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湯船始めました。  作者: 世良美素
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第二十話

 第二十話です。久しぶりの投稿になってしまいました。まだ見てくださる人が居るか分かりませんが、楽しんで頂ければ幸いです。

 《亜光速ジャンプ》による、《ジャンプ酔い》事件が一平太に起きてから約一週間。航海は何事もなく進み、火星まで残り四、五時間と行ったところまでメガロケートスは来ていた。そろそろ火星補給基地ラガー・マーズへの着艦の準備をしなければならない時間である。現在、艦橋には一平太とローグが詰めていた。


 「ローグ先輩。火星には《ルナ・ファミリア》みたいな宇宙ステーションが無いですけど、船ってどこに降ろすんですか?補給基地にターミナルとかありましたっけ?」

 「あるに決まってんだろ。開拓の最前線なんだからよ。でも、ターミナルは使わない。」

 「はい?」

 「ターミナルは使わないで、基地に近いのっ原、つか荒野だな。に直接着艦する。というより着陸だな。」

 「……」

 一平太は絶句した。普通「宇宙船」という物は、目的地に着いた際きちんと指定された場所に留まる物である。決められた航路を通り、決められた時間で決められた場所に行くのは宇宙だけでなく、地球でも営まれてきた最低限のルールのはずなのである。

 「この船……。まさか着艦許可取ってないんですか?なら急いで取らないと!!僕達犯罪者になっちゃいますよ!!」

 慌てる一平太。冷たい視線を送るローグ。

 「まだ間に「お前ホントに航宙士の資格持ってんの?」……あいますよ?」

 一平太の言葉の途中でローグはこう言い放つと、アホな後輩のための講義を始めた。

 「まずな、航海計画を《ルナ・ファミリア》に提出するよな?」 

 「はい。」

 「そしたらそのデータは箱の中に仕舞って厳重に封印か?『大事な宝物だぁ』つって?」

 「そんなわけ無いじゃないですか。そのデータはすぐさま、航路上の各ステーションや基地に送られ情報の共有が行われます。それで、え~と……色々な手続きが楽になります。」

 「お前一番必要な所が曖昧じゃねぇか!!いいかぁ。この艦が航海にでた時点でめったなことが無けりゃあ、目的地には着くし予定通りだ。と言うことは、スタートからゴールが約束されてんの。土壇場で着艦許可が降りないなんてことはほぼないんだよ!!」

 「じゃあ、なんかあったんですか?見たところ天候が悪いなんてこともないし、何でわざわざ荒野のど真ん中?ターミナルが使えないんですか。隕石とか?」

 「お前さ、この船どんな船か知ってっか?普通と違うんだぜ。風呂屋開くのに空港なんかにとめてドッグに入れられて、客が満足しねぇよ。」

 「……輸送してきた水はどうするんですか?」

 「そら出先でコンテナトラックに積み替えて配達よ。そこは別会社の仕事だけどな。」

 どうやら荒野に降りることは確定で、別段当たり前のことらしい。そして更なるびっくり発言が一平太を襲う。

 「それでな、着艦だが、お前やれ。」

 「はい?」

 「だから、火星地表の着艦はお前が担当しろ。」

 (なに言ってんだ、コイツ。)

 思わず心のなかで、先輩をコイツ呼ばわりしてしまう。

 「おまえ顔になに言ってんだコイツって書いてあるぞ」 

 「マジデスカ?」 

 「両方ともマジです。」

 着艦まで残り三時間ほど。一平太は艦橋の自分の持ち場(操舵輪前)にどうにか立ちながら、必死にマニュアルを読みふけっていた。


 火星の重力は地球の約30%。《ルナ・ファミリア》のある月の約200%。当然、着艦の際に少しでもエンジンの噴射が長ければ、デカいメガロケートスは地表にぶち当たり、短すぎれば再離脱。余分な燃料を使わなければならない。もちろん非常に難しい。その上火星の地表には目印となる建造物も誘導灯もない。管制塔からの遠隔コントロールもなし。理由は勿論、着艦場所が空港ではないからだ。普通の航宙士にとってみれば何もない荒野に降りるのは不時着。しかも最悪な形での場合のみである。

