灰を喰らう姫
満月の夜に
誰も知らないところで
彼女は生まれる
浅ましさを嗤い
決して涙を流さず
気丈な口調で
万物の滅びを謡い
灰を喰らいながら
夜を溶かして
朝を待つ
その虚ろな瞳は
決して月のそれと同化せず
生命を舐めるような
恍惚の眼差を
世界の悲しみに投下する
幾千の夢に囚われても
冷たい痛みに呼び戻されて
白く冷たいその手首には
いつも深紅の血が肌を這う
いつの間にか入れ替わっていた星達に
最後のお別れをして
今日もまた
世界の何処かで
彼女は生まれて
死んでいく