6.邪魔しても問題ないよね?
本日2話目の投稿です!深夜にもう1話投稿します!!
《side明里》
ふわふわと無数の光の球が辺りを漂う。そして、私の周りには白い服を着て呪文を唱える人たち。ある意味幻想的な光景とも言える。
これは、私を生け贄に捧げるための儀式によって生み出された光景。
「……さぁ。明里。その命を刺しだし、封印の糧となりな」
当主様からそんな声がかけられる。
私はその言葉を聞いて自分の手元に視線を落とした。そこにあるのは、光を反射し輝く1つの短剣。これを私の胸に突き刺すことで私の命が封印に使われて、儀式が完了となる。
「早く」
当主様から急かされる。けど、なかなか簡単には短剣を刺せない。
私の手を止めるのは、1人の男の子が見せてくれた輝かしい毎日。
ここまで来ても思ってしまうの。もう1度あの状況に戻れたら良いのになって。
「早く!」
当主様は怒気をはらんだ声で言う。その声からは、重い物を感じさせた。この私という生け贄がいなければ、多くの命が犠牲になるとでも言うように。
「早くっ!!」
更にもう1度追加で怒鳴られ、私が覚悟を決めてしまいそうになったところで、
「ご当主様!大変です!!」
誰かが儀式に乱入してきた。周囲の呪文を唱えていた人たちからは、心が乱れてしまったとその人へ鋭い視線が飛ぶ。当主様も、
「何をしているんだい!今は儀式中だよ!」
と、怒鳴ったんだけど、
「それどころではありません!本当に緊急なのです!会長がやってきていて、今すぐ対応しないなら出資を取りやめるとまで!」
「は、はぁ!?なんだって!?そこまでの用事なのかい。……ちっ。儀式はいったん中止だよ。すぐに話を聞いてくるから再開の準備を」
「ああ。その必要は無いよ」
当主様の言葉が遮られる。そうして部屋に入ってきたのは、数人の大人と、
「目覚君!?」
「やっほぉ明里ちゃん。数日ぶりだね」
いつも通りニコニコと笑みを浮かべている目覚君。でも、
「なんで、ここに?」
《目覚視点》
明里ちゃんが連れ去られてから。僕はすぐに数人の知り合いに連絡を取った。神道家という家の者が、暴言を吐いたあげく僕のことを殴った、と。そうしたらあっという間に何人かから返信が帰ってきて、対応をするという返事が。
そして今、
「なんで、ここに?」
困惑した様子の明里ちゃん。僕がここまで来れるのは不思議だよね。
でも、これを説明するのは僕ではなく、
「その質問には私がお答えしましょう。……お嬢さんは初めまして。他の方も初めての方がいるかもしれませんね。私はこの神道家へ出資をさせて頂いている赤城グループの会長、赤城連夜と申します」
隣にいた赤城が微笑みながら挨拶した。でも、その目は笑ってない。何せ、僕って言う赤城グループの大株主が隣にいるわけだからね。こういう問題に巻き込まれたときの為に、大企業の株は大量に保有してるんだよ。
「そしてこの方は、我がグループ及びこの神道家へ出資を行なっている3グループの株主、小川目覚様です。……なんでも我がグループ及び他2グループの株主であるこの方に、この家の者が暴言を吐いたあげく暴行を行なったという話ではありませんか。事情によっては株主様の機嫌を取るため、すぐにでもここへの出資を終了させ、裁判を行なわなければなりません。……ご事情の説明をお願いします」
「「「…………」」」
赤城の言葉に、皆絶句してる。まさかそんなことになってるとは思ってなかったていう顔だね。気持ちはよく分かるよ。それと、明里ちゃんは僕がそんなに凄い人だって分かってなかったって言う驚きもあるかもしれないね。
「もちろん証拠となる映像もありますから、そちらの映像を提示した後での協議でも構いませんよ。ただ、すぐにでも説明頂いた方があなたたちの身のためかと」
証拠の映像は僕が撮っておいたよ。車が来たときにすぐスマホで撮影をしておいたからね。
「そ、そうですね。すぐに確認を取ります……おい!どういう事だい!そんな報告は受けていないよ!」
怒鳴るおばあさん。この人は確か、神道家の当主の人だったはずだね。ゲームでも何回か出てきたから見覚えがあるよ。
そんなおばあさんの視線の先にいるのは、
「ひっ!?し、知らねぇ!俺は何も知らねぇよ!」
怯えた様子の男の人。僕のことを殴ってきた張本人だね。今すぐにでも知り合いに袋叩きにしてもらいたいけど、ここは我慢。重要な交渉のカードなんだから。
ここは更にこの家を追い詰めるため、
「……ふぅ~ん。知らないねぇ。この家の人は、殴った相手の事なんて覚えてないくらい頻繁に人へ暴行を行なってるのかな?そんな危ない組織とはすぐにでも手を切りたいんだけど」
「ち、違うんです!そんな一般人へ暴力を振るうことなど、決してございません!!……言い訳してるんじゃないよ!さっさとしゃべりな!!」
僕が笑顔で脅すと、更におばあさんは焦って怒鳴る。男の人の顔が、面白いくらい真っ青になってるね。でも、当然手加減なんてしないよ。僕は殴られてるわけだから。
「その人が話をしないなら、それはそれで良いんだよ。それよりも君たちは、その人がやったことに対してどういった対応をするのかな?そして、組織としてどう責任を取るつもりなのかな?」
