第二十六話
第二十六話です。今回も時間がかかってしまいまして、申し訳ありません。この作品に登場する科学っぽいものは「似非」ですのであしからず。
シャアラが猛スピードで走り去ってから約二時間。一平太はいい加減帰りたくなっていた。
(……あれからずっと待ってるんですけど、何にも音沙汰無いってどう言うことですか?)
あまりのほっとかれっぷりに心の声ですら敬語になってしまう。
(サラスさんもニヤニヤしながら、コーヒー飲んでるし……)
「……って、いつの間にコーヒー飲んでるんですかっ!?」
「さっき、シャアラの助手のクレイトンさんが持ってきてくれたんだ。一平太のもあるけど、君は飲まないのかい?」
「それは……頂きますけど。」
と言ってカップを持ち、口に運ぶ……前に匂いやら色を確かめる。
「きちんとしたコーヒーだよ。銘柄は『ブルー・プラネット』。流石シャアラは良い豆をつかっている。」
サラスにそう言われて、恐る恐る口をつける。なる程香りは確かに良いようだ。きちんと焙煎された香ばしい匂いが一平太の鼻をくすぐった。が、
「………ん、苦ェ……」
お子ちゃま口の一平太には、結局、そのおいしさが分からなかった。
「君にはオレンジジュースの方が良かったかな?」
後ろから声かけたのは、一平太達がわざわざこうしてゆっくりとコーヒーを飲まざるを得ない状況にした張本人。《Dr. プラント》こと、シャアラ博士その人だった。
「やぁ、お帰りなさい。その様子だと何か収穫があったみたいですね。」
サラスがそう言うと、シャアラは子供みたいな笑顔をこちらに向けた。
「植物の栄養摂取障害の原因が分かったかもしれない。」
「そりゃすごいじゃないですか!!やっぱり学者さんっていうのは、急にパッと閃くもんなんですね!!」
するとシャアラは恥ずかしそうに頭を掻く。
「まぁ、学者としてはそんな風に閃く事もあるんだけど、今回は本当に苦労していたよ。でも君の、一平太の言葉で気がついたんだ。」
一平太はシャアラの言葉に首を傾げる。
「僕ですか?何か言いましたっけ?」
一平太にとってこの何時間の思い出は『苦味』しか、記憶されていない。
「君が言った『土の中にガキ大将がいる』って奴だよ。これでビビっと来ちゃったの。」
「どう言うことなんです?」
サラスが訪ねるとシャアラは説明を始めた。
「一平太の言葉に私は土中の微生物の存在を疑ったの。土の栄養を食べちゃう奴のね。」
「その考えはなかなかエキセントリックな考えですね。」
「そうね。まともな学者ならまず考えつかないわ。」
どうやら自分の事をはなしているらしいと気づいた一平太は無理やり口を挟んだ。
「で、何が見つかったんです?土の中に何かが居たとか。」
「えぇ、居たのよ。」
「本当に居たんですか?」
驚きの声をあげたのはサラスだった。
「火星に生物が居るなんて信じられない。」
「いないんですか?ほら、タコ型の触手のウニョウニョ付いた奴とか、頭でっかちの目デカの奴とか居そうじゃないですか。」
頭がお花畑な一平太を無視してシャアラは成果を二人につたえる。
「火星の土が、栄養を食べてたみたいなの。」
「どういう意味……」
「つまり火星の土が生き物だったっていうことよ。」
火星は人間が到達するまで生物と言う生物が存在していなかった惑星「だった」。火星を取り巻く大気が希薄なために熱惑星表面は熱を保持しづらい。そのため最高気温は約20℃、最低気温は約-130℃。平均は気温は-40℃前後と、生物が生息するには非常に過酷な状況である。火星唯一の生物であった、ある意味『外来種』ともいえる人類にとってもこの環境は劣悪そのもので、空気は勿論のこと、その過酷な気温差と宇宙から降り注ぐ様々な宇宙線に、宇宙服無しで立ち向かう事は『死』を意味していた。
そんな惑星に人類は昔から夢を見ていた。
──地球以外にも生命が存在しているのではないか。──
この夢の確認のために人類は幾つもの無人探査機を飛ばし、生命の痕跡を探すことに躍起になっていた。無人探査機は『可能性』は見つけることができた物の、『確証』を得ることはできなかった。そのうちに人類が宇宙へと足を延ばすことが容易になったため不確実な無人探査機での調査は幕を終えたのである。
