第四話
第四話です。長くなりました。また進んでません。もう、あれです。まだ進みません。後二話は登場人物紹介です。(やけくそ
と言うわけでもうしばらくお待ち下さいませ。
《ルナ・ファミリア》のような宇宙ステーションに限らず、宇宙空間において水は貴重なものである。水資源が安定的に得られる場所は地球の他には現在見つかっておらず、利用可能な水資源は存在を確認することが出来るものの利用可能にするためのコストが非常に高く、まだまだ技術は発展途上段階にある。それらの事も貴重性を高める一因と言えるだろう。
これらのことから宇宙空間における銭湯《想の湯》の特異性が良くわかるはずなのだが、そのことに一平太はまだ気付いていない。
そんなこんなで、会社が隠した(隠していない)真実にようやく気付き、さらに後悔を深める一平太。そんな気持ちを知ってか知らずか、エレノア課長は案内を続ける。
「浴槽の水はポンプで循環しています。当然、循環毎に浄化フィルターを通し、飲むことが出来るレベルまで浄化。その後、殺菌して沸騰させ、そこの湯口から出てくるのです。」
因みに浄化フィルターは我が社の優秀なメカニックが作った特別性です。と、エレノア課長は自慢げに胸を張っていた。
「そうなんですか。」
凄さがイマイチ分からないので、適当に相槌を打つと、それが伝わったのかエレノア課長の口調が事務的なものに戻る。
「男子の浴槽は、日に二度。水を抜いてデッキブラシで掃除して下さい。」
と有無をいわさない口調で、はっきりオーダーされました。女子の浴槽の説明もあったが、一平太には基本的に関係のない事なのですぐ次の場所へ案内される。実を言うと興味は物凄く有ったのだが、エレノア課長が(それ以上深入りすれば……す。)と言外に込めている気がして、あまり突っ込まなかった。というか突っ込めなかった。
大浴場を出て階段の奥にある通路を進んでいくと、左手側にボイラー室があり先程の寿ジィが、真剣に計器類をチェックしていた。
ボイラー室を通り過ぎると、通路が続いている。
「このまま進んでいくと我が社が誇る大型水輸送艦メガロケートスが係留されているドックにつながります。」
ようやく宇宙船を扱う航宙士らしくなってきたと胸を躍らせて進んでいくと、そこには巨大な船があった。
「デッケェ……」
思わず、そう呟き唖然とながめていると
「大型水輸送船メガロケートス。《巨大な海獣》という意味の名に相応しい姿の船だろう。
全長約115m、幅約30m、深さ15m、最大積載量30000t、総重量20000tにもなる。メインエンジンは短時間の亜光速航行も可能の核融合エンジン二基、補助推進ユニットは六基。それに、この会社独自の特別な改造を加えてある。
そして、その大きさ故にどうしても大きくなってしまう挙動では出港や寄港の際に要求される繊細な動きに対応出来ない。繊細な動きに対応するために、両舷にドッキングしているタグボート《ジェミニ》のカストルとポルックスは、小型ながらも核融合エンジンを一基ずつ備え、二つ合わせればメインエンジン一基に匹敵する馬力をもっている。
ジェミニはタグボートとしての機能だけでなく、メガロケートスのサブエンジン機能も兼ね備え、単独戦闘を行える戦闘艦としても機能する。当然武装も核エネルギーパルスレーザーカノン二門に係留索射出装置、宇宙機雷敷設装置を装備し、メガロケートスと同サイズの武装した戦艦とも互角に渡り合う。
さ・ら・に、ジェミニの管制コントーロールを受けて、飛び回るパルスレーザーガンを二門備えた戦闘補助機兼脱出艇を両舷に各10機ずつ配備。対複数相手の艦隊戦もこなす、中小企業の水輸送船にはもったいないオーバースペックな代物だぜ。」
ほとんど息継ぎなしに、宇宙船の詳細なスペックを言ってのけたはエレノア課長ではない。
どことなく漂う気品に満ちた声の主はドックから現れた、筋骨隆々な爽やかイケメンの大男だった。
「俺は機関部、三級機関士のサラス・マホール・クシャトリヤ。寿ジィにはもう会ったか?あの人の弟子というか部下だ。」
背景に見えるはずのない謎のキラキラと、白い歯のキラキラが合わさって目がくらくらしてきそうだ。その上、物凄くしゃべる。若干ウルサいが、不思議とうざくはない。彼の持つ爽やかイケメンパワーのなせる技か。謎のイケメンパワーに圧されて、反応できないでいると、
「俺の事は気楽にサラスってよんでくれても良いぜ!」
女の子なら誰でも落とせそうなウィンクとともに右手がさしだされた。(どうでも良いが、今日は握手をしまくってるな。)一平太はしょうもない事を考えながら握手に応じる。
