第4話:献納の儀式 〜防壁の完全喪失〜
第3話の屈辱的な戦いから数日。セイントレディ――神代麗子の心には、目に見えない「綻び」が広がっていた。完璧だと信じていたロイヤルブルーの結界を捲り上げられ、下劣な怪物どもに白い聖域を覗かれた記憶は、彼女の自尊心を内側から蝕んでいた。
その隙を、エクリプスが見逃すはずもなかった。
夜の帳が降りたY市の廃工場跡。霧が立ち込めるその場所に、新たな敵が姿を現す。
エクリプスの女幹部、ヒュノプス。
漆黒のドレスを纏い、手に持った香炉から紫色の煙を燻らせる彼女は、物理的な破壊ではなく、精神の深淵から獲物を仕留める魔術師だった。
「あら、可愛そうな聖女様。まだあの夜の冷たさが、その白い布地に残っているのではないかしら?」
霧の向こうから響くヒュノプスの艶めかしい声。
「誰……っ!? 出てきなさい!」
セイントレディは身構えたが、香炉から流れる甘い香りが、レオタードの僅かな隙間から彼女の肺へと滑り込む。
脳が痺れ、視界が歪む。163センチの肢体を支える強靭な筋力から、じわじわと力が抜けていく。
「あなたは自分を律することでしか、自分を保てない。でも、その規律こそがあなたを縛り、苦しめているのよ。……さあ、楽になりなさい。すべてを捧げて、真実の姿に戻るの」
ヒュノプスの瞳が怪しく光る。催眠の魔力。
麗子の意識は、深い泥の中に沈んでいくような感覚に囚われた。抗おうとする意志は、ヒュノプスの囁きによって「自分を解放したい」という倒錯した欲求へと書き換えられていく。
「……あ……、あ……」
麗子の手は、自らの肉体を万力のように締め上げているロイヤルブルーのレオタードの肩口に、ゆっくりと、しかし確実にかけられた。
あんなに苦労して身体をねじ込み、裾ゴムを「パチン」と弾いて装着した規律の証。それを、彼女は自らの指で、一枚の皮を剥ぐように引き下げ始めたのだ。
「そうよ……。重い鎧を捨て、私に献納しなさい」
ヒュノプスの命令に従い、レオタードがじりじりと、麗子の白い肌を露出させていく。
胸元がはだけ、豊かな乳房がその重みで形を変える。戦闘用のニップレスが夜の冷気に晒された瞬間、麗子の肉体は羞恥で微かに震えたが、指は止まらなかった。
ロイヤルブルーの生地が腰まで降り、腹部の白い肌が露わになる。
そこには、依然として「白いパンティ」と、その中央で鈍く光る「ブルークリスタル」が残されていた。パンストのウエストゴムが食い込む腰回り。
「……っ……」
麗子の瞳からは、戦士としての光が完全に失われていた。
彼女は自分の手で、腰に溜まったレオタードをさらに足元へと押し下げていく。強靭な弾性を誇った素材が、今はただの脱ぎ捨てられた抜け殻のように、彼女の足元に力なく崩れ落ちた。
「次は、その足枷を脱ぎなさい」
ヒュノプスの声は非情だった。
麗子は、パンストのウエスト部分に指をかける。ナチュラルな肌色のナイロンが、彼女の柔らかな指先によってじりじりと引き下げられる。
引き締まった太もも、膝、そして足首。
防御の第二層であったパンストが取り払われるたび、彼女を「セイントレディ」という記号に繋ぎ止めていた防壁が、一層ずつ消えていく。
そして最後に残されたのは、一点の曇りもない純白のフルバックパンティと、その中央に鎮座するクリスタルだけだった。
「……最後よ。あなたの誇りの核、その『白』を献上しなさい」
麗子の動きが、一瞬だけ止まった。深層心理に残る最後の抵抗が、最も神聖な空間を晒すことに悲鳴を上げている。
しかし、ヒュノプスの魔力が、その抵抗を無慈悲に踏みにじる。
「……あ……、ああっ……」
麗子は、自らの手でパンティのサイドに指をかけた。
163センチ、81-68-90。完璧なまでの曲線を持つその肢体が、一物も纏わぬ完全な無防備へと近づいていく。
彼女は震える手でパンティを押し下げ、自らの足首から抜き去った。
完全に、一物も纏わぬ姿となった神代麗子。
月明かりの下、30代の成熟した生身の肉体が、無残にも晒されていた。
かつてはロイヤルブルーの規律に守られ、誰の手も届かない高みにいた聖女。その彼女が今、敵であるヒュノプスの足元で、自らの装備一式――レオタード、ブーツ、パンスト、そして魂とも言える白いパンティとブルークリスタル――を、捧げ物として差し出していた。
「ふふ、見事な献納だわ。誇り高き戦士が、ただの震える肉の塊になった瞬間ね」
ヒュノプスは、床に落ちた麗子の装備を、勝利の戦利品として一本ずつ拾い上げる。
まだ麗子の体温が残り、彼女の形に馴染んだロイヤルブルーのレオタード。そして、神聖な空間を守っていたはずの白いパンティ。
これらはすべて敵の手に渡り、麗子の物理的なアイデンティティは完全に喪失した。
麗子は膝をつき、両腕で自分の肩を抱いて震えていた。
装備を失うということは、力を失うこと以上に、彼女の心を破壊していた。
規律という檻に守られていた彼女は、その檻を自ら解体したことで、外界からの悪意に直接晒される、名もなき「女」へと転落したのだ。
ヒュノプスは、拾い上げたレオタードを顔に近づけ、その香りを嗅ぐようにして冷たく笑った。
「この素材……まだ生きているわね。でも、すぐに死ぬことになるわ。もっと『巨大な暴力』によってね」
霧の中に消えていくヒュノプスの影。
後に残されたのは、何もかもを奪われ、冷たい廃工場の床で泣き崩れる裸の聖女だけだった。
物理的な防壁をすべて献納し、尊厳を完全に失った彼女に、さらなる絶望の儀式が待ち構えている。
それは、彼女が愛用した装備そのものが、怪物ゾルバによって「物理的に殺される」という、悪夢のような蹂躙であった。