「そ、それは……」
矛先を男の人ではなく完全におばあさん、というより神道家へ向ける。おばあさんも男の人と同じくらい顔を青くしてるねぇ。まだまだ行くから、簡単には解決させないよ。
「あのね。僕は君たちの組織が不透明すぎると考えてるんだよ。今まで赤城のことを信用して出資には口を挟まなかったけど、ここまでされたら流石にやらないわけにもいかないの。分かるよね?まず、君たち普段何してるの?出資を沢山受けてるけど、一体何に使ってるわけ?ちゃんとお金の使い道を細かく記載した書類を出してくれないかな?」
神道家は自然発生する化け物(細かい設定もあったはずだけど、そこまでゲームのことは覚えてない)を退治している。でも、それを素直に言ったところで誰も信じない。それに、そういうことは基本的に機密だから、業務内容を明かすわけにもいかない。
ただ、今回はそこが実に狙いやすかったわけだよ。この神道家というのを攻撃するにおいて。
「そ、それは、その…………あ、赤城様。あなたからも説得をお願いします」
おばあさんは言いよどむ。そして助けを求めたのが赤城。
僕が信用してるって言ったから縋ったんだろうけど、赤城は当然難しい顔をして、
「私も先代の父からここには出資し続けるよう言われてますし、必要性も教わっています。ですので私個人としては出資をやめるつもりはありません」
「それなら!」
「しかし!……しかし、上がこう言ってるのなら私にはどうすることも出来ないのですよ。それに、私もここが不透明なのは気にしているんです。本当に役割通りに動いているのか。そして、本当にこれだけの額を出資する必要があるのか。正直に言いまして、出資額は1割ほどに抑えて良いのではないかと何度か検討しているのですよ」
「そんな!?」
おばあさんは目を見開いて驚く。赤城が出資額を減少させるって考えてたことに驚いてるみたいだね。でも、当然の考えだと僕は思うんだけど。
逆に父親からの言葉だけで信じ続けられる赤城が凄いよ。僕には無理だね。
「私とて父の言いつけがありますから、今までは思いとどまっていたのですよ。しかし、そんなときに今回の暴力沙汰です。私には内部腐敗しているようにしか思えませんね。……今回の事案へ誠意を持って対応して頂けなければ、私は父の言いつけを破る事になってしまうかもしれません。是非ともそうならないよう、あなた方にはきちんとした対応を願っております」
「……はい」
おばあさんは力なく頷く。今頃あの頭の中では、どう対応すべきなのかと悩んでいるのかもしれないね。
それなら、僕はもっと悩ませてあげよう。まだ攻めるポイントはあるんだから。
「で、また僕から質問なんだけど、明里ちゃんのあの小刀は何かな?ここは料理をするにしても不適切な場所だけど……まるで、自殺でもしそうな握り方だよね」
「っ!?こ、これは明里がおかしくなってしまって……そ、そう!気が動転してしまっていたのです!」
「ふぅ~ん」
あくまでも自分たちは関係ないと言い張るみたい。
それなら、
「調べたところによると、君たち1度も保護してから明里ちゃんに医療的検査を受けさせていないみたいだね。それに、学校にも行かせていない。……これは保護者としての義務を怠っていると言えるんじゃないかな?僕が保護している間に検査を受けさせたら、明里ちゃんには軽い精神疾患があったんだけど?」
「「「えっ!?」」」
おばあさんも含めた家の人たちが驚いている。明里ちゃんも驚いてるね。
検査を受けさせたのが数日前だったから、検査結果が届く前に連れ去られちゃったんだよね。明里ちゃんも、自分が精神疾患だったなんてビックリだろうなぁ。
「自殺しそうなのも君たちに責任があるんじゃないの?というか君たちに責任があるとしか思えないから、明里ちゃんは暫く僕が保護するよ。良いね?」
「し、しかし!」
「何?病院にも学校にも連れて行ってないことに、何か言い訳でもあるの?本人が拒否したとでも言うつもり?というか、君たちが保護者だというのならまずその証拠を出して貰える?ちゃんとそういう書類もあるんだよね?」
「うっ!……わ、分かりました。明里のこと、お願いします」
明里ちゃんの保護者であることを証明する手段がないから、ものすごく悔しそうにおばあさんは言う。生け贄にする存在がいなくなっちゃったんだからね。
逆に、明里ちゃんは凄い嬉しそうにしている。嬉しいのは分かるけど、笑顔で小刀を振り回すのはやめて欲しいね。危ないからやめなさい。
「……まあ、何かに人を使うなら、僕に暴行を加えた人がいたよね?」
「「なっ!?」」
僕は生け贄の代替として、僕を殴った男の人を提案する。当人もおばあさんも、驚いて固まってるね。
そんな2人の様子に僕は笑みを深めて、
「僕を殴ったんだから報いは受けてもらうよ。……それ相応の報いを、ね?」
「……は、はい」
おばあさんは力なく頷く。ここで受け入れる以外の選択肢は残されてないから、当然だよね。
ただ、当たり前だけど本人が受け入れられるはずがない。他の人を生け贄にすることは躊躇しなくても、自分に被害が及ぶのは嫌だよね。だから、
「ふ、ふざけるなぁぁぁぁ!!!!!!」