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『高卒で人生終了?――伝説の投資家に資本主義の裏ルールを学んだ俺、4年で資産1億円を築いて元同級生を見返します』  作者: 月神世一


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EP 10

第7章クライマックス「純資産5億円(超富裕層)完全突破!日本の全世帯上位0.1%の絶対頂点へ」

 六月三十日、火曜日。

 梅雨の合間の青空から初夏の強烈な太陽が照りつけ、工場のトタン屋根を焦がす熱気が、アスファルトの上に陽炎(かげろう)を立ち昇らせていた。

 正午のサイレンが鳴り響いた三晃紙器工業の第一工場・社員食堂。

 だが、冷房の効きが悪い食堂の一角からは、熱気以上にドロドロとした怨嗟の叫び声が響き渡っていた。

「……ぎゃあぁぁぁっ! 猛暑! 七月から電気代がさらに跳ね上がるのに、冬より手取りが減った給料でどうやってエアコンを点ければいいんだよぉぉぉっ!!」

 パイプ椅子を蹴倒して床に突っ伏し、額に玉のような脂汗を浮かべながら床板をバンバンと叩いていたのは、同期採用二年目の山岸だった。

 作業着の首元をはだけさせ、血走った目で天井の換気扇を睨みつけている。

 その指先は、スマホの画面に表示された電力会社の料金値上げシミュレーションを震えながらスクロールしていた。

「おい山岸、床で暴れるな。埃が舞うだろ」

 俺――倉科湊が、保温ランチジャーから冷やし豚しゃぶうどんと、母が持たせてくれたトウモロコシの天ぷら弁当を取り出しながら声をかけると、山岸は鬼のような形相で俺の足元へ這いずり寄ってきた。

「埃どころじゃねえよ倉科ぁぁぁっ!

 先月の住民税天引きで手取り十三万二千円に削られたばかりなのに……!

 来週支給される夏のボーナスは、自動車税の滞納分とリボ払いで残高三万五千円の確定死刑宣告!

 そこへ持ってきて、今日のニュース見ろよ! 七月使用分から大手電力各社が電気代を一斉値上げするって書いてあんだぞ!?

 都心の大学に行ったエリート連中は、大企業の内定式を終えてエアコンの効いたタワマンで涼しい顔してシャンパン飲んでんのに……

 なんで俺たち高卒労働者は、手取り十三万の安月給で、熱中症で倒れる恐怖と電気代の請求書に怯えながらサウナみたいなアパートで凍え死ななきゃいけないんだよぉぉぉっ!!」

 周囲のベテラン工員たちも、手元のうちわを激しく扇ぎながら「今年の夏は電気代だけで二万円超えるらしいな」「ボーナスなんて右から左へ消えるし、熱中症で倒れたら病院代で一発破産だよ」と、力なくため息をついて安売りのカップ蕎麦をすすっている。

 俺は小さく息を吐き出し、水筒の冷たい麦茶を一口喉へと流し込んだ。

「山岸。中学生でもわかる、インフレ下の実質購買力とエネルギー搾取の算数をしよう」

「算数なんか聞きたくねえ! エアコンの電気代を国が全額払え!」

「払うわけがない。

 エネルギー価格の高騰、猛暑による需給逼迫、そして円安……。

 インフレの本質は、持たざる者から持てる者への【見えない富の強制移転】だ。

 電力会社や資源企業はコストの上昇分を電気料金に転嫁(値上げ)することで利益を死守するが、価格決定権を持たない労働者は、上がった電気代と物価のすべてを『目減りした給料』から自腹で削り取られる。

 普段から副業や資本の種銭を作らず、手取りの範囲内でその日暮らしを続けている人間が、季節の環境変化ごとに命の危機に瀕するのは、資本主義の食物連鎖における必然の結果なんだよ」

「ぎゃあぁぁぁっ! 食物連鎖の最底辺みたいに言うなよぉぉぉっ!!」

 耳を塞いで食堂の隅へと逃げ出していく山岸。

 山岸は震える指でスマホを取り出し、自暴自棄に画面をスクロールした。

「……あ、そういや倉科! 東京脱落組の同級生たち、ついに【完全消滅】したらしいぜ……!」

「拓海や凛がどうした?」

「もう二度と娑婆には戻ってこれねえよ!

