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その1

ヘタレ勇者様頑張ります~。

三人で旅をしている。僕以外は女性。

ここはカッコいい所を見せなくちゃ!!

っと言う、初めの目標は出会って三秒に消えた。


僕の名は、トール・ディズ。魔法学校では補習と留年のオンパレードの落ちこぼれ。

しかも泣き虫でドジ。


歩きやすくなっている森の中にある小道で僕はこけた。

「ぎゃふんっ!!」


ううぅぅ…顔面から行ったよぉぉぉ…。


慣れていても、痛いものは痛い。初め、「大丈夫?」と言ってくれた二人も今では放置。

「トール結界を!」

仲間のその指示を聞くまで危険だと言う事に気が付かなかった。

「へっ???」

相手は待ってはくれない。その証拠に僕達の周りを悪者顔した大男たちが取り囲む。


いっ…急いで張らないと!!!


慌てたのが不味かった。

「トール・デッ!!」

呪文を唱えようとした僕は舌をかんだ。


い…痛いっ!!


そんな僕に溜息つきつつも、ピンク色した髪のふわふわ系の可愛い少女が僕に魔法をかけた。

「トール・ディズ・ボロニャーボッポ!!」

僕の周りに結界が張られた。


うん、情けない…自分の名前で舌かんだよ。


しかもこの少女は目の前にガッシリとした、いかにも悪者ですって顔をした大男達と戦っている。この大男達は山賊だ。二十人位の人が僕たちを襲う。


ぎゃぁぁぁぁぁー!! ピッ…ピンチ!!


…と、思うのは僕だけ。

その証拠に嬉しそうな顔して少女は次々と魔法を放っている。


一度に複数魔法の同時発射ってどんだけ凄いのー!!!


どんだけ凄いかと言うと、…例えるなら同時に日本語と英語とフランス語を喋りながら数学の公式を解き、的に向かって物を投げている様なもの。


あれ? 分かり難い? …兎に角、凄すぎる事なんです!!!


「さぁ、死にたい奴はかかってきな?」

そう言って剣で倒していく赤毛の凛々しい顔立ちの少女。

そして僕は言うと…。



張って貰った結界の中でその戦いを傍観しています。

だって、僕は弱すぎて戦闘外なんですぅっ!

見ているだけで怖くて涙が出そう……。

僕にできる事は邪魔しない、動かない、人質にならない。この三つだけなんですぅぅぅっ!!

頑張って二人とも!! ちょっと、大男達が可哀想な気がするけどっ!!




*******


「はーはははは!!! 思い知ったか!!」

高らかに叫ぶ女剣士。この国では有名の女剣士。国で三人しかいない、剣王の名前を持つ一人。剣を使いながら魔法と武術を同時に扱う最強。

「結構弱かったです…」

そう言って残念と呟く魔術師。国の守り結界の要の人物で、国一番の魔術師。

こんな最強な二人と旅する僕は‘勇者’と呼ばれている。

魔法を使おうとすれば舌を噛み、剣を持てばこけそうになり(逆に怪我する…)武術が変てこな踊りになる僕は激弱です!!!!


何で僕‘勇者’って呼ばれてるの!!?

寧ろ二人がその名に相応しいのに!!!


そう思っては落ち込みます…。



「キャン!」

「?」

溜息をつくと、木の影に小狐の様な動物がいる事に気が付いた。その動物は足に怪我をしている。


…さっきの戦闘に巻き込まれたのかな?


そう思った僕は唯一得意な癒しの魔法をかけた……んだけど。

『ぼふうぅん!』

「あれ?」

「ちょっ! 何した?!」

傷の治った小狐は僕よりも大きい狐に…。


…そうだった…僕の治癒魔法は他人にかけると失敗するんだったっ!!


元小狐は僕のほっぺをペロペロ舐める。


かっ…可愛い~。


「…おとなしそうだし、トールに懐いてるしコレに乗って行きましょう」

「そりゃぁ良いな。トールのペースに合わせると、この森を出るのがいつになるか分からないしな!」

「……」

…とろくてごめんなさいぃぃっ!!

酷く、いたたまれナイ!



*******



高々と聳え立つ城。

「大きい…」

元小狐に乗ったらあっという間に着いた魔王の城。因みに僕は落ちないように魔法で縛られたけど!

「さてと、‘勇者’行きな」

ニヤッと笑って女剣士は僕の背中を押した。


えええぇぇぇぇぇ!!! ここで? いやいや、確かに目的地到着だけど!!!

激弱な僕が城の中に入ったら一瞬で消える…。

あれ? 今更ながら気付いたけど、魔族に因る被害って聞いた事無いよ…ね?

馬鹿だから自信ないけど!

魔王が世界征服するって言う噂も聞いた事が無い。


あれ? 何で僕ココに来たの?

倒す必要ってないよね? 激弱だから逆に倒されちゃうけど!! 寧ろ、最強な二人が行くべきでしょ!! …僕は留守番します!!!

命が欲しいんで回れ右…。


「固まってねーでとっとと行け!!」

そう言って女剣士に蹴られて扉に顔を強打。

「ぐふっ! うぅぅ…痛いよぉぉぉ…」

その場に蹲っていると、内側から扉が開いた。

「いらっしゃいませ。お待ちしておりました」

「え? ……」

扉を開けたのは目玉が片方だけの所々肌の色がおかしい…そう、ゾンビだった。

「うぎゃぁぁぁ!!!」

「すみません。遅くなりました」

丁寧にお辞儀する魔術師。


ちょっ! 何でそこ冷静なの!! 挨拶している場合じゃなくない?! ゾンビだよ?! ホラーやだよぉぉぉ!!!


