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ホッグ・ノーズ2  作者: ひろひさ


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4/5

引き金の代償

 扉を開けたのは制帽を目深に被り、顔を隠した男であった。腰に付けた黒革のホルスターから既に拳銃を引き抜いており、真っ直ぐ義人に向かって発砲する。装弾数5発。引き金を引く度に銃口からは火花と白煙が舞い、発砲音が署内に響き渡る。弾倉が時計回りに回転していた。


「梅竹さんッ!!」


 佳歩の声が義人の脳を揺さぶる。


 うっ…………。なんだ…………?


 飛んでいた意識が戻り、胴体にめり込んだ弾丸の刺すような鋭い痛みと共に損傷していた部位の再生が始まっていた。


「あぁ…………ッ」


 クソ痛てぇ…………。


 その呻き声に銃を構えたまま固まっていた警察官は拳銃を真下に落とし、両腕の内側からそれぞれ1本ずつ、刃渡り15センチはあるクナイを生成。柄頭には直径10ミリメートルのワイヤーが取り付けられている。


 あれがアイツの触腕か……!!


 得物が穴倉から這い出ようとする蛇のように顔を出す。そしてその刃先の狙いを義人に定めた。


 マズイッ……!!


 歯を食いしばり、無傷の右腕を伸ばして触腕を放つ。服が破れることなど気にする余裕は勿論なく、3本目、4本目と腕ほどの太さはある金属の触腕で男の胴を勢い良く殴り付けた。


 すると胴を捉えた2本が金属の衝突音を奏で、男を廊下まで吹き飛ばし、後方の壁へと縛り付ける。


 なんだッ!?


 拳銃であれば容易に弾く程度には強度がある鎧でも着ているのかと、この場にいた全員が直感的に感じ取っていた。


「皆さん。今の内に」


 落ち着いた声色で佳歩が三島らに声を掛ける。


「すぐに応援を呼ぶから」


「——はい……。お願いします……」


 肩に置かれた彼女の手が温かい。身を屈め、大人たちはもう一つの出入口から廊下へと向かう。


 よしっ……。


 気合を入れ直すと、貫通しなかった弾が体外へと排出される。鉛玉が床に落ちた。


 ようやく再生もし終わったか……。


 段々と再生速度が速くなっているのだが、義人はそれを実感できない。


 動かないな……。


 後頭部でも強打したのか、男は一向に動こうとしなかった。


 なに考えてんだ……?


 とにかく机が邪魔だと重い体をなんとか持ち上げ、目の前の机を雑にどかす。


「…………」


 さて、どう攻めるか……。


 署内が騒がしくなり、職員と市民の避難が始まったのだと理解する。


「————ッ!!」


 すると男は両腕を再び掲げ、2本の触腕を一気に伸ばす。これに義人は左腕から触腕を伸ばし、応戦。右手の触腕にも力を入れ、男を捉える壁がひび割れを引き起こした。


 お互い動けず、触腕だけが激しい攻防を描いている。


 落ち着け……。手数はこちらの方が多いッ!!


 しかし—―——。


「——ぐッ!!」


 左の脇腹を銀色の矢が掠め取っていく。気付いた時には矢が放たれ、避け切れなかった。


 そんなこともできんのかよッ!!


 制服の腹部分が破れ、ボウガンが飛び出している。


 器用なヤツだなッ!!


 触腕の操作速度を落とすことなく、新たな武器を生成。どんな能力なのか義人は思考を巡らした。


 飛び道具専門って訳でもあるまいし、そうなって来るとこのままここに留めて置くこともできなくなるぞ。


 マズイな……。義人は男の拘束までの手段を組み立て、警察官の恰好をした男、脇谷は少年抹殺までの作戦を練り上げる。


 どうする? どう動く?


 先に動いたのは脇谷であった。


 背中から杭打機のハンマーの様な物を6本撃ち出し、壁を破壊。そのまま倒れ込むと跳躍。背後の部屋に飛び込んだ。


 なっ……!!


 急ぎ後を追おうとするも足元に1本の矢が突き刺さる。姿は見えないが、穴の左側から見せ付けるように先程のボウガンが顔を出していた。


 ちょうど手元が見えないな……。


 ブラフを警戒し、右腕の触腕1本だけを渦巻き状にして即席の盾とする。残りは全て回収した。


 狙いが俺なら応援が来ようともここで仕留めようとするか? それともホッグ・ノーズの中身が知れた以上、いつでも仕留められるとここは一旦引くか?


 義人はようやく気が付いたが、顔がバレた以上、何が何でもここで脇谷を捕まえなければ平穏な未来は当分やって来ない。


 ここで逃がす訳にはいかないッ!!


 盾を構え、義人は走り出す。


 2発目が装填される様子はない。


 逃げたかッ!!


 しまった!! という考えが過ぎり、廊下に足を踏み入れたがそれは杞憂に終わる。待ち構えていた脇谷は右腕に先端の尖ったハンマーを装着し、壁にもう1つの穴を開け、飛び出した。その頭に制帽はなく、防犯カメラに映っていた黒い狼のマスクで顔を覆っている。


 絶対にここから逃がさねぇッ!!


 義人は盾を、脇谷はハンマーを互いに打ち出し、両者は激突。衝撃と共に鈍い金属音が人々の消えた署内に響き渡っていった。

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