「あの、俺小山い「小山一平太君だろ?これから一緒に働く仲間なんだ!気楽にやろうじゃない!」……よろしくお願いします。」
くそう、イケメンめぇ~。許しちゃうわぁ。サラスの話の途中、いつの間にかいなくなっていたエレノア課長が戻ってくると、サラスは爽やかなイケメン残り香を撒き散らしながら、機関室の整備に戻っていった。
「彼はいつもあんな感じなのだけれど、悪い奴ではないし腕の確かな機関士よ。成長も期待できるから寿ジィも大事に育てているわ。」
無口な寿ジィと真逆で凸凹コンビなの。可笑しそうに笑うエレノア課長は、少し可愛かった。まぁ、直ぐに元の神経質な顔に戻ったけどね。
「次は艦内を見て貰うわ。」
船の前部、左舷側に跳ね橋が渡されており、そこを渡って艦内に入る。第一艦橋は中央部に有ると言うことなので、中央部に向かって歩いて行くと一平太は信じられないものを目にする。
「船の中に……銭湯がある。」
今日何度か有った衝撃の中で、一番大きなモノが一平太を襲う。(ドユコト?)思考回路がスパークし、旧世紀のアニメに出てくるポンコツロボットみたいになってしまった、カタコトの脳内を必死に整理する。(もう、銭湯有ったじゃん、また出てきちゃったじゃん。)そこで一平太はサラスのムダに長い説明のある一部分を思い出した。
「それに、この会社独自の特別な改造を加えてある。」
あぁこれね。そうそう、そうそう。この改造ね。どんなけ銭湯好きなんだよっ!!と、またしても心の中でツッコミを加える。しかも中途半端なノリツッコミだ。
その時何故か背中にゾワッと悪寒のようなモノが走った。エレノア課長がボソッと呟く。
「…きたわね。」
一平太は戸惑い、突っ立っていると、両肩にしなやか手が置かれる。
「「お兄さん、《垢すり》とかしてみなイ?」」
「「とっても気持ちいいんだけど、どうかしらン?」」
「もし、気に入ったら」「特別コースも」
「「シてあげル!!」」
(この人、絶対俺のデスクの斜向かいの変態デスクに座ってるわ。)変態デスクとは、いかがわしい雑誌が散乱している、件のデスクの事である。
(変態デスクは二席あった。さっきからのステレオ音声は気のせいじゃない!)勇気を振り絞って声のする方へ振り返る。
「「はぁーイ♪」」
そこには、白と黒の色違いチャイナ服を着た、同じ顔したスレンダー美人な、お姉さんが、二人いました。
「あなた達!キャッチは外でやりなさい。今は勤務時間中でしょ!」
エレノア課長が眉間にシワを寄せながら一喝する。どうやら言い慣れているらしい。
「うるさいわネ。私達目当て来てくれるお客もいるのにそんな事言って良いわケ?」
一人の美人がそう言うと、もう一人も
「そうヨ!姉さんの言うとおりヨ!私達も私利私欲の為だけにやってる分けじゃないワ!」
じゃあ私利私欲もあるんかい。とツッコミたくなったが、余計面倒くさいことになりそうなのでやめた。
「いかがわしい事して引っ張って来た客なんて客じゃないわ!!それに、この子は新入社員の小山一平太君よ。客引きしてないで自己紹介しなさい。」
「あら、そうなノ?そうならそうと早く言って頂戴。私はリー・チェイン、姉ヨ。仕事は甲板部の航宙士と、メカニック。趣味で垢すりもやってるワ。リー姐ってよんデっ♪」
妖艶なウィンクとともにハグを求められ、一平太は少し照れながらハグに応じた。「アラっ。イイカラダっ♪」と聞こえたような気がしたが、きっと気のせいだろう。
「姉さんズルーイっ!私は、アン・チェイン。妹で、仕事は通信部の通信士とメカニック。姉さんといっしょに趣味で垢すりやってるワ。私はアン姐ってよんで欲しいワ♪」
こちらもハグを求められたが、リー姐がまだ抱きついたままだったので両サイドから抱きつかれる形となってしまった。
「「よろしクっ♪」」
掛け声と同時にホッペにキスされ、夢見心地になる一平太。
エレノア課長は、それを見て呆れ顔になると、
「もう良いわ。あなた達は仕事にもどりなさい。」
「分かったわヨ。行こうアン!」
「そうネ。姉さン。」
「「またね、一平太♪」」
投げキッスを残しながら去っていく、二人をボーッと見送っていると、
「優秀なのよねぇ、あの兄弟……。」
サラッととんでも無い爆弾を落とすエレノア課長。
「エッ……どういう……」
「館内浴槽も見ておいて貰いたいの。」
エレノア課長は、一平太の質問を無視して案内を再開した。
遠くの方で
「イイケツしてたワ♪」
「カラダも良かったわネ、姉さン♪」
「「楽しめそうネ♪」」
世にもおぞましい笑い声が響くのを、一平太は聞こえない振りをした。
濃ゆいのを三名ほど出しました。女性率低めです。女装はいますが。
まだ後二人出しますので今しばらく辛抱を。
読んでいただき有り難う御座います。