1ー3
どのくらいここにいるのだろうか。
何時間経ったのか、分からないけれど早くここから出たい。
ゴロゴロ、ガシャンと物凄い音が近くからした。
ルーナは、危険を感じ必死に入り口を開けようとする。
やはりなかなか開かず、暗闇の中で道具を探すと、園芸用の小さいスコップを見つける。
ドンドンと打ち付けていく。
もう少しで開こうとした瞬間、ドカンと大きな音がする。
すると、突然物置小屋にまで来て、何かが覆い被さりルーナの意識は、そこで途切れた。
「い、痛い」
頭を押えながら目を覚ます。
真っ暗の中で手を前にかざすとすぐに何か触れる。
そして、木箱のようなものに閉じ込められていることに気がつく。
「誰か、誰か開けて、助けて」
ルーナは、大きな声で精一杯叫ぶ。
何度も叫ぶが、誰も気付いてくれない。
もう叫びすぎて声が出ない。
「たすけ……………て」
ルーナは、最後の力を振り絞り木箱を殴る。
手が真っ赤になり、血も出ているのが分かる。
足元に何かが触れるのを感じ、手繰り寄せるとあのスコップだった。
ルーナは、何度も何度もスコップで先端を打ち付けると小さな穴ができ、徐々に穴は大きくなっていきます。
それからは、簡単に崩れていき木箱から出ることができたのです。
外は夜で、月の光だけしかありません。
ルーナは、驚き辺りを見回すと聖堂は崩れ本館と別館にまで広がり、一部燃えたような後がありました。
「う、嘘でしょ」
言葉になりません。
何もかも失くなってしまったのです。
私の存在なんて伝えられないまま、皆は避難したのだろう。
ルーナが、外に出るまでに三日掛かったのです。
幸いにも炎がこちらとは反対の方向に向いて、煙にも木箱であまり吸わずにすんだ。
教会の周りには建物がなく、ポツリと教会だけが佇んでいます。
町の病院まで、歩くと二時間ほどかかります。
飲まず、食わずのルーナにそんな力は残っていません。
でも、ここにいても何もなりません。
でもルーナは、一つだけ探したいものがあり、瓦礫の中に足を踏み入れた。
日記帳だけは、どうしても探したかったのです。
きっと見つかるはずだ。
そして、くすんだ赤色が瓦礫の中から見え、拾い上げ中を確認するとルーナの日記帳であった。
(よかった)
ルーナは、日記帳を持って教会を後にする。
生まれてから今まで過ごしてきた場所にお別れを告げる。
さよなら、私の過ごした場所。
ルーナは、ゴツゴツとした道なき道を歩いていく。
周りには、草原が広がるばかりで人を見つけることができない。
ずっと変わらない景色が続く。
私はどれくらい歩いたのだろうか。
もう足が言うことを聞いてくれない。
段々、空の色が明るくなっていくのが分かる。
すると、遠くから馬車の足音が聞こえてる。
(あ、誰か通りかかる)
ルーナは、気付いてもらうために手を振る。
馬車が止まると、誰かが降りてきてくれた。
田舎町には、居ないようなキレイな格好をしている。
(ああ、もうダメだ。意識が……)
「た、たすけ………」
ルーナは、その人に体を預けるようにして倒れてしまいました。
受け止められた時、がっしりとしていたので男性なのだろうかと、薄れ行く記憶の中で思ったのでした。
次に目を覚ました時には、白い天井が目の前に広がっていた。
フカフカのベッドに横になっていた。
体を起こそうと、力を込めると所々痛みを感じる。
手には、包帯が巻かれていたり、傷の手当てがされている。
左の目には、眼帯がされている。
扉が突然開くと、男性が入ってくる。
慌てた様子でベッドまで来る。
「安静にしていないと……」
「はい」
この人が、馬車から降りて私のことを助けてくれた人なのだろうか。
「あ、あの」
ルーナは、思いきって質問をする。
「あなたが、私を救ってくれたのですか?」
「ああ、そうだよ」
男性は、そう答えた。
「あの、救ってくださり、ありがとうございました」
「良いんだよ。大したことはしていないよ」
改めて男性を見てみると、三十代後半くらいにみえ、顔が細長く、少しふっくらとした体型をしていて、髪は銀色であった。
「あの、もう一つ聞いても良いですか?」
「何が知りたいんだい」
「ここって、どこなのかと思いまして」
「ここは、僕が泊まっているペンションだよ」
「ペンション」
「最初は、病院に連れていこうとしたんだけど、君が嫌がってここに連れてきて医者に見てもらったんだ」
「そうだったんですね。ご迷惑をお掛けしました」
「気にしなくて良いんだよ」
(何てこの人は、優しいのだろう)
夜になり、二人は改めて自己紹介をする。
男性の名前は、シャルル・アルジェント。
この町からずっと南にある水の都フルスという場所に住んでいる。
これが、男性が教えてくれたことだ。
ルーナも、教会からやってきてことを伝えた。
まだ自分のことを詳しく話す勇気がない。
あとは呼び名を決めた。
ルーナは、アルジェント様と呼び、アルジェントは、ルーナと呼ぶことになった。
それから数日ルーナは、ケガを治すため安静にして過ごしていました。
アルジェント様は、こんな私に食事を毎回持ってきてくれる。
温かい食事に口に出きるそれだけで十分なのだ。
「美味しい」
スープとパン。
あの頃は、いつも冷めたスープに半分の残りのパンだった。
あれから一週間ほどが経ったある日。
「随分ケガもよくなったね。ねえ、ルーナ、君に一つ提案があるんだけど聞いてくれる?」
「はい」
「ルーナは、僕と一緒に暮らさない?」
「え…」
ルーナは、言葉に詰まった。
だってそんな言葉を言われたのは、初めてだから。
「ホントに?」
「ああ」
ルーナは、突然椅子から立ち上がり、アルジェントの前までいく。
「アルジェント様、これを見てもそう言えますか?」
やろうとした矢先、躊躇してしまいそうになる。
止めてしまいたくなる。
でも……。
ルーナは、眼帯を勢いよく外し、ゆっくりと両目を開けると、ルーナの秘密が明かされる。
青色の瞳。
今まで何度も言われた言葉を聞くと思っていた。
でも、アルジェントの口から出た言葉は違った。
「ルーナ、君の瞳はキレイな色をしているね」
まさか、こんな言葉を聞く日がくるなんて思わなかった。
ルーナは、自分でも気づかないうち泣いていることに気づいた。
アルジェントが驚いてあたふたしている。
「私、一緒に暮らしたいです」
ルーナは涙を溢しながら、アルジェントに伝えたのでした。
このあと、泣き止むまでそばにいてくれたのでした。