 高架下でホームレスやってた金子拓海だけどさ……

 この数日の猛暑で脱水症状を起こして熱中症で倒れて、救急搬送されたらしいぜ!

 身元引受人の親からも『二度と連絡してくるな』って受取拒否されて、無保険の治療費の請求書を抱えたまま、身寄りのない身元不明者として遠方の無料低額宿泊所に収容されたらしい!

 佐伯凛も、歌舞伎町で補導されたあと、精神病棟の閉鎖病棟へ医療保護入院が正式に決まって、スマホも服も全部没収されて社会から完全に隔離されたってよ……!

 高校卒業の時に『高卒の工場勤務とか無理w一生ライン工頑張れよw』って俺たちを嘲笑ってたエリート大学生たちが、大学四年の夏を迎える前に、ホームレス収容所と閉鎖病棟へ消えていきやがったんだよぉぉぉっ!!」

 他人の完全な破滅を肴にして、狂気じみた笑みを浮かべる山岸。

 だが、その山岸自身も、手取り十三万円と電気代の請求書という過酷な現実の中で、喉を枯らして震えているのだ。

(山岸、お前には見えていないんだよ。

 東京組が社会から完全に消滅し、お前が数千円の電気代に怯えている横で……

 目の前にいる高卒二年目のライン工が、今夜どんな【神話の頂】へ登りつめようとしているのかがな)

 前話(第74話)の時点で、不動産リファイナンスと全国三十大学包括提携により、確定総純資産は【4億1,137万7,000円】に到達。

 日本の全世帯上位〇・一%しか入れない神の領域――【純資産5億円(超富裕層:ウルトラ・ハイネットワース)】まで、あと残り【八千八百六十二万三千円】。

「定時で上がるぞ。今夜、俺たちの長い旅が一つの極点へ到達する」

 午後十七時零二分、定時退社。

 タイムカードをパチンと切った俺は、夕暮れの心地よい初夏の風を切り裂き、地方都市の駅前に構えたミナト・ホールディングスのオフィスへと自転車を疾走させた。

 ◇ ◇ ◇

 午後十七時三十分、合同会社ミナト・ホールディングスのオフィス。

 ダイキンの最新エアコンが静かに二十四度の快適な室温を保ち、ディフューザーからはペパーミントとベルガモット、そして上品な白檀と完熟マンゴーのアロマがふわりと漂っていた。

「湊くん……! お帰りなさい!」

 扉を開けると、そこには白石詩織が待っていた。

 淡いサンシャインゴールドの透け感のある上質なシアーブラウスに、清楚な純白のロングマーメイドスカート。

 ショコラブラックの豊かな髪を首元ですっきりとまとめ、黒縁メガネを外した大きな茶褐色の瞳が、夕陽を浴びてキラキラと輝いている。

 高校時代の地味な面影など微塵もなく、その洗練された佇まいと圧倒的な透明感は、誰もが息を呑む最高峰の美少女そのものだった。

 部屋に入った瞬間にふわりと広がる甘い石鹸とトロピカルなアロマに、俺の心拍計がピクリと跳ね上がる。

 デスクの上には、最新のM4搭載iPad Proと、氷を浮かべた特製の耐熱グラスが用意されていた。

「白石、待たせたな」

「ううん、全然待ってないよ! 湊くん、暑い工場のライン作業お疲れ様……!

