ある少女の一日
折り紙は日本が誇る伝統の遊びの一つです。
幾何学的性質を持つようで研究されています。
私の名前は、すずと言います。おじいさんにもらった大切な名前です。
私は今、カジュの村と言う小さな村の村長のおじいさんの家に住んでいます。
私がこの村に来た時の夜、私はおじいさんの家族になりました。
今日はそんな村での私の一日をお話したいと思います。
最初はお勉強の時間です。
「はい、それじゃあ皆さん、ボールペンとノートは持ってきましたね?」
この村では大人の人たちが交代で村の子供たちに勉強を教えてくれます。
今日はこの村で1番頭がいい仁お兄さんが教えてくれるみたいです。
この村に来てから驚きの連続でした。今私が持っているボールペンと言う物も最初見たときなんなのかわかりませんでした。筒の中にインクが入っているみたいで、インクを着けずに紙に字が書けます。ノートと言う物も今まで私が見てきた紙と違ってとっても真っ白でインクが滲みません。
「今日は川の生物についてお話しますね。」
今日の勉強することを仁お兄さんが教えてくれました。
仁お兄さんは川から大きなカニを魔法で取り、私たちの前に置きました。
「ではふぶき君、この生物がわかりますか?」
この村にいる子供は私含めて6人います。
一番仲良しのまこちゃんに、はやて君、しのぶちゃん、ふぶき君、みさおちゃんです。
「んーとね、カニだと思うな」
「ふぶきぃ、あれはサワガニだぞ。ぷぷっ!そんなのもわからないのか?」
ふぶき君の答えに口を出したのは、はやて君。
私もサワガニと言おうと思いました。
「二人共、不正解です。これはタラバガニです」
仁お兄さんが答えを言う。ふぶき君の答えに口を出さなくてよかった。
はやて君は顔を真っ赤にして静かになっちゃいました。そんなはやて君を見て笑うふぶき君。
「本来この生物は本来海に住んでいます。最近になって太郎さんが少し手を加えて川で生活できるようにしました。そしてタラバガニはカニのように見えますけど実際はヤドカリのお仲間です」
仁お兄さんはとっても頭が良くて物知りです。私たちは一生懸命に仁お兄さんの言うことをノートにとります。
その後、私たちは川周辺の生物をスケッチしました。自然いっぱいの中でのスケッチはとっても楽しかったです。まこちゃんと一緒に色のついたボールペンで色塗りもしました。
勉強の最後には、その日教えてくれた大人の人への質問の時間があります。
「それじゃあ、みさおちゃん。何か聞きたいことはありますか?」
「えっとね、村の大人の人たちみたいに空を飛ぶにはどうすればいいの?」
みさおちゃんの質問は私も気になっていたことでした。村の大人の人たちは鳥のように空を飛べます。でもあまり飛ぶことはないそうです。私も一度しか見てません。私の名前を決める戦いの時だけでした。
「そうですね。みんなはまだ魔法を習っていないのでまだ魔法では飛べませんね」
「「えぇぇぇえ!!」」
「そんなぁ!じゃあ、私たちはお空を飛べないの?」
しのぶちゃんが仁お兄さんに質問します。
「大丈夫ですよ。太郎さんや与作さんのように魔法を使わないでも空を飛べることはできますよ」
「それどうやるの!」「すっげぇ知りたい!」
みんなが空を飛べる方法を聞きます。私も興味があり声大きく仁お兄さんに聞きました。
「まず、どちらの足でもいいので一歩空中に踏み出します。みなさんもやってみてください」
そう言われ私たちはみんな一斉に空中に足を踏み出しました。しかし足は地面についてしまいます。
「今のように地面に足が着く前にもう片方の足を踏み出します。それを繰り返せば空を飛べるようになりますよ」
私たちは仁お兄さんの言った空飛ぶ方法を繰り返しましたがうまくできません。足が地面についちゃいました。みんなできていません。
「この方法は練習あるのみです。皆さんが毎日頑張ればいずれ自由に空を飛べるでしょう」
「「おおぉぉ!!」」
みんなが喜んでいます。私も空を自由に鳥と一緒に飛べるように努力しなくちゃ。
「でも、気をつけてくださいね。村の外で空を飛ぶと変な目で見られちゃう時がありますからね。」
仁お兄さんが注意をしてくれました。どうやら村の外の人も空を飛べないようです。
変な目で見られちゃうということを聞いて私は怖くなりました。またあの目で見られちゃうのかと思ったからです。そう思っていると、まこちゃんが私の手を握ってくれました。
「…すずちゃんは大丈夫。…私が…守るから」
まこちゃんが私を励ましてくれました。とっても嬉しかったです。私はそんなまこちゃんに満面の笑みを浮かべてありがとうと言いました。もう私は泣き虫じゃありません。
