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湯船始めました。  作者: 世良美素
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第十話

 はじめに。今話に出て来る中国語は、作者のふわっとした知識と単語をつなげた結果です。所謂なんちゃって中国語です。もしかしたらと言うよりはかなりの高確率で間違っている可能性があります。仮に間違っていても、括弧内に訳が乗っているのでそちらを読んでくだされば本文に影響はありません。

 第十話です。中国語って難しい。

 銭湯に初めて連れて行かれた二人は

 「「 宽大 」」(広くて大きい)

 「そうだろう。まずは掛け湯をしてカラダの汚れを落とすんだ。銭湯には多くの人が居る。皆が気持ちよく入れるようにするルールだ。」

 感嘆の声を上げ、駆け出して行きそうになる二人を制するノーマン社長。

 この時二人は、16~18才。年の割に幼い挙動は、《黒孩子》である弊害か。彼等のように荒んだ生活を送る者は、ある種諦めにも似た感情が己の心を殺し深く沈めてしまう。深く沈んだ心は死んだままの状態から変わらない。そうなった人間は肉体的な本能に従って生きる。チェイン・ブラザーズも、生きる為に己の生存本能に従うほかなった。

 誰からも何も与えられなかった事で彼等の精神は成熟せず、ある面で無垢な心が冷凍保存されていた。二人にとって初めて与えられたものそれが《銭湯》だった。

 「热乎乎、杏」(ボカポカするな、アン。)

 「有一段幸福的暖流。温。」(なんだか幸せな気持ちになってきた。温かい。)

 二人の言葉と表情にノーマン社長は満足して頷く。

 「君たちの事は、少しだけ調べさせてもらった。リーとアン。兄弟だね。チェインと言うのは自分達でつけたのかな?どうやら地元ではチェーン・ブラザーズと呼ばれているようだがね。華僑の件は私が話しをつけたから心配しなくていい。それよりも私は君達のことが心配だ。」

 「「……。」」

 厄介な件を片付けてくれたうえに、自分達の心配もされて言葉を失う。

 「君達は、通り名のように心が縛られている。だれとも接してこなかったのは、環境だけのせいじゃない。リー、アン、そろそろ心を解放してやろう。人との繋がりを自分達で作るんだ。」

 《銭湯》によってふやかされた二人の心にノーマン社長の言葉は、隅々まで入り込む。そして二人は己の心を解放し、人との繋がりを求めた。…………男湯の中で。《(主に男と)チェイン・ブラザーズ》の誕生である。

 変な方向に解放された心を持てたものの、《黒孩子》の二人は仕事どころかどんな場所にも存在出来ない。そこでノーマン社長は思い切った行動に出た。二人を養子に取ったのだ。その恩に報いるために、必死で勉強してそれぞれ役に立つ資格を取った。請われれば自分達のメカニックとしての腕も振るった。それだけノーマン社長を敬っていた。そして何より《銭湯》(主に男湯)を愛した。

 

 「だから、あの子達のお父さんは旦那だし、お母さんはアタシなのよ。それが20年近く前の話ね。」

 そうマーガレットは微笑みながら締めくくった。思わぬ所で思わぬ二人の思わぬ話を聞いた一平太は、一つ疑問に思ったことがある。

 「……あの二人いったい何歳なんですか?」

 「それは、ヒミツヨ♡」


 何処からか、というか背後から声が聞こえたきた。

 「お母さン、面白そうな話してるわネ。」

 「アラ、アン。お説教は終わったの?」

 「姉さんに任せてきたワ。私、休憩時間だったシ。」

 「そう。じゃあ、あんたも昼食食べてきなさい。今日は鳥南蛮よ。」

 そういって昼食の準備を始めるマーガレット。そして二人きりになる食堂。一平太がそこはかとなく危機を感じていると

 「ノーマン社長、ううん、お父さんはね、本当に私達を救ってくれたの。今はまぁ、こんなになっちゃったけど。ドブみたいな世界から救ってくれた。本当に多谢(感謝)。」

 急に真面目なことを言い出すアン姐。面食らっていると

 「あ~ぁ、らしくないこと言っちゃった。一平太、忘れて頂戴。」

 ……不覚にも少しだけキュンとする一平太。心なしかいつもと違う喋り方の気もする。俺はノン気だと言い聞かせていると、

 「あんノ、クソおやジっ!!バカスカ殴りやがっテっ!!私の美しい顔ガっ……ん?アラん、あんた達なにイイ雰囲気になってんのヨ?ワタシがさっきまで説教されてたのニ!!」

 「姉さン!!もうちょっとでお持ち帰りだったの二!!てゆーか、仕事ハ?」

 「逃げてきたのヨ!」

 ゴチャゴチャ言い合う二人。一平太にしか見えないように唇に人差し指を当てて、悪戯っぽくウィンクするとアン姐は妖艶な笑みを浮かべた。

 「「惜しいコトしたワっ」」

 タイミング良く(?)マーガレットがやってくる。

 「ご飯できたわよぉ!!アレ、リー何やってるの。アンタまだシフト終わってないでしょ!!」

 手に持って来た二人前とは思えない量(見た目は五人前)の料理を机におくと、お盆を振りかぶる。

 「ヤバい、お母さンはしゃれになんなイ!!逃げるわヨ!!アン!」

 「ワタシはご飯なんだけド……。」

 「良いから来なさイ!!」

 慌てて逃げる二人を眺めていると

 「あの子達は……。ご飯どうするんだい。」

 一平太とマーガレットの目が合う。

 「あの子、ご飯すごく食べるのよね。」

 昔の反動かしら。と笑うマーガレットは、目だけは笑わず一平太の前にすべての料理を置く。涙目の一平太。

 ……ご飯はスタッフ(一平太一人)が美味しくいただきました。

 

 美味しいご飯を腹一杯喰わさ……頂いて、多幸感という名の吐き気で一杯の一平太は船室に戻りベッドに倒れ込む。

 (ウぷっ……。おいしかったけど、量が多い。お腹がきついけど、何とか寝なきゃ。休憩時間は後六時間しかない。)

 無理矢理目を閉じると、なんだかんだで疲れていたのかすぐに睡魔が襲って来て一平太の意識を刈り取る。

 一平太は夢を見た。何故だか広い宇宙でただ一人。宇宙船はおろか、宇宙服もつけていない。そうして漂っていると、遠くから人がやってくる。顔を見るとチェイン・ブラザーズだ。ニヤニヤしながら一平太を追いかける。嫌だ!またかっ!!いつの間にか宇宙の最果てで後がない。この展開は!!もうダメだ。「あわや」と言うところで鳴り響くけたたましい音に目が覚める。

 {Alert!!警告!!前方に識別信号のない艦あり!!未確認艦から武装反応!敵性艦と判断。総員第一種戦闘配備!!繰り返す……}

 

 どうやら招かれざるお客さんが来たようだ。 

 変態ブラザーズが変態になった背景。そして胸きゅんロマンス。

 いろんな意味でお腹いっぱいの回でした。


 そして遂に宇宙感が先走り!!次回こそは宇宙感全開で行きたい!……行けたらいいなぁ。

 お読みいただき有り難うございます。

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