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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

春の大樹の下で

作者: そーた
掲載日:2026/03/07

少し暖かい空気と冷たい風が混ざり、寒いのか暖かいのかよく分からないそんな季節の時、俺はとある大樹のもとにやってきていた。その大樹は小さな公園にぽつりとあり、少しの遊具の近くに生えていた。小さなころはこの公園でいつも遊んでいて、その時に鬼ごっこをしたりかくれんぼ、いろんな遊びをしていた。


その時は大きいと感じていた遊具や大樹も、大人になった今やってきていても、自分が成長したからか小さく感じてしまっていた。


そんな公園にやってきている理由は、小さなころに幼馴染の女の子と一つの約束を交わしたからだ。


『おおきくなったら、またここであそぼ!』


今思い返していても微笑ましい約束なのだが、残念ながらこの約束だけは叶えられそうにない。今幼馴染はどこで何をやっているのかすらも、俺には分からなかった。


(…君は根っからの泣き虫で、何かあったら俺に泣きついていたよね)


俺は昔、この公園で幼馴染と遊んだ日々のことを思い出していた。この公園で遊具、砂場、そしてこの大樹、いろんな場所を工夫して遊んだ記憶が、一気によみがえってきた。それは、今の俺の事を考えるなら、もっと大事にするべき時間だった。


(…鬼ごっことかをするといつも君が勝っていたな、悔しがっていた頃もあって…本当にあの時は楽しかったな)


過去は美化されるというものなのだが、ここまで色濃い幼少期を過ごしているのだから求めてしまうのは当然だと思う。


すると雨が降り始めた。

その雨は、まるで俺の今の心情を現しているかのようだった。


俺は何とも言えない気持ちになりながら大樹に触れる。いろんな心情が混じっているからか、触れても何も感じることはない。

大樹と言えば、小さなときにふざけて登ってけがを負ってしまった事を思い出す。その時は君が心配してくれた事をよく覚えている。


「…そういえば、そんな君と最後に遊んだのは小学生の時だったっけな」


あの約束を交わしたのだって君が転校することを知って、転校する前にいっぱい遊んで、いろんなことを話して、後悔しないように楽しんで、それで保険を掛けるように約束したんだ。


(…約束、覚えてくれているかな)


正直、小学生の時に交わした約束なんて、大半は忘れてしまうだろう。それにこれだけの月日がたてば完全に忘れ去ってしまうだろう。

すると、雨が降っている中、傘を差した女性が公園の中に入ってきた。その女性は、間違いなく幼馴染の君だった。


俺はそんな彼女を迎えようと思ったが、彼女はそんな俺を無視して大樹に向かい、一言、涙をながしながら言った。


「…来たよ、約束通り」


彼女はそう言うと、さらに大粒な涙を、雨に等しいような量で流し始めた。


(…あぁ、彼女は約束を守ってくれた)


俺はその嬉しさを感じながら、もう触れることのできない君に、最後はそっと寄り添うことしか、今の自分にはできなかった。

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