半泣きな僕に女剣士の冷たいツッコミが入る。

「口閉じろ。魔王の城に人間が居るわけがねーだろうが!」

…そうだった。ここに居るのは魔族と呼ばれる者たちだった。


「……なるほど。移転した方が早そうですな」

「へっ?」

ゾンビはそう言うと僕の足元に魔方陣を描き、呪文無しで僕を飛ばした。


ええぇぇぇぇぇぇぇ!!!

あの二人から離れたら絶対、確実に生きている自信が無いです!!!




*******




温かい…

「……んぅ?」

クスクスと笑う女の人の声。どうやら僕は飛ばされたショックで気を失っていたらしい。

目をあけるとそこには…

「!!」

長いくて艶やかな黒い髪を持つ、グラマーな体形のお姉さま系美少女がいた!!!

しかも僕、その女性に膝枕されていたみたいで、スッゴク近い。


うわっ!! 綺麗!! 色っぽい!!!


「目が覚めたのね…初めまして‘勇者さま’私の名はヴァイン・ルーリィー・フォルド。魔王よ」

「……へっ?」


えええぇぇぇぇぇぇぇぇ??!!!


固まる僕。その姿を見て、甘くお花が咲いたように笑う魔王さま。

「可愛い…」

「あのあの…僕勇者なんだけどっ」

「知っているわ。私が呼んだんですもの」

「え? ――っんん!」


ひやぁぁぁ!!! キス? これはキスだよね???


突然されたキス。泣き虫で弱虫で落ちこぼれでドジな僕は女性にモテタ事がない。初めてのキスに僕は更にパニック。

「~っ!」

しかも生暖かいものが僕の口の中で暴れてる。


しばらくすると、唇が離れた。

「はぁ…はぁ…」

頭の中がボーとする…。酸欠で生理的に涙が出た。


「キスも初めてなんて…最高。…ねぇ、勇者様。私の伴侶になって?」

「へ?」


伴侶って旦那様って事だよね?

「えっと?」

「年上の女性は嫌?」

そう言って悲しそうな顔をする。

「いいえ!」

「じゃぁ!」

僕の言葉に目を輝かせる。

でも…

「僕はスッゴク弱いです!」

「私が強いから大丈夫! 守ってあげるわ」

魔王は笑顔で答える。

「モテタ事が一度もない魅力の無い僕です! 貴方なら…沢山いるでしょ?」

「好みじゃない男性なんて興味ないわ。私が興味あるのは貴方だけ。それに…モテル男は女性にだらしが無いから嫌い」

「でも、僕は男のくせに泣き虫で! …ドジで誰にも必要とされない、寧ろ周りに迷惑をかけてるばかりで…!!」

言いながら僕は泣き出す。

周りに迷惑をかけてばかりの僕はどこに行っても邪魔者扱い。頑張れば頑張るほど失敗して、厭きられて…。…嫌われる。


「貴方の泣き顔は可愛くって大好き。ドジなの? 怪我したら治してあげるわ。」

魔王さまが僕の頬に触れる。

「私が貴方を必要としているわ。貴方の迷惑は私にとっては喜びよ。沢山頼って。」

熱のこもった目で僕を見る。初めてこんな目で見つめられた。


どきんっ!


「…ずっと、私の側に居て」

初めて必要とされた。

それはこの世の誰よりも強くて綺麗な魔王さま。


「貴方は私の夢にまで見た理想の男性よ」

「僕が理想?」

「えぇ。だって貴方が欲しくて人間の王様にお願いしたんですもの……」

そして、魔王さまはポロッと涙を零した。

「っ!!」

魔王さまの涙はとても綺麗で、僕は無意識に魔王さまの濡れた頬を触った。

「…えっ…」

僕が触れた瞬間、魔王さまは頬を薔薇色に染めた。


…可愛い…。


「…まさか…涙が出るなんて……思わなかったわ。私、自分で思っていた以上に…」

照れた笑みを僕に向ける。

「好き…みたい…」

「っ!」

僕の胸が温かくなる。きっとコレは歓喜。


僕を必要としてくれる。

僕を好きだと言ってくれる。


あぁ…胸の奥から何かが溢れていく……。


「…僕の名前はトール・ディズ」

「トール…?」

可愛らしい口から僕の名前が紡がれる。

「っ!!」

僕は思わず彼女を抱きしめた。


嬉しい、嬉しい、嬉しいっ!!!


愛しそうに甘く僕の名前を呼ぶ声が。

愛しそうに甘く僕を見つめる瞳が。


そっか、僕は……。


「……ダメダメな僕だけど…宜しくお願いしっまひゅ!」


…うううぅぅ……決まらない!!! 何でココでかむの僕!?


「…可愛い…」

落ち込む僕に対して、彼女は嬉しそうな笑顔。

本当に彼女は僕のドジも喜びみたい。普通の人なら冷ややかな目で僕を見る。

「……」

自然と僕も笑みを浮べた。

「っ!!…ごめんなさいっ!!」

突然、切羽詰った顔になった彼女は僕に謝ると、押し倒した。

「…そんな顔したら……もう、我慢できないっ!!!!」

「え? ちょっ…ひゃんっ!! …あん…」




その後、暴走した彼女に可愛がられたのは言うまでもないよね?



まぁ、短所は他人から見ると長所に変わるよね。

とか言いつつ、ヘタレ主人公が書きたかっただけです…。

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