ついに村だ
目の前にいる人は10円はげのあるおっさんで、歴戦の戦士ぽい顔と格好をしている。まだこちらには気づいていないようだ。俺たちは小さな声で作戦会議を始めた。
「どうする。声かけるか?」
「そうするに決まってるじゃろ」
「……で、でも」
(うまく話せないんだよなー俺。)
「あー、でも我は人間を驚かしてしまうかもな。まあいい、早く行けっ」
そう言ってスーが俺を押す。ということで俺とおっさんは見つめ合うことになった。
「……」
「……」
お互い何も言わずに時間が過ぎていく。
「……誰だ」
先にしゃがれた声のおっさんが声を出した。
「えーとっ、わたくしぃ、あのこの辺を……(ボソボソ)」
「聞こえん。」
「……スーこっちに来て!」
(無理だ無理無理。こんな怖いおっさんと話せるわけがない!スー、助けてー)
「なんじゃ、この男にびびったのか。お主」
(そうだよ!)
おっさんはスーを見て目を見開く。
(スーを見て驚くのか……。使い魔を持っていることに驚いているのか、ドラゴンであるスー自体に驚いているのか。)
「あのっ!」
人前で出せる最大の声量で声をかけ、こちらを見たおっさんに続けて声を出す。
「このドラゴンは俺の使い魔なんです。(声力尽きる)……えっとー、だからー(声復活)殺さないでほしいです。あと、俺たち町を探していてよければ案内してくれませんか。」
「わかった……。森に子ども1人では危ないだろう。ついてこい。」
「えっ。ありがとうご……ざい、ますぅ」
(……やべ。名乗るタイミング見失った)
――
歩いている俺たちは互いに無言を貫いていた。
「……」
「そういえば坊主。なぜこんなところを1人出歩いているんだ。」
(あっ、これ怪しまれているやつ……)
「えー実は、俺あのへんの遠くの町で生まれて、なんというかっ……そう!親が病気で亡くなっちゃったんですよねー(早口)。だから今居場所を求めて旅して、るん、で……ス。」
「その町で面倒を見てくれる人はいなかったのか。」
「…………。俺いじめられていたんです。」
「そうか。大変だったな。」
「……はい。」
男たちはまた歩き始める。
「なぁ、なんで正直に勇者だと名乗らなかったんじゃ?(ボソ」
「こんなステータスで勇者名乗れるわけねーだろ!(ボソ」
――
「……着いた。ここがノロ村だ。」
そこには想像よりも小さいが村があった。木や石などで作られた家が何軒か並び、畑や公園のような場所もあった。そして特徴的なのは俺たちの右側に広がる大きな茶畑だ。その大きさは村の敷地の半分を占めるほどで誰が見てもこの村の主産業が茶であるのがわかる。
「これが……」
「さあ坊主。本当のことを言え。なぜ1人で旅をする。」
「(ギクッ)……」
(俺はなんて答えるべきなんだろう)