 これ、外はすっごく暑かったでしょ? 買収したハーブ園の無農薬レモングラスと、沖縄県産の初摘み完熟アップルマンゴーを贅沢に絞った『特製アイスハニーマンゴーセゾンラテ』だよ! 冷たいうちに飲んでね!」

「サンキュー、白石。生き返るよ」

 グラスを受け取り、一気に喉を潤す。

 完熟マンゴーの濃厚でジューシーな甘みと、レモングラスの爽快な酸味、そして上質なミルクのコクが、渇いた身体の隅々までじんわりと染み渡っていく。

 めちゃくちゃうまい。

 だが、俺は彼女の華奢な指先に、超巨大プラットフォーム統合CIおよび国内外向けプレスリリース資料の最終監修による微かな強張りがあるのを見逃さなかった。

(……いかんな。また俺の経営者センサーが過敏に作動している)

 俺はデスクの引き出しから、あらかじめ用意しておいた重厚な桐箱をスッと取り出し、詩織の前に差し出した。

 銀座の老舗名門サロンが完全予約制で一日一箱のみ仕立てた『最高級・完熟宮崎マンゴーと金箔宇治濃茶の極上初夏ダイヤモンドクラウンパフェテリーヌ』と、高密度ナノグラフェン温熱とマイクロカレント微弱電流で指先から手根管までを深層ケアする最新型コードレスメディカルハンドエステ機だ。

「ほら、白石。これを受け取れ」

「えっ……!? これ、すごく大きな完熟マンゴーの上に金箔がキラキラ乗ってるパフェ……! それに、最新のエステ機……!?

 湊くん、私がお茶を出しただけなのに、どうしていつもこんなに高価なものをくれるの……?」

「勘違いするなよ」

 俺は腕を組み、冷徹な仮面を必死に張り直して早口でまくしたてた。

「中学生でもわかる組織財務と超富裕層到達ファイナルディール調印に伴う人的資本BCP防衛の講義だ。

 純資産四億円を突破した我が企業グループの最高アートディレクター(お前)が、初夏の急激な気温上昇によって浅指屈筋および手根管周辺の柔軟性を低下させ、これから即時開示されるHRTechメガ企業との資本業務提携プレスリリース用キービジュアルの最終ベクター検収を〇・四秒遅延させた場合、全市場へのアナウンス遅延に伴う機会損失は【試算で最低でも月額六千万円】に跳ね上がる!

 宮崎マンゴーの高濃度βカロテンとビタミンA・Cによる抗酸化キレート作用、ならびにマイクロカレントによる指先の微細神経機能維持は、グループ中核クリエイターの【中長期的アジリティを担保するための戦略的初夏BCP防衛および役員福利厚生投資経費】だ!

 お前への甘やかしなどではない!

 今夜生み出される何億円もの超富裕層純利益から逆算すれば、このパフェテリーヌ代などROI(投資対効果)は【実に八億%】を超える!

 極めて合理的でドライな財務上の防衛支出だから、一ミリも遠慮せず胃袋に収めて手を突っ込め」

 息をつかずに言い切った俺の、世界一長くて過保護な言い訳。

 詩織は桐箱を胸にぎゅっと抱きしめ、目をパチクリさせて聞いていたが――やがて、その桃色の唇をふにゃりと綻ばせ、クスクスと愛おしそうに笑った。

「ふふっ……あはは! キービジュアル……? ROIがはちおくパーセント……?

 湊くんの言い訳、本当に世界一長くて……世界一甘くて幸せだよ!」

「な、何がおかしい。純粋な企業防衛だぞ」

「うん、そうだね! じゃあ私、湊くんの『防衛経費』で美味しく手をポカポカにして、八億パーセントのお返しができる世界一可愛いデザインを描き続けるね!

 ……あ、湊くん! パフェテリーヌ、マンゴーがとろとろで金箔がお星さまみたいだよ! はい、あーん!」

 フォークに濃厚な完熟マンゴーの果肉と上品な抹茶クリーム、そして金箔をたっぷり乗せ、夕陽に照らされた満面の笑顔で差し出してくる詩織。

 至近距離から漂う甘美な果実のアロマと芳醇な抹茶の香り、彼女自身の透き通るような白い肌、潤んだ茶褐色の瞳。

「お、おい……自分で食える……」

「ダメー! 第7章クライマックス、歴史的瞬間の景気づけなんだから! ほら、あーん!」

 観念して口を開けると、濃厚で芳醇なマンゴーのとろけるような甘みと、ビターな抹茶の深いコクが口いっぱいに広がった。

 めちゃくちゃうまい。

 そして――心拍数が異常なスピードで跳ね上がり、俺の脳内プロセッサが完全に一時停止しかける。

(……ダメだ。この女の『あーん』の破壊力は、どんな資本主義の防壁をも一瞬で溶かしてしまう……)

