7ー2
ここは、ミルト地方にあるリゾート地。
ペンションや別荘といった建物が多く点在している。
そして、ルーナにとって初めての旅行がはじまります。
長いこと馬車で移動したため、部屋で休むことにしたのです。
ソファに座り、窓から見える外の景色を見ていた。
この建物の周りには、木々が生い茂っている。
その木々を抜けると、湖が見えてくるのです。
(後で湖を見に散歩に行ってみようかな)
いつもとは違う部屋で、ルーナの気持ちは、舞い上がっていました。
休憩を終えたルーナは、一階に下りていきます。
一階に下りると、二人がリビングにあるソファに座っています。
シャルルが、ルーナの気配に気がつく。
「ルーナ。もう大丈夫?」
「はい。十分に休むことが出来ました」
「そうか」
ルーナは、笑顔でシャルルに話す。
「シャルル様、お願いがあります。湖を見に行ってみたいです」
「行こう」
シャルルは、ルーナの提案に答えてくれる。
三人は準備を済ませると、湖に続く森の中を歩いていきます。
「ルーナ様。昨晩の雨でぬかるんでいるため、足元にはお気をつけくださいね」
「気を付けて歩きますね。エドモンドさん」
エドモンドの心遣いを受け、ルーナはゆっくりと慎重に歩いていきます。
湖に到着した三人は、澄んだ美しい湖を眺めます。
深い青色をしていて、ずっと眺めていたら、湖の底まで吸い込まれそうな感覚になる。
ルーナは、二人に質問をする。
「湖には、生き物などは生息しているのでしょうか?」
「どうだろう。少しは生息していると思うよ」
「見つけられるかもしれませんね」
旅行のことを知っていたら、調べてきていたのにと、ルーナは思ったのでした。
「あっち側を見てきますね」
ルーナは、二人に行き先を伝えると、少し遠い所まで歩いていく。
すると、水辺の辺りで小さな生物を見つける。
大きさは、目を凝らして見ないといけないほどの小ささであった。
「小さい」
こんなに小さくても一生懸命に生きているのだと感じた。
ルーナは、エドモンドが持参した日傘を差している。
涼しいとはいえ、ずっと日に当たり続けていると流石に暑くなってしまう。
普段使わない日傘を差していると、どこかの貴族のお嬢様になった気分になる。
一時間ほど湖で過ごし、別荘に戻った。
帰り道の森の中。
ルーナは、シャルルとエドモンドに、挟まれながら歩いていた。
一定の間隔を取りながら、前にシャルル、後ろにエドモンドがいる。
突然、霧が濃くなっていく。
すぐ目の前も見えないほどの濃さだった。
「見つけた」
耳元で、囁かれる聞き覚えのある声。
目の前で、黒いシルエットがふわりと浮かび上がると消えていった。
一瞬の出来事だった。
霧が少しずつ薄くなっていく。
「ルーナ」
すぐ近くにシャルルが立っていた。
さっきまで見えなかったはずなのに。
「シャルル様」
ルーナは、シャルルのもとまで走った。
短い距離のはずなのに、時間がゆっくりと進んでいるようだった。
シャルルの体を強く抱き締めた。
「ルーナ?」
シャルルは、ルーナの体に手を回す。
「い、いきなり、見えなくなったから」
今にも泣きそうな声でルーナは話す。
「大丈夫。ここにいるよ」
数十秒後、エドモンドが駆け付ける。
「ルーナ様」
心配そうにルーナのことをみている。
ルーナは、シャルルを抱き締めるをやめる。
「エドモンドさん」
「お怪我はございませんか?」
「ありません。エドモンドさんは?」
「私もございません」
三人は、急がずゆっくりと、別荘に帰りました。
水溜まりに入っていたようで、足が汚れていました。
ルーナは、タライに張ったお湯で洗い流します。
ルーナは一人考えていた。
さっきのことをシャルル様に言うべきなのだろうか?
せっかくの旅行なのに、話してしまえば暗い雰囲気になってしまう。
始まったばかりなのに。
残像のように脳裏にあのシルエットがこびりついている。
屋敷に帰ってからでも遅くはない。
今は、ただ楽しい時間を過ごしたい。