 「マジで僕がやるんですか?」

 「当たり前よ!新人の通過儀礼みたいなもんだ。そう身構えるなよ。」

 一平太は半泣きになりながら手順を頭に叩き込んでいる。

 ノーマン艦長も先程から艦橋に降りてきていて、なぜ黒い微笑を浮かべながら艦長席でその様子を見ていた。

 {艦長。許可おりたわヨ。今回は一平太が着艦担当なんでしョ。面白い事になりそうネ。}

 通信室から双子の弟、もとい妹さんから連絡が入る。

 「楽しんでる場合じゃないです。死んじゃうかも知んないですよ!!」

 一平太はそう叫んだがスピーカーからは笑い声しか聞こえてこない。艦橋にいる双子の兄、もとい姉からも声援があがる。

 「大丈夫ヨ。一平太ならできるワ。出来たらお祝いにイイコトしてア・ゲ・ル♪」

 「失敗したら?」

 「バ・ツ・ゲ・エ・ム♪」

 いずれにしろ逃げ道はなくなったわけだがどうやらやるしかないようだ。

 「着陸制御に入る。一平太。カウントだ。落ち着いてやれ。」

 「着陸制御。カウント開始します。10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0。エンジン逆噴射。垂直移動。えーと、水平いッッヅ!!」

 艦内にアラームが鳴り響き、激しい轟音と共に艦内に衝撃がはしる。

 (ウワッ、やっちまった!!)

 一平太は吹っ飛ばされてしこたま頭を打ってしまったが、その痛みよりも内心の動揺でいっぱいいっぱいだった。

 (こりゃクビだわ。もう少しで初仕事完了って時に……。)

 振動が収まると、各部の損傷知らせる表示がモニターに映し出されアラームが解除された。そしてノーマン艦長の号令が掛かる。

 「船体浮上。」

 「船体浮上、了解。」

 (えっ!?)

 唖然とした表情を浮かべ、突っ立っている一平太を尻目に他のクルーはテキパキと船を浮上させる。

 「なにを……」

 「もう一度だ。しっかり着陸させろ。」

 艦長が一平太に声を掛ける。

 「今、失敗…」

 「良いから黙ってやれ。出来るまでやれ。たかが一回の失敗、これからの成功の為にくれてやる。また失敗したらその倍、10倍、何倍でも成功にして返して貰う。ここで逃げて傷痕トラウマにしちまうより、今克服して瘡蓋にしちまえ。その分お前は強くなる。誰にでも初めてはあるんだ。失敗をおそれるな。明日の為の失敗なら大歓迎だ。だから、やれ。」

 先輩社員達は一平太に視線をおくる。皆、厳しいだけではない暖かな光をたたえていた。そして唐突に理解する。これは一平太が本当の意味でこの会社の社員になるための試練なのだと。仲間に入る為の儀式なのだと。

 「……やります。着陸制御、開始──」

 一平太の決意した表情を周りの先輩社員達は満足そうに頷きあって見ている。

 (俺はこの人達の仲間でありたい。一緒の職場で働きたい。)

 そんな想いが一平太の心の中に宿っていた。


 「───着陸成功。」

 「良くやったな。今日はよく休め。」

 心なしか安堵の息を漏らしながら艦長は声を掛ける。そうして艦橋を去っていった。

 「……お前良くやったよ。」

 ローグも毒なく一平太を誉める。

 「ま、バ・ツ・ゲ・エ・ムはまたにしとこうかしらネ。」

 リーは若干トーンダウンしながら軽口を叩く。そして、最後に通信室から来たエレノア課長が一平太に声を掛ける。


 「修理代はアナタの給料から直接引いておきますから。」

 「そんなッ!?」

 

 メガロケートスの艦底は度重なる一平太の傷痕トラウマ克服により、傷痕《物理的な》だらけになってしまい、同時に一平太のボーナスなしが決まったのであった。

 ようやく更新できました。というより、完全にサボリン人になって、ゲフンゲフン。

 更新ペースが遅くなる可能性がありますが毎日更新する可能性もあります。要は気ままにあげます的身勝手です。こんな感じで進みますがどうぞよろしくお願いします。

 お読み頂きありがとうございました。

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