「ふふっ、美味しい? 湊社長!」

「……ああ、最高だ。……よし白石、本題に入るぞ」

 ◇ ◇ ◇

「白石、今から中学生でもわかる、純資産5億円(超富裕層)への最終到達――【HRTechメガ企業とのAPI独占包括提携&夏の観光メガバブル】の算数をしよう」

 俺はノートPCを開き、ホワイトボードの前に立った。

「前話(第74話)で、俺たちの純資産は四億一千百三十七万円に達していた。

 五億円の頂上まで、残り八千八百六十二万円。

 そして今夜――この最後の壁を木っ端微塵に粉砕する【二つの決定打】が同時に着金した!」

 俺は画面に、東証プライム上場の国内最大手HRメガ企業との電撃合意書を映し出した。

①【国内最大手HRメガ企業との『API独占OEM包括提携』】

「就活AIツール(ES-Master)が東証プライム三十五社、全国三十大学に導入された実績を評価され、業界最大手の就活メガポータルを運営するHRコングロマリットから『自社の就活アプリ全ユーザー(約四十万人)に向けて、ES-MasterのAI添削エンジンを独占標準搭載したい』と正式要請があった。

 相手が提示してきた年間API独占ライセンスおよび共同事業提携一時金……

 ――【現金一括・1億円(100,000,000円!)】だ!」

「……えぇっ!? い、一億円……!?」

 詩織が息を呑んだ。

「そうだ。

 競合他社を寄せ付けない圧倒的な先行者利益と、全国の大学・大手企業を押さえた信用力により、一発で一億円の純現金が法人口座へ振り込まれた!」

②【夏のインバウンド&観光メガバブル(翠月亭・花咲庵の爆発)】

「さらに、七月〜八月の夏休みシーズン突入に伴い、老舗温泉旅館『翠月亭』の客室露天風呂スイートが、欧米・アジアの富裕層インバウンド予約によって【全室完売・満室御礼】!

 古民家茶房『花咲庵』の日向夏と宇治抹茶のかき氷パフェ特需、D2C定期便、メディア連合の確定収益が狂ったように雪崩れ込んだ!」

 カタカタ、ターンッ!

 俺はエンターキーを叩き、グループ連結のリアルタイム統合ダッシュボードを大画面に叩きつけた。

【合同会社ミナト・ホールディングス グループ連結資産集計(6月30日・第7章クライマックス)】

・前回までの確定総純資産:411,377,000円

・国内最大手HRメガ企業 API独占包括提携一時金:+60,000,000円(納税引当後実質純益プール分)

・老舗旅館『翠月亭』夏休みインバウンド超特需純利益:+17,500,000円

・古民家茶房『花咲庵』初夏かき氷特需純利益:+7,000,000円

・BtoB+大学包括+辞退防止SaaS月割純利益:+21,200,000円

・個人向け就活SaaS+メディア連合+D2C定期純利益:+23,400,000円

・月額アカデミー(MRR 560名分純利益):+5,500,000円

・コア資産運用配当&米国債利息:+940,000円

・法人税・消費税追加納税引当プール金:▲33,900,000円

★ 確定総純資産残高(純資産ベース):【513,017,000円(祝・純資産5億円完全突破!)】

★ グループ運用総資産規模(バランスシート総額):【7億2,301万円(総資産7億円突破!)】

★ グループ月間経常純キャッシュフロー:【+1億1,200万円(月利1億円突破!)】

「……ご、おく……せんさんびゃくいちまん……!!」

 息が止まった。

 『513,017,000』。

 高校を卒業したあの日、ポケットの中にあったのは、バイト代の残りわずか三万二千円。

 「高卒の工場勤務とか無理w一生ライン工頑張れよw」と同級生たちに嘲笑されてから、二年と三ヶ月――八百二十日。

 手取り十四万の食品工場ライン工が、

 時給労働のバイトには一秒も逃げず、

 資本主義のルールと税法の盾を極限までハックし続けた結果――

 ついに、日本の全世帯五千四百万世帯のうち、上位わずか【0.1%】しか存在しない人類の頂点――

 ――【純資産5億円(超富裕層:ウルトラ・ハイネットワース)】の巨大な頂上を、完全に制覇したのだ!

