに言ってんだい?アンタなんかよりコッチは何倍も生きてんだ!!体だけは丈夫だよっ!}

 「それもそうだな。じゃあ切るよ、母ちゃん。父ちゃんにもよろしく言っといて。」

 {わかったよ。伝えとく。一平もガンバんなさいよ!}

 そう言って母親からの連絡は終わった。

 「お母様との連絡は終わったのかい?」

 端末から母親の姿が消えてからすぐ、船室中の一平太に声が掛けられた。

 「すまない。何度かノックして声は掛けたのだが、返事が無くて。鍵も掛かっていないようだったから、入ってきてしまった。」

 声の主は、そう謝ると「座っていいかい?」と広くはない船室の、一つしかないイスに座った。

 出会ったばかりの侵入者。それも金髪ショートで美人な女性に母親との連絡を聞かれていたという事態に、少々の気恥ずかしさと施錠の重要性を覚えると、ベッドの上で彼女の方を向く。

 「で、どうしたんだ?え、えーと……」

 「ユーリ。ユーリ・ノインツ。ユーリでいい。私も一平太の事は呼び捨てだからな。」

 「お、おぅ…そうか、じゃ、じゃあユーリ……さん。なんか用か?それとも会社でなにかあったか?」

 一平太は、別に女性が苦手な訳ではない。女友達も少なくないし、女性経験も人並み以上……とは行かないが、ゼロではない。

 しかし、相手が美人だと勝手が違う。しかも金髪ショートだ。並ではない。故に思わず同期のユーリを「さん」付けでよんでしまったのだ。

 「呼び捨てで構わないのに。まぁ、いいか。それは追々慣れてもらうとして、私はここへ親睦会を催しにきたんだ。」

 「親睦会?」

 「そう。この宇宙輸水水道社の新入社員の同期。つまり、我々二人だが。の親交を深め宇宙ビギナー同士これから頑張って行きましょうと言うヤツだ!」

 「なるほど。で、何で俺の部屋なんだ?来たばっかで荷解き終わってないし、色々(主に母ちゃんとの電話)あって、バタバタしているんだけど。」

 「そうだろうなぁとは思っていたんだけど、主催者が呼びつけるのもどうかと思ってね。」

 普通は主催者が主催すんだから、主催者の部屋に呼ぶだろ。とか考えていると、

 「いや、わかっている。主催者が部屋を用意するのが道理だとは思うんだが、一応私も、その、嫁入り前だしな。」

 一平太が「?」を顔に浮かべていると、顔を赤くしたユーリが言葉を続ける。

 「……だからっ、まだっ、良く知らない異性を部屋に呼ぶのはどうなのかなぁ、とおもったわけだっ!!」

 耳まで真っ赤にした、ユーリがそう叫ぶ。

つまりは、我が身の貞操を気にしたのだ。先程、母親との連絡の前に双子から艶っぽい誘いを受けた。己の貞操の危機を感じて、やんわり断った事は心の中に封印しておこう。それはともかく、だからって見ず知らずの男の部屋に、菓子やらジュースやら持って突然押し掛けてくるのはどうかと思う。オブラートに包んで、そう伝えると

 「そ、それには気付かなかった。」

 と感心する始末だ。ユーリさんったらオッ・チャ・メぇ!?天然なのかな?と出来過ぎる同期の意外な一面が見えて少し安心した一平太は、ささやかな親睦会を開くことを許可した。楽しい時間は、滞り無く進んで、そのままお泊まり……なんて展開には勿論ならなかったが、親交は確実に深まったと思う。その証拠に

 「また明日な。一平太。」

 「おう。また明日なユーリ。」

 夜遅く解散する頃には呼び捨てで呼び合う仲になったのだ。金髪ショート美人とイイ関係になることは出来なかったが、「気が置けない」同期としての道は着実に前進したのであった。


 「ふぁ~ぁ。」 

 出港当日。起き抜けに一発でかい欠伸をする、一平太は若干フラツいていた。あまり、寝られていないのである。

 昨日の親睦会は、今日の事を考えてノンアルコールだった。疲れもあったし、船室のベッドの寝心地も悪くなかった。では何故寝られなかったのか。理由は、単純。遠足前の小学生と同じ、例の病気。《興奮して寝られなかった》を発病していた。重たい体を何とか起こし、船室に備え付けてある洗面台で顔洗う。落ちてくる瞼を気力で所定位置へ持ってくると、服を着替えて会社へと向かっていると、同期のユーリと出会う。

 「おはよう。ユーリも船室で寝たのか。」

 「おはよう。あの時間から寮に戻るのも億劫でね。そう言う一平太は、なんだか眠そうだね。慣れない枕では寝付けないタイプなのかい?それとも、興奮して寝付けなかったとか。」

 「そ、それは……まぁ、なんていうか……」

 図星を突かれてしどろもどろになっていると

 「まさかね!遠足前の小学生じゃあるまいし、一平太の事だから航宙士の教本の復習でしてたんだろ?勉強熱心なのは良いことだけど、今日から長い船旅なんだ。体調管理もしっかりしなきゃな!私も興奮してしまって、寝るのがおそくなってしまったよ。」

 (コイツ、俺のメンタルをピンポイントでガリガリ削ってきやがる。)一平太は勉強どころか、その小学生レベルなのだ。そもそも教本すら持ってきていない。天然の恐ろしさを、朝から味わう事になった一平太は(ヤッパリ教本ぐらいは持ってきた方が良かったか。)と思いながら、曖昧に頷く。

 そうして朝から満身創痍な一平太と、無自覚な刺客はオフィスへ向かう。オフィスに着くと、一平太達以外の社員は全員揃っていた。ついでにアレックスもいる。見知らぬ男女がいるが、社長の息子さんのラルフさんと、アレックスを預かってくれるエレノア課長の妹のエミリアさんだろう。

 「なんだぁ?新入二人は、朝から同伴出勤か?お熱いことで。」

 「私達の誘いは、断ったくせニっ!若い方がいいのネっ!!」

 「テクは私達の方が上ヨっ!!今度は私達でヤってヤりましょウ。」

 ニヤニヤと口元に笑みを浮かべながらチャカしてくるローグ先輩と、謎の勘違いに加え貞操の危機を感じる美人双子の発言に否定と拒否をしようとユーリの方を向く一平太。

 (……ユーリさん……何で顔真っ赤なんですか?そんなとこだけ、察しがいいんですね。)

 「ハイハイ、からかうのもそれぐらいにして。今から、長距離輸送案件。火星の補給基地ラガー・マーズに向けて、最終ブリーフィングを行います。」


 畜生っ!!一平太達まだ、ステーションにいるじゃねぇかっ!!イチャイチャしやがって!!ついでに最後の社員、まだでてねぇ!

 勝手にキャラが動き出す。なんていいますが、あれ私の場合は、展開を考えていない結果そうなると言うことが分かりました。書きたいことを書いていると間延びしますね。もう、次話のこと言うのやめます。

 キャラクターが勝手に動くので……。


読んでいただき有り難う御座います。 

 

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