第6話:蘇生期間の苦行 〜逃げ場のない不純な食い込み〜
拠点の一角、無機質な蘇生室。神代麗子は、ゾルバの汚濁から洗浄し終えた「ロイヤルブルー」を前に、一人静かに作業を進めていた。
かつては彼女を無敵の戦士へと変えた強靭な皮膚。しかし今、目の前にあるそれは、怪人の巨体によって物理的に引き裂かれ、繊維の弾性が死に絶えた「亡骸」だ。ブルークリスタルの蘇生効果を待つ間も、彼女はこれを纏って戦い、そして日常を過ごさねばならない。
「……はぁ……」
麗子は、レオタードの裾部分にある小さな交換用の穴に指をかけた。
使い古され、ゾルバの熱でだるだるに伸びきった旧いゴム。それをハサミで切断し、一本の死んだ紐として引き抜く。
次に、新品の強靭なゴムを用意した。予備として保管されていたそれは、指で弾けば鋭い音を立て、彼女の規律を象徴するような頼もしさを持っている。
麗子は、その新品のゴムを交換穴から慎重に通していく。一週、二週。指先の感覚だけを頼りに、死んだ生地のトンネルを抜けていく地道な作業。
「……よし」
一周したゴムの両端を掴み、彼女はそれを適度な強さで結び合わせた。
結び目を穴の中に隠すと、見かけ上は新品の時と同じ、鋭い裾ラインが復活したように見える。
だが、それは見せかけに過ぎない。新調された強靭な裾ゴムに対し、それを支える本体の生地は、すでに限界まで拡張され、自重でたわんでいるのだ。
「器は壊れている。けれど……これしかないのよ」
翌朝。麗子は新品の白いパンティを穿き、クリスタルを戴き、その上から強化されたパンストを引き上げた。
そして最後、自らメンテナンスしたレオタードに足を通す。
新品の裾ゴムが、鋭く脚の付け根に食い込む。その刺激はかつての「規律」を思い出させたが、腰回りの生地は、彼女の動きに合わせて情けなく波打っていた。
午前二時間目。英語の授業。
麗子は教壇に立ち、いつものように冷静な教師を演じていた。
しかし、その内側では、徐々に「不均衡」が牙を剥き始めていた。
「Next, look at the relative pronouns on page 55.」
麗子はチョークを取り、黒板の最上部に腕を伸ばした。
目線の高さで、**「肘を左右に大きく張って」**板書を続ける。
本来のレオタードであれば、この動作でも生地は肉体に吸い付くように密着し、彼女のラインを守るはずだった。
しかし、弾性を失った生地は、腕の動きに引きずられて左右に大きく「たわみ」を作る。そして、逃げ場を失ったそのたわみは、重力と、新調した裾ゴムの強烈な引き込みに負け、一気に中央へと収束した。
(……っ!?)
授業開始から20分。
それまでは辛うじて位置を保っていたロイヤルブルーの生地が、板書の動作をきっかけに、臀部の奥深くまで「グイッ」と入り込んだ。
新調した裾ゴムの張力が、死んだ生地を強引に引き込み、その反動でパンスト越しに穿いた新品のパンティまでもが、不規則な形で肉の間に呑み込まれていく。
「……あ、……」
麗子の筆が、一瞬だけ止まる。
生徒たちには見えない。スーツのスカートの下で、正義の象徴が醜く歪み、最も敏感な部分を執拗に圧迫していることなど。
一歩歩くごとに、食い込んだ生地の塊が、粘膜を擦る。
直したい。今すぐ、個室へ駆け込んで、この不快な歪みを正したい。
しかし、教師としての責任が、彼女を教壇に縛り付けていた。
(あと、25分……耐えなさい。これも、私の『規律』……)
だが、耐えれば耐えるほど、不均衡な圧力は増していく。
新品の裾ゴムが脚の付け根を強く締め付ける一方で、腰回りの生地はだるだると余り、歩くたびに「不純な食い込み」をさらに深く、逃げ場のないものへと変えていった。
ようやくチャイムが鳴った時、麗子の背中には、冷や汗が滲んでいた。
彼女は平静を装って職員室へ戻るフリをし、そのままトイレへと駆け込んだ。
個室に入り、鍵をかける。
「……っ……はぁ、はぁ……」
スカートを捲り上げ、パンストの中に指を差し入れる。
食い込んだレオタードとパンティを引き剥がす。その瞬間、解放感とともに、ゾルバの脂の臭いが蘇るような幻覚に襲われ、彼女は激しい眩暈に襲われた。
メンテナンスしたはずの裾ゴムは、正義のためではなく、死んだ生地をより深く「辱めの形」に食い込ませるための、無慈悲な補助具と化していた。
そして、その日の放課後。パトロールに向かった彼女を、ドロルたちが待ち受けていた。
(……体が、重い……っ!)
一歩踏み出すたびに、股間で余った生地が不規則に揺れ、ハイキックを放つたびに、新品の裾ゴムの張力が、死んだ素材を引き連れて「ズレ」を引き起こす。
戦闘中、一体のドロルが彼女の背後に回り込み、あろうことか、腰のあたりでぶざまに余っていたレオタードの「たわみ」をガシッと掴んだ。
「放しなさい……っ!」
「ヒヒッ! ココ、余ッテル! 引ッ張レ!」
ドロルは、掴んだ生地を力任せに上方へと引き上げた。
弾性が死んでいるレオタードは、ドロルの怪力によって面白いように伸び、自ら新調したはずの裾ゴムごと、彼女の腰の上まで無残に捲り上げられた。
「あああああっ……!!」
夜の冷気の中に、新品のパンストと、一点の曇りもない白いパンティが放り出される。
自ら施したメンテナンスが、皮肉にも「ドロルが生地を掴むための格好の取っ手」を作り出し、彼女の聖域を、かつてないほど無防備に晒す結果となったのだ。
ドロルたちの卑俗な嘲笑の下で、セイントレディは地面に膝をついた。
物理的な防壁を自らの手で修繕しようとし、その結果、より惨めな形で瓦解させてしまったという事実。
それは、彼女の精神を、修復不可能なまでの絶望へと叩き落としていた。
【ゾルバにより伸ばされてしまったレオタード】