「中学生でもわかる、純資産5億円の圧倒的な神の領域の算数をしよう……」

 俺は電卓アプリを立ち上げた。

 純資産五億円を超えた人間だけに許される、資本主義の完全なる絶対王者(ビリオネア)の真実――

 それは【国家公認の永続的貴族化】だ!

 この五億円を手堅く【年利5%】でインデックス運用したとする。

 『5億円 × 5% = 【年間2,500万円】』。

 税引き後の手取りにして、毎年約【2,000万円】。

 月額に直せば、毎月【約166万円】の完全なる不労所得が、寝ていても、遊んでいても、永久に口座に勝手に湧き出てくる計算になる。

「年間二千五百万円……。

 俺の工場の年間の手取り給料(約百七十万円)の【約十五年分】が、俺自身の労働ではなく、資産が生み出す配当と利息だけで毎年勝手に手に入る。

 何もしなくても、日本人の平均年収の五倍以上の現金が毎月勝手に口座にチャージされ続ける……。

 しかも、グループの月間純キャッシュフローは【月1億1,200万円】」

 完全なる解脱。

 もはや日本国内のあらゆる経済的脅威、物価高、増税、社会保険料の負担など、この五億円の要塞の前には蚊に刺されたほどの痛みすら生じない。

 十九歳の元負け組少年は、資本主義のサバイバルゲームにおいて、正真正銘の【絶対覇者】へと君臨したのだ!

「きゃぁぁぁぁぁぁっ!! 湊くん、五億円だよ……! 純資産五億円、超富裕層到達だよぉぉぉっ!!」

 画面を見つめていた詩織の大きな瞳から、大粒の涙が滝のように溢れ出した。

 彼女はそのまま、勢いよく俺の胸元へと飛び込んできた。

 柔らかな温もりと、想いが報われた最高のカタルシス。

「十九歳で五億円……! 日本の全世帯の上位零点一パーセントだよ……!?

 私、一年前は時給六十六円で買い叩かれて、暗い美術室の隅っこで泣いていたのに……!

 私の『スタジオ・シオリ』の口座にも、もう【四千五百万円】以上の純資産があるんだよ……!?

 湊くんと一緒に歩んできて、本当によかった……! 湊くんは、私にとっても、世界中の誰にとっても、最高で世界一のヒーローだよぉぉぉっ!!」

 詩織は俺の胸に顔を埋めたまま、嬉し涙で服を濡らしながら抱きしめてきた。

 俺はそっと手を回し、彼女の柔らかな髪を優しく撫でた。

「白石……お前のおかげだよ。

 お前が命を削って描いてくれた神がかったデザインと世界観がなければ、就活AIツールも、旅館も、茶房も、この五億円も絶対にあり得なかった。

 お前は俺の、世界で一番誇らしい最高のパートナーだ」

「湊くん……っ!」

 詩織は顔を上げ、耳まで真っ赤に染めながら、潤んだ瞳で俺を見つめてきた。

 夕暮れのオフィスに、二人だけの温かく甘い至福の時間が静かに流れていた。

 ◇ ◇ ◇

 午後二十一時、地方都市の小高い丘の上に建つ、九条源蔵の屋敷。

 広大なリビングの欅の一枚板テーブルの前で、俺は『513,017,000円』と刻まれた最新の資産管理スプレッドシートと、グループ連結決算速報を源蔵の前に差し出した。

「じいさん、報告に来ました。

 純資産五億円――【超富裕層(ウルトラ・ハイネットワース)】を完全に突破しました」

 源蔵は老眼鏡をかけ、無言で画面をスクロールした。

 『513,017,000円』。

 その数字を確認した瞬間、老人のぎょろりとした鋭い瞳が、細く、深く見開かれた。

 そして――。

「……カッカッカッ!! ワッハッハッハッ!!」

 屋敷の太い梁をビリビリと震わせるほどの、豪快な大爆笑が初夏の夜空に轟いた。

 源蔵はバシバシと自分の太ももを叩き、テーブルを揺らした。

「やりやがったな、青二才が!!

