第1話:ウルトラヒロインのお風呂そうじ
【ピポピポピポ……通信ログ受信】
宇宙清掃依頼 No.2399
宛先:お掃除フィッシュ様
【依頼元】ウルトラヒロイン・アステリナ様(惑星グラディア)
【内容】「自宅バスルームの緊急清掃希望」
【備考】「戦闘後のぬめりが取れない」「変なモノが排水溝に詰まっている」「あとちょっと…恥ずかしい」
緊急度:★★★☆☆(見た目重視タイプ)
心のモヤ度:68%(自己イメージとのギャップ)
『宇宙のお掃除屋さん』
ススノヴァ号の船内、今日も静かなぬるぬる音。
にゅる……。ひとつ、大きなヒレが動いた。
「……よごれてる」
フィッシュがぽつりと呟く。
コロコがスピーカーから明るく話す。
「おっ、やる気スイッチ入りましたね。じゃあ現場、行きましょか~。
ナビ起動、ススノヴァ号発進。次の現場は惑星グラディア、ウルトラヒロインの豪邸です!」
掃除機型の宇宙船が「ぶぉおおお」と、静かに星々を横切っていく。
【場面:惑星グラディア・アステリナ邸】
「……っ何、このぬるぬる!? 排水溝から触手出てない!?」
「もうヤダ……キレイ好きなイメージで売ってるのに……!」
ドアをピンポーンすると、超絶美人なヒロイン・アステリナが顔を出す。
「う……え? 来たの、これ……?」
そこに立っていたのは、つるんとした肌、小さな瞳、ぬめった背ビレの地味生命体。
アステリナ、硬直。
「……これ、誰?」
「依頼を受けてやってきた、銀河の清掃士――お掃除フィッシュさんでございます」
コロコが涼しく通訳。
フィッシュ、無言で風呂場へ向かう。
「ちょ、勝手に入らな――」
「……よごれてる」
その瞬間、ヒレが光り、ススノヴァ号から飛び出したクリーナーボールたちが一斉に出動!
「シュワ!」
「ピュン!」
「ぶるるん!」
泡が飛び、吸引ノズルが伸び、タイルの目地の奥までぬるぬるが吸い取られていく――
【10分後】
「え、まって。え、なにこの輝き……」
バスタブは鏡のようにピカピカ、排水口には「モヤモヤしてた戦闘の記憶」が固まって詰まっていた。
フィッシュはそれをそっとすくい取り、泡で包んで消していく。
アステリナ、呆然。
「……あんた、すごいのね」
フィッシュ、くるりと背中を向けながら一言。
「……きれいになった」
【エピローグ】
「ねぇ、またお願いしても……いい?」
「……ぬめりは定期的に出るから……その、ほら。ね?」
口ごもるアステリナに、フィッシュは小さく――ほんの少し、口角を上げた。
「……おちつけ」
コロコのナレーション:
「次の依頼は……惑星アートスの、変人怪人からです。
旦那様、今度は“心のゴミ”の方ですってよ。ふふふ」
次のお掃除先、いきましょか?
…いこうか