次はお手伝いの時間です。
私はまこちゃんと一緒にはるかお姉ちゃんの家に来ています。
はるかお姉ちゃんは村で一番料理の上手なお姉ちゃんです。最初はるかお姉さんと言ったらお姉ちゃんと呼びなさいと言われたのでちゃん付です。
今日ははるかお姉ちゃんの家で料理のお手伝いです。
私が料理を習いたいとおじいさんに言ったらはるかお姉ちゃんのところでお手伝いしながら覚えなさいと言ってくれました。それから毎日私ははるかお姉ちゃんから料理を習っています。
カレー、パエリア、パスタなどと沢山の料理と一緒に料理の元になるブイヨン、プロードとかも作れるようになりました。まだ魚介のブロードはうまくいきません。もっと勉強しておじいさんやまこちゃんにもっと美味しい料理を食べてもらうために頑張ってます。
「今日は大きな牛を燻製にしようと思います」
くんせいというものを今日は料理するそうです。でもはるかお姉ちゃんはフライパンやいつも持ってる包丁を持ってませんでした。
どうやらくんせいと言うものはお肉やお魚を、木を燃やした時に出る煙でバイキンを消して、お肉に含まれる水をとばして保存する料理みたいです。これは料理なのかと思いました。
せっせと煙を出すための木を準備します。どうやら村の森で切った木を細かくしたものを使うそうです。スモークチップだと教えてもらいました。メモはしっかりとります。
くんせいにも種類があって熱燻、温燻、冷燻と煙の温度の違いでできるものが変わってくるそうです。
今回は一時間くらいでできる熱燻で作るそうです。
「さてと…これであとは一時間待つだけね。二人共よく聞くのよ」
はるかお姉ちゃんが人差し指を立てて私たちに料理の極意を教えてくれました。
毎日料理のお手伝いに来ていますが毎日料理の極意を教えてくれます。極意ってたくさんあるんだなと思いました。メモはしっかりとります。
「料理では魔法なんかで時間を加速させたり、鍋に圧力を加えたりしちゃだめなのよ。しっかりと愛情込めて作ることがなによりも大事なのよ。これが今日の極意ね。」
魔法でズルをしちゃだめということを私たちに教えてくれたはるかお姉ちゃんにまこちゃんが質問しました。
「…お酒…醤油とか…熟成させるのに…魔法使った?」
そういえばこの間、伊右衛門お兄さんたちが沢山作ったお醤油やお酒は仁お兄さんが魔法で早く作ってたって言ってたことを思い出しました。
「お酒はね、料理じゃないのよ。人間関係の潤滑油なの。あの時のお醤油やきな粉はみんなで楽しむために必要だったのよ。」
はるかお姉ちゃんの答えにわたしはよくわかりませんでした。お酒が飲めるようになったらわかるようになるみたいです。大切な人に食べてもらう料理に魔法は使っちゃダメみたいです。
そして一時間後にしっかりと燻製されたお肉ができました。
一口食べてみると私が食べていた干し肉と違って柔らかかったです。柔らかいのに肉汁が出ないのにもびっくりしました。
その燻製したお肉をつかってみんなで料理を作りました。ピザにサンドイッチを作りました。村に来た頃、汚い自分の手で手づかみの料理は作れないと言ったところはるかお姉ちゃんとまこちゃんはそんなことないよと言ってくれました。今では私の手もだいぶ綺麗になりました。あの村の森の木でできたお風呂のおかげかもしれません。
しっかりと後片付けをして、はるかお姉ちゃんにお別れをして今日のお手伝いはおしまいです。
お手伝いのあとは自由時間です。
今日はまこちゃんと二人で遊びます。
本当はいつものメンバーでサバイバルゲームをしたかったのですが、他の人は家の手伝いがまだ終わってないみたいです。
二人でなにして遊ぶかと悩んでいたらさくやお姉ちゃんが顔を出しに来ました。
どうやらさくや姉ちゃんは大きな牛の皮を商人さんに買ってもらえるようにする作業が終わったようで村をぶらぶらしていたみたいです。
さくや姉ちゃんもねえちゃんと呼ぶようにと言われました。いぶき姉さん以外のお姉さんが全員ちゃん付にしなさいと言ってきたのを説明するのを忘れてました。
さくや姉ちゃんに二人で遊べることはないと聞いたところ、家から綺麗なノートより小さい色とりどりの紙を持ってきてくれました。おりがみと言うそうです。
私とまこちゃんはさくや姉ちゃんに折り紙の折り方をしっかり習い、つるという動物をおり始めました。四角に折り曲げたところから広げるのが難しかったけどなんとか上手く出来ました。まこちゃんもつるをおったのですが何故か足がありました。どうやって折ったんだろう?
