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はずかしゆうき




「あの、足、大丈夫ですか?」



「あぁ、平気、平気。それにしてもあのヤロウ思いっきり蹴りやがってっ。今度会ったら文句言ってやる。」



「ごめんなさい。でももう会っても関わりを持たないほうがいいですよ。でないと本当に怪我しますよ。」



「あー。うん、そうだね。でもごめんね。本当なら捕まえて警察に引き渡すべきだったんだけど……。」



「いえ、気にしないでください。捕まらなかったことは残念ですけど、助けてもらってその上こうして送ってもらっているだけでも十分嬉しいですから。」



私とカレは線路沿いの道を歩いていた。



助けてもらった後、駅まで大人しかった痴漢は電車のドアが開いた瞬間にカレに痛そうなキックを入れて逃げ去った。



泣きながらパニック状態だった私のせいで捕まえることができなかったのに、優しく許してくれた。



そして私が落ち着くまでベンチで慰めてくれて、さらに家まで送り届けてくれることになった。



「でも本当にごめんね。俺、空手は習ってないんだよね。剣道なら習ってるんだけどなぁ。」



悔しそうに小石を蹴る姿は私が想像していたものとは違っていた。



「でも思っていた通り優しい人ですね。」



「『思っていたとおり』ってどういうこと?」



「えっと……。」




しまった、と思ったときはもう遅かった。




多分、今の私は首まで夕日で染まっていると思う。




足元を救われる形になってしまったけれど、勇気の出せなかった私にはちょうどいい状況なのかもしれない……。




周りの人からすれば、小さいかもしれない。



けれど今の私が持っている勇気を振り絞ってみようと思う。



「わ、私、市立葛城第一高校二年生の御手洗 椿って言います。それで、その、えっと……」





「俺は私立開成大学付属高校二年生の(みささぎ) (みそぎ)。よろしくね、御手洗さん」




そう言って、陵くんは笑った。


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