 手取り十四万の食品工場ライン工が、一銭の借金もせず、誰からも施しを受けず……

 資本主義のルールと己の頭脳だけで、十九歳にして【超富裕層(純資産五億円)】の扉を完全に蹴破りやがったか!!」

「教えの通り、時給労働は捨てました。

 就活AIのプラットフォーム支配、ホールディングス化、リアルM&A、無税レバレッジ……資本の最上流をすべて支配した結果です」

 俺が胸を張ると、源蔵は笑いを収め、湯呑みを置いて居住まいを正した。

 その顔には、これまでに見せたことのない、一人の真の『大資本家』として俺を認める真剣な眼光と、深い慈愛の光が宿っていた。

「いいか湊。日本の全世帯五千四百万世帯のうち、純資産五億円以上の超富裕層は、上位わずか【0.1%】だ。

 千人のうち、九百九十九人を遥か雲の下に見下ろす、正真正銘の絶対王者の領域だ!

 金子拓海はホームレス収容所に消え、佐伯凛は精神病棟の閉鎖病棟へ隔離された。

 高校卒業のあの日、てめえを嘲笑った連中が誰一人として足元にも及ばねえ【五億円の神話】を、てめえは十九歳にして創り上げたんだ!」

 源蔵は立ち上がり、リビングの奥の金庫から、漆塗りの重厚な小箱を取り出してテーブルの上に置いた。

「だが湊、いよいよ物語は【最終章】へ突入するぞ」

「……ええ。同級生たちが大学を卒業し、社会に出て『手取り二十万の社畜の現実』に直面する、来春の【運命の卒業式・最終回答(答え合わせ)】ですね」

「そうだ! よくぞ言った坊主!」

 源蔵の口元に、獰猛で兇悪な笑みが浮かんだ。

「手取り十四万の工場ライン工という『最強の仮面』を被ったまま、裏で五億円の金融帝国を統べる若き絶対王者……。

 来年の春、大学を卒業して手取り二十万の社畜として社会に出てくる同級生たち、そしてかつててめえを見下したすべての人間に向けて――

 てめえはこの圧倒的な富の絶対暴力で、一生忘れられねえ【人生の最終回答】を叩きつけてやれ!」

「はい、じいさん!」

 俺の力強い咆哮が、初夏の静寂を切り裂いた。

 窓の外を見上げると、初夏の澄み切った夜空に、神々しいまでの満月が輝いていた。

 高校卒業から二年と三ヶ月。

 同級生たちが大学を卒業し、社会に出て自らの市場価値の低さに絶望するまでの、残り五百七十日。

 手取り十四万の食品工場ライン工社長と、覚醒した天才美少女絵師。

 純資産五億円(超富裕層)を完全突破した二人の成り上がりストーリーは、ここから全伏線回収と因果応報の頂点――【第8章:運命の卒業式と最終回答・絶対王者の凱旋編】へと突き進んでいく!

【現在の倉科湊ステータス】

・年齢/肩書:19歳/食品工場ライン工・合同会社ミナト・ホールディングス 代表社員(第7章完結・純資産5億円超富裕層完全到達!)

・総資産残高:513,017,000円(第7章累計:+410,617,000円 ※就活SaaS包括提携+リアルM&A+MRR+配当)

・グループ運用総資産:723,017,000円(バランスシート7億2,000万超え!)

・月間不労/事業キャッシュフロー:+112,000,000円(グループ連結月間純利益・月利1億円突破!)

・【今日の源蔵のマネー格言】:「純資産5億円を超えた瞬間、人間は資本主義のゲームを完全にクリアし、永続的な貴族へ進化する。世間の99.9%を見下ろす超富裕層の頂に立ったてめえに、もう二度と貧乏の影は踏めねえ。次は来春、運命の卒業式であいつらに人生の答え合わせを叩き込んでやれ!」

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