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湯船始めました。  作者: 世良美素
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第二十三話

 第二十三話です。今回の話から出てくる科学の話は例のごとく、似非科学です。私も出来るだけリアル(っぽく)書いていますが、そんなんおかしいやろって言うのがあればご指摘お願いします。

 サウ……《戦場》に響き渡った断末魔の悲鳴を聞いた”漢“達がトラウマと悪夢で眠れない夜を過ごした翌日、一平太はエレノア課長に朝から呼ばれていた。

 (昨日のこと、怒られるんだろうな。)

 寝起きの気だるさと、これから落とされるであろう雷に憂鬱な気分でトボトボと館内を歩く。

 あの事件の後も髪の毛をあからさまに“お載せに”なられたお客様への対応と、日々の生活の潤いを湯船ではなく“女風呂”に求められた勇気ある若いお客様の対応etc……大忙しであった。前者のお客様には、“お召し物”の脱帽を。後者の方には、ソノ道のプロフェッショナルな例のお二人にお任せをして事なきを得た。当然、一平太は先輩の助けが来るまで、右往左往していただけである。

 (また減給かなぁ……。)

 考えるのが嫌になってきた一平太は、考えることをやめ、さながら禅僧のように無心で艦橋へと向かう。

 「おはようございます!」

 いささかやけくそ気味に、でかい声で挨拶をすると、

 「おはよう、小山君。」

 「おはよう。一平太。さわやかな朝だね!!」

 何時もの事務的な声の他に、朝の挨拶だけで爽やかの押し売り営業をかける、サラスの声もそこにあった。

 「サラスさんもなんかやったんですか?」

 今から説教があると思い込んでいる一平太は、ここにいるサラスも自分と同じようにミスをしたのだとハナから決め込んでいた。サラスは煌めく白い歯を覗かせながら苦笑をするとエレノアの方へ視線を送る。

 その視線を受け取ったエレノアが口を開く。

 「何を勘違いしているのか分かりませんが、今から説教をするわけで有りません。」

 (説教が無いって事は、俺のミスはエレノア課長までは伝わってな……) 

 「……ちなみに、怒られるようなミスをしたのはあなただけです。」

 「ですよね。」

 鋭いエレノアの言葉が、浅はかな一平太の考えを打ち砕く。

 「といっても、昨日のミスは新人なら誰もが通る道です。今回対応を覚えたのなら、きちんと復習して次回に備えなさい。銭湯のルールは、お客様全員に気持ち良くお湯に浸かって頂くためのものですからね。」

 「分かりました!」

 内心、怒られないという幸運にジャンプしたくなっていた一平太だが、湧き上がる気持ちを何とか押さえ威勢良く返事を返す。

 「それなら、何で呼ばれたんでしょう。」

 「アナタにはサラスと一緒に、水の配達に行って貰いたいのです。」

 「配達……ですか。」

 その言葉に一平太が首をひねるのも、無理からぬ事であった。

 ローグが一平太にいつだったか話したように、宇宙輸水水道社では本館のある《ルナ・ファミリア》から目的地まで惑星間輸送船メガロケートスで届けるのが仕事である。詰まるところ、個別宅配は基本的に他社任せであって、今回の火星のような場合では、補給基地の《ラガー・マーズ》に着けば、そこから先は専門の業者に配達を頼んでいるのである。

 「この配達はいくつかある例外の一つなのよ。」

 「そこから先は僕が説明しよう。」

 サラスはそう言ってエレノアの言葉を引き取る。

 「今回、水を配達するのは火星植物研究所。通称マーズ・ガーデン。その名の通り、火星での植物研究が目的の場所だ。」


 宇宙空間において植物の存在は重要である。光合成による酸素生成はもちろんの事、食料としての利用価値、さらには長期間に渡る宇宙船艦内での生活でのストレスを植物の「ヒーリング効果」によって癒やすという精神衛生の観点から見た価値などが挙げられるだろう。そして、その大事な植物の栽培研究をするのがここ火星植物研究所。通称マーズ・ガーデンである。

 「あぁ、もうっ!!全然駄目だわ。話しになんない。」

 「まぁまぁ、所長落ち着いて下さい。」

 「何で根付かないのよっ!!植物が育つための条件は満たしてるはずなのに。」

 「少し休憩しましょう。」

 「うぅ、お茶がのみたい。熱いの入れて。」

 「分かりました。」

 そう言って白衣の男は急ぎ足で去っていく。そうして植物の種と、複雑な機械で満たされた部屋には頭を抱えた女性研究者が残った。くたびれた横顔も美しいこの女性は《Dr.プランツ》、彼女はそう呼ばれていた。

 「何がだめなんだろ……。全く分からない。やっぱり火星の土じゃあ無理なのかしら。」

 そう独りごちるとデータのかかれた書類に目を通す。

 「何やらお悩みですね、Dr.プランツ。」

 零れる白い歯の輝きが目にまぶしい。

 「あら、サラス。久しぶりに顔を出したわね。相変わらず爽やかの押し売りは健在ね。それと、Dr.プランツは止めて頂戴。いつものように呼んで。」

 「分かりました、シャアラ。」

 にこやかに返事するサラス。

 「それよりも、そっちの子は初めて見る顔ね。新人さんかしら。」

 (あぁ、どうしたって爽やかなんだなぁ。ていうかいつもの呼び方がファーストネームなんだ。やっぱり<船乗りは港毎に待ってる女が居る>みたいな感じなんだろうな。)

 ボッーとそんなことを考える一平太に視線が向けられる。

 「そうなんです。一平太、こちらはDr.プランツことシャアラ植物博士。ウチのお得意さんだ。シャアラ、こっちはウチの新人航宙士の小山一平太です。これからも配達に来るかもしれないからよろしく。」

 「初めまして。私はシャアラ。植物の研究をやっているの。どうぞよろしく。」

 「小山一平太です。今年から航宙士としてここの会社で働かせてもらってます。よろしくお願いします。」

 「シャアラ、一平太にこの研究所でどんなことを研究しているか、詳しく説明してあげてくれないか?」

 「そうね。今後も配達に来てもらうなら、何をやっているか知ってもらった方が、ここでの水の必要性をより感じてくれて、仕事にプレッシャーが掛かって良いかもしれないわね。じゃあついてきて。」

 一瞬、引っ掛かる物言いがあったが例のごとく一平太は気付くはずもなく、大人しくシャアラに案内されるがまま隣て微笑んでいたサラスと一緒について行く事になった。

 

 宇宙での植物栽培のお話が始まりました。当然むしやら微生物が出てくるはずなので、いままでとは少し違った話になる……かも。

 宇宙の植物学についてこんなん読んで少しは勉強しなさいと言う物があれば、是非ともご推薦ください。なるべく、簡単なヤツで。

 それと、更新スピードですがコレから不定期になりそうです。最低でも10日に一回は更新したいです。もちろん、それより短いスパンで更新する可能性もありますので、お待ち頂ければな。ということで。

 お読み頂きありがとうございます。


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