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異世界最強騎士  作者: 野うさぎ
第1章 幼少期
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第18話 敵に回しちゃいけない人

「岸田君はどんなに強くても、あの女子グループなんかに勝てないって。


力で戦う男同士の喧嘩ならいかもしれない。


だけど、誹謗中傷とか、

些細ないじわるだったら?


これも、暴力で解決するって言うの?」


 怖いから、身を引いてしまう。

 私はいつもそうだった。


 戦うことなんて、好きになれない。

 妬まれるくらいなら、いい学校に行って、自分が中間くらいになれればいいとくらい考えている。


 人にどう思われるのか気になっている。

 そればかりを気にして生きている私には、桃木ちゃんの発言は理解しがたい。


「俺は、誰かの意見に左右される人生なんて、嫌。


自分らしく生きて、

好きな人のそばにいて、

それを気に入らないっていうなら、堂々と胸をはればいい。


俺は、岸田君が好き。

今、ここで素直になれなかったら、どこかで後悔する」


「素直になった方が、後悔するよ・・・」


「後悔するってことは、自分に素直になれていないってことじゃないの?」


「え?」


 後悔しているということは、素直になれていないってどういう意味だろう?


「赤音ちゃんは、勘違いしている。


素直になるっていうのは、何でも思った通りに行動することじゃない。


自分の気持ちに耳を傾けられるということなんだ。


自分で自分の気持ちを誤魔化して、

他人の意見ばかりに左右されて、

残るのは後悔だけ。


この気持ちは、届かないかもしれない。


だけど、好きな人がいることは何も間違いなんかじゃない。


それを否定する権限はどこにもない」


 やっぱり、桃木ちゃんは気づいているのかもしれない。


 私が私に素直になれていないこと。


 面倒なことや、争い事はいつも避けていた。

 

 そんなことは、自覚はある。

 あっても、どうしたらいいの?


 私に桃木ちゃんと同じ生き方なんて、できるわけない!


「桃木ちゃんは、すごい人だな。


だけど、恋なんて選べる立場にいるのも、

選ばれるの方も、

辛いに決まっている。


誰か傷つく人がいるってことになる。


私、傷つくのも、

傷つけられるのもこわい・・・」


 泣くことをこられながら、語る。

 

 桃木ちゃんの眼差しを見ると、彼女は考え方を変える気がないんだなと伝わってくる。


 

 次の日から、私は岸田君と距離をとるように意識するようになっても、

 桃木ちゃんは変わらず、彼のそばにいる。


 こうして、チアちゃんとそのグループは桃木ちゃんを目の敵にした。


「あいつ、何なの?


幼馴染ということを理由にしている」


「私なんて、小学校入学した時から同じクラスメイトだったし、

転校生のくせに」


 私は、親友がどんな目にあおうと助けることなんてできないと思う。

 今は陰口だけだけど、これから先はどうなるのかわからない。

 

 ここで、チアちゃんとそのグループに話しかけられた。


「あんたはどう思う?」


 チアちゃんの鋭い目つきと、その怒り狂ったような声に、私は動揺している。


「どう思うって・・・?」


 おそるおそる聞いてみる。

 知りたくないのに、口が勝手に動いてしまう。

 やっぱり、恐怖には勝てない。


「中央桃木って、腹たたない?」


「腹立つってことないかな?」


 この返事が正解かどうかはわからない。

 とにかく、地雷を踏むようなことをしたくない。


 結局、私は自分がかわいいのかも。

 親友をかばうことよりも、どうすれば自分が助かるのかばかり優先している。


 私は、一体どうすればいいのだろうか・・・?


「岸田君をとられてしまったの。


いつも、一緒だったのに、

最近は距離ととっているみたいね。


中央さんが略奪してしまったのかしら?」


 私はあわてて答えた。

 私までもが、恋のライバルになりたくない。


「さあ、どうだろうね。


私は岸田君とそりが合わないから、離れただけ」


「そうなんだあ。


岸田君とか、

中央さんのことも、

何か知っていることがあったら教えてね」


 どういうわけだが、チアちゃんはニコリと笑っていた。

 どうして、こうなったの?


「例えば、中央さんの弱みとか」


 その言葉を聞いたとたん、私はぞっとした。

 そんなこと、知っていたとしても答えられるわけがない。


「さあ。


なんだろうね。


よくわかんないや」


「かばってるの?」


「かばってなんてない」


「ふうん、まあいわ。


とにかく、中央さんの味方をするようなら、

あんたも敵とみなすから」


 私はチアちゃんがこわくて、桃木ちゃんと距離をとるようになっていった。


 友情なんて、些細なもので壊れていくと実感した。

 何やっているんだろう?

 これは、完全なる裏切りとしか言いようがない。


 集団で机に落書きされたり、

 上履きを隠されたりしている桃木ちゃんを見て、

 私も辛くなる。


 やり返す桃木ちゃんに、チアちゃんとそのグループは、

 どこからか、カッターナイフやライターを向けて、

 攻撃し、桃木ちゃんは倒れて動かなくなった。


「キャー」


「人殺しだ!」


 同級生達は、次々に騒いだ。


 桃木ちゃんは救急車に運ばれて、最後は亡くなったという話を聞いた。


 私の学校で、殺人事件があったという噂は広まり、行きづらくなった。


 私はずっと家にいた。

 伯父さんと、その奥さんは心配をしているのはわかっていた。


「あの娘、どうしたのかしら?」


「今は、そっとしといてあげよう。


あの現場を見たら、誰でも辛くなる」


 伯父さんが、私の部屋にノックしてから入ってきた。


「赤音に話しておきたいことがあるんだ」


 そうか。

 多分、不登校になっているから、そのことについてどうするのか話したいってことなんだ。

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