そして今回。それが偶然にも、小山一平太と言う学者でも何でもない、少し頭の弱めなスペースマンの一言によって新たな発見が生まれたのである。
「『負うた子に習って浅瀬を渡る』ですね。」
「本当に。まぁ、『負うた子』は言い過ぎしても、新しい目線で物事を見るというのは、我々学者という職業にとって一番必要なものなので一番苦手なものであるわね。」
「それよりも、火星の生物ってどんなものだったんですか?」
「そうだったわね。話が逸れちゃったわ。火星の生物……正確に言うと『半分』は生物ではなかったわ。」
「『半分』?一体どういう……」
「シャアラ、もう少し詳しくお願いします。」
思いがけないシャアラの言葉に、一平太とサラスはさらなる言葉を促す。
「もう『半分』は鉱物。つまり「無機物」でできてた。鉱物に生命が宿った、言うなれば『鉱物生命体』。簡単にいうと石が活動していたの。」
「石が……」
「活動……」
「もちろん、地球の単細胞生物のようにただ生命活動を行っているだけでそこに明確な行動原理は見ることができなかった。まだまだ調べきれていないことが多いし、これから解ることもあるだろうからさらなる調査が必要ね。この辺の研究はわたしじゃなくて、生物学者でもあるクレイトンにメインで任せることになるだろうけどね。いずれにしてもここの土壌での栽培はしばらくお預け。肥料を撒いても食べられちゃうんじゃどうしようもないもの。今まで蒔いた種たちが少しかわいそうになっちゃった。」
シャアラはそういって少し悲しげな表情を見せる。
「でもこれで研究が前進するはずだし、大きな一歩になると思うわ。一平太君本当にありがとう。」
「ほぇ~、そうなんですか。なんだかよくわかんないですけど、力になれてよかったです。」
「一平太、きちんと自分の功績は確立させておいた方がいいと思うぞ。君は今回の発見の立役者だしね。ひょっとしたら論文なんかに載って、長らく名前が残るかもしれない。ついでに金一封とかも出ちゃうかも。まぁ、この研究所は見た目と違って、貧乏だからな。ひょっとしたら小学生の小遣いぐらいしか出ないかもしれないけどな。」
「そうなったらちゃんと出すわよっ!!……その、あまり期待には添えないかもしれないけど。」
サラスの言葉をプリプリしながら訂正するシャアラ。残念ながらその言葉は尻すぼみになっていたが。
「だいたいあんたはいつも言葉にトゲがあるのよ。この前だって……」
ブツブツ文句を続けながら、サラスをにらみつけている。
(やっぱこの二人には何かあんのかな?「この前」とかいってるし。しかも長年連れそった夫婦漫才を見ているようだ。)
「分かった、分かった。ぼくが悪かったよ。今度埋め合わせするから。」
「じゃあ、地球の紅茶がほしい。……高級な奴。」
「今度の配達のときに持ってくるよ。それじゃあ僕らは帰るよ。もう長いこと居たしね。」
「次を楽しみにしてる。一平太君も本当にありがとう。あなたは私たちの救世主よ。」
「そんなに大したことはしてませんよ。じゃあ、また結果聞かせて下さい。ぼくも適度な苦みのおいしい野菜は大好きですから。」
「分かったわ。がんばります。それじゃあねサラス。」
「またね。姉さん。」
「えぇ。また。」
衝撃の言葉が耳に届いた気がした一平太は、思わず聞き返す。
「……っていまなんて?」
「またねって。なんかおかしいとこあったかな?」
「…その後です。」
「姉さんって。」
「姉さん?」
サラスはいつもの笑顔で返す。
「あれ?言ってなかったか。シャアラは俺の姉さん。」
「そうよ。私はシャアラ・マホール・クシャトリヤ。サラスの姉で植物学者、よろしくね。」
「えぇぇぇぇえ!!姉弟なんですか!?」
一平太は、予想だにせぬ言葉に驚きの声をあげた。
ん~、ちょっと読みにくくなってしまいました。とりあえずは火星に生命体っぽいものがいたってことで。ってか植物栽培どうすんだよ的なお話です
。次回は通常業務(風呂か輸水かはお楽しみに。)のお話にする予定です。
ところで今回は初めてパソコンを使って書いてみました。やっぱりスマホより早く書けますね。でも風呂場で書けないのは痛いなぁ。
まぁ、それは置いといて。
お読みいただきありがとうございます。




