第5話:規律の圧砕 〜死んだレオタードと白い下着の汚濁〜
エクリプスの拠点の最深部、湿ったコンクリートと鉄錆の臭いが立ち込める広間。そこは、神代麗子という一人の女性の尊厳が、物質的なレベルで解体される屠殺場だった。
ヒュノプスの催眠によって、自ら全ての「防壁」を脱ぎ捨てさせられた麗子。一物も纏わぬ姿で床に跪く彼女の前に、地響きを立てて現れたのは、怪力無双の怪人・ゾルバだった。
ゾルバは、麗子から奪ったばかりの装備一式を、その太く汚れた指で弄んでいた。特に、彼女が肌身離さず身に着けていた「白いパンティ」を手に取ると、下卑た笑いを浮かべた。
「ヒヒッ……セイントレディ。この『白』、随分と窮屈そうだな。俺様が広げてやるよ」
麗子は絶望に目を見開いた。これから行われるのは、肉体への加害以上に凄惨な、彼女のアイデンティティへの「冒涜」だ。
ゾルバは哄笑しながら、まずその繊細な白い布地を、己の岩のような太ももに無理やり通した。
ミシミシ……ッ!!
麗子が毎日、祈りにも似た敬虔な気持ちで肌に触れさせていた一点の曇りもない白。そのサイドを支える細いストラップに、ゾルバの暴力的な質量がのしかかる。本来、麗子のしなやかな腰回りに合わせて、心地よい食い込みを与えるはずだったゴム繊維が、限界を超えて引き絞られた。
ブチブチッ……。
繊維の芯が断裂する嫌な音が響く。ゾルバの巨体に合わせて無理やり拡張されたパンティのサイドストラップは、もはや元の形を留めないほどに細く、長く、だるだるに伸びきってしまった。かつては麗子の腰の肉を「規律」として区分けしていたそのパーツは、今やゾルバの剛毛に絡まり、無残に波打つだけの「死んだ紐」へと成り果てた。
続いてゾルバは、主を失ったロイヤルブルーのレオタードに、その醜悪な質量をねじ込み始めた。
「やめて……! お願い、それに触らないで……っ!!」
麗子の悲鳴が虚しく響く。彼女は催眠の残滓によって身体を動かせず、特等席で自らの分身が蹂躙される様を見せつけられた。
麗子の163センチの肢体に合わせて精密に設計されたレオタードが、ゾルバの膨れ上がった筋肉によって内側から突き破らんばかりに拡張されていく。
本来、どこにも「たわみ」を許さないはずの高密度繊維が、ゾルバの脂ぎった肌を透過させるほど極限まで薄く引き伸ばされる。それは素材としての「物理的な死」を意味していた。
さらに凄惨だったのは、ゾルバがその巨体を揺らしながら、自己のケアを怠る野獣のごとき生理現象を、レオタードの裏地に直接擦り付けていったことだ。
麗子の体温を吸っていたはずのロイヤルブルーの裏地は、ゾルバの粘着質な汚濁と獣臭によって、どろどろに汚染されていった。清潔感こそがセイントレディの誇りであったが、その誇りは今、怪人の体液という名の泥にまみれ、回復不能なまでに汚濁されている。
「見てみろ、セイントレディ! お前の『規律』が、俺様の脂で塗りつぶされていくぞ!」
ゾルバは満足げに吠えると、だるだるに伸びきり、繊維の弾性が完全に死に絶えた装備一式を、脱ぎ捨てた皮のように床へ投げ捨てた。
そこに転がっているのは、もはや「結界」ではない。
ゾルバの巨体に合わせてぶざまに拡張され、サイドストラップはだらしなく伸びきって波打ち、裏地には乾くことのない汚濁がこびりついた「無惨な残骸」だ。
「あ、ああ……っ……」
麗子は、胃の底から込み上げる激しい拒絶反応に襲われた。
自分の形を記憶し、自分を守る防壁であったはずの装束。それが今、目の前の怪物の形へと無理やり固定され、その生理的な痕跡で埋め尽くされている。
ゾルバは次に、奪ったブルークリスタルを指先で弄びながら嘲笑った。
その瞬間、クリスタルが麗子の「絶望の極致」に達した精神波動に共鳴し、歪な輝きを放つ。その光にゾルバが怯んだ一瞬を、麗子は見逃さなかった。
彼女は死に物狂いで床を這った。もはや羞恥すら感じない。彼女はただ、ゾルバに汚された「自分の死骸」を取り戻すためだけに動いた。
彼女は、脂ぎった臭いを放つレオタードと、サイドストラップが伸びきってしまったパンティを必死に抱え、そこにあった転送装置へ滑り込んだ。
それは勝利でも脱出でもない。
誇りを汚され、物理的に「殺された」自分の分身を抱え、ただ惨めに生き延びるためだけの敗走。
拠点へと戻った麗子が暗闇の中で手にしたのは、かつての威厳を失い、ゾルバの汚濁が染み付いた「ロイヤルブルーの亡骸」だった。
彼女は震える手で、伸びきったパンティのストラップをなぞる。指で弾いても、かつてのような「パチン」という鋭い音は返ってこない。ただ、だらしなく揺れるだけの死んだ紐。
そこに、ゾルバの脂の臭いが重なり、彼女の涙がその汚濁をさらに滲ませた。
「……私の、形が……どこにも、ない……」
しかし、彼女はこの「死んだ装備」を纏い、地獄のような蘇生期間を過ごさなければならない。
蘇生液に浸されたレオタードが、ゾルバの汚濁を吐き出しながら、再び彼女の肉体を締め上げようとする第6話。
そこには「正義」など存在しない。ただ、伸びきったストラップが不安定に揺れ、裏地の不快な汚れが肌を苛む、逃げ場のない「不純な苦行」だけが彼女を待ち受けていた。




