初めての魔法
川に向かった俺は捕まえる方法を考えていなかったことに気づく。
(魚ってどう捕まえればいいんだ?何も考えてなかったー!ぬめぬめしてるから手では捕まえれないし、そもそも杖がないから火を出せないし、……無理じゃね?)
とぼとぼと帰ろうとしたときにある考えに思い立つ。
(スーは魔石で杖をつくるって言ってたよな?なら、魔石だけでも使えないか?……やってみるか)
一応取っておいた緑うさぎの魔石をポケットから取り出しそれっぽく唱えてみる。
「女神に愛されし我の名の下、火を司る精霊よ根源せよ。万物を燃やし世界を灰に覆う火魔法よ今ここに現れよ。GODファイアー」
周りを照らす小さな火が現れ、川に落ちてった。
大層な詠唱とは程遠いが確かに俺は魔法らしい魔法を使った。感動で目を潤わせた俺はさらに奇跡が起こったことを知る。川に火が落ち、驚いたのか魚が1匹足元に飛んできた。
「まじかよ……」
早速スーに報告しようと魚を持ち歩き始めたときそれは聞こえた。地響きのように辺りを揺らした咆哮。近くにいたスライムも急いでどこかに向かう。昼の一番暑い頃遠目から見た狼を思い出す。
(あんなのとは戦えない。聞いた感じ、そこまで近くはなさそうだから早くスーと合流しよう。)
――
「スー、聞こえたか。あの咆哮。スライムの様子を見るに相当危険な魔物らしい。明日からは咆哮の聞こえた向きとは逆に向かおう。」
しかしスーはしばらくこちらを見なかった。お互い黙り、スーは意を決したように言った。
「……そうはいかないみたいじゃ。……ステータスを見てみろ。クエストが来ている。」
「どういうこと?……ステータスオープン」
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鳥川咲 Lv3(後25) Ex15
[ステータス]_装備_クエスト
HP7/10
MP4/10
攻撃力 38
魔法攻撃力8
素早さ13
※
……
[固有能力]
•勇者※
……
[スキル]
•明かりLv2※ •水泳Lv3※ •妄想Lv2※ •鑑定Lv2※
……
[魔法]
•火魔法Lv1※
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「装備の隣にクエストっていうのができてる……」
嫌な予感があたってほしくないと思いつつクエストを押す。
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鳥川咲 Lv3(後25) Ex15
ステータス_装備_[クエスト]
「森の主を倒す」推奨Lv10
サイシヨーの森の主と呼ばれるセカンド狼を倒してください。
(成功報酬)
旅の役に立つスキルを3つの中からえらべます。
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「ふざ…けんなぁ」
絶望とはこういうことか。俺は今日深く理解した。