さくや姉ちゃんが自分の折ったものを見せてくれました。それを見て私たちはとってもびっくりしました。ボールペンの先よりも小さいつる、大きく羽を広げたくじゃくと言う動物、あとは伝説の動物のペガサスと言うのを見てこれが紙一枚からできているのか質問しました。
「うん、これ全部一枚の紙からできてるのよ。しっかりと完成状態を頭の中で作ってそれを順番に折っていって完成よ」
頭の中で作るというのがよくわからなかったけどさくや姉ちゃんはとっても器用なことを知りました。
「それじゃあ、今から花を折るからよく見とくのよ。」
そう言うと二枚の折り紙を片手にそれぞれ持ち二つ同時に折り始めました。その光景に目を奪われていいるとものの30秒程で綺麗な形の花ができていました。
さくや姉ちゃんはその二つの花を私とまこちゃんの服の胸ポケットに入れてくれました。
「この花はね、ライラックって言うの」
聞いたことない花の名前でした。どんな花かは胸ポケットの花を見たからわかりました。
「それでね、お花にはそれぞれ花言葉ってのがあるのよ。このライラックの花言葉はね、友情と思い出よ」
花言葉と言う言葉があるのを初めて知りました。
「花を相手にあげることで、その相手に思いを伝えることがお花にはできるのよ。私から二人にライラックをあげた意味はわかる?」
さくや姉ちゃんが私とまこちゃんにくれたということはさくや姉ちゃんは私たちに友達だよと言ったってことなのかな、と答えたらそうだよと教えてくれました。
「それでね、今あなたたち二人にあげたその花はもう二人のものよ。誰にあげでもいいんだからね」
さくや姉ちゃんが笑顔で教えてくれました。
するとまこちゃんが胸ポケットにある紙の花を私にくれました。
「……これ……ゆ…友情」
私はとっても嬉しくなりました。そして私もすぐに自分の紙の花をまこちゃんにあげました。まこちゃんもとっても喜んでくれました。
そんな私たちをさくや姉ちゃんは「可愛い!ほんとに可愛い!」と何度も言いながら抱きついてきました。苦しかったです。でも抱きしめてもらうのはやっぱり嬉しかったです。
そろそろ暗くなってきたのでわたしとまこちゃんは家に帰ることにしました。もう晩ご飯の時間です。
お別れするときも手に紙でできた花をもってお互いの姿が見えなくなるまで手を振りました。
「おお、すず!帰ってきたか!!」
おじいさんが私を出迎えてくれました。いつものように笑顔です。
「ん、どうした?今日はやけに機嫌が良さそうじゃが?」
私の顔を見ておじいさんが質問してきました。私の顔は知らぬ間に笑顔になってたそうです。
なんで機嫌がいいのかをおじいさんに教えてあげようと思いました。
「えっとね、今日折り紙って言うのを習ってね!今日も一日すっごい楽しかったんだよ!!」
うまく嬉しかったことを伝えられなくて残念でしたけどおじいさんはそんな私の頭を笑顔で撫ででくれました。
「そうかそうか、楽しそうでなりよりじゃ。ん?その花はなんじゃ?」
おじいさんが珍しそうに私の持つ紙の花を見ていました。私はそれをおじいさんにしっかり見てもらえるように持ち、言いました。
「これはね、友情の証なんだよ!」
今日もこの村は平和です。
花の色によって同じ花でも花言葉は変わるようです。
ライラックの花は花弁が多数あります。とても綺麗な花です。
花言葉は友情、思い出、純潔、初恋、大切な友達です。
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