12.袖の下も問題無いよね?
「……ただいまぁ」
やっとたどり着いた。
ヘリからパラシュート降下した後、予想通りと言うべきかヘリは途中で打ち落とされた。幸いなことにヘリは無人機だったから死傷者はいなかったんだけど、ここで僕たちがヘリに乗っていなかったことが向こうにバレて。全体的に都市が封鎖されて帰ろうにもなかなか帰れなかったんだよね。電車もバスも僕の自宅の方面に行くのが止まってたし。
最終的に自転車で帰る羽目になったよ。かなり距離があったから……疲れた。
「おかえりいいいいいぃぃぃぃぃ!!!!!!!」
「おかえりなさああああぁぁぁぁぁぁい!!!!!!!」
僕が疲れ切った体を家に入れた瞬間、大声と共にドタドタと近づいてくる足音が聞こえてきた。
そして直後、
「ぐふっ!?」
僕は腹部に強烈な衝撃を感じ、それでも抜け出すことすらできずに拘束される。
「しょ,衝撃的なお出迎えだね」
「あっ。ご、ごめんね!目覚君!!」
「ああ!すみません!目覚君!大丈夫ですか!?」
タックルしてきた2人、明里ちゃんと葵南ちゃんが、僕の様子を見て慌てて謝る。術は使ってなかったみたいだけど、身体能力もそこそこ高い2人からの突撃は生身で受けるとかなり堪えるものがあるよ。
きっついね。
そんな状況になっているボクたちを笑いながら、
「目覚君もそれくらい受け入れてあげてね。2人ともかなり心配してたんだから」
「そうだよぉ~。もう全然落ち着かなくて、探しに行こうとするのを止めるのが大変だったんだからぁ~」
「ここに引っ越してきて、今日が1番疲れたかもしれないっす」
飛びついてこなかった風花ちゃん美春ちゃん宿利ちゃんの3人が声をかけてきた。何か凄い苦労をかけたみたいだね。
宿利ちゃんも僕ほどではないけど疲れ切った表情をしてるよ。後で労ってあげよう。
「いやぁ~。本当に大変だったよ。流石に死ぬとは思わなかったけど、大けがするかと思ったね~」
「……そういう台詞を笑顔で言われると反応に困るんだけど」
「そうですよ。反応に困るんですからちょっとその会社潰してきて良いですか?」
「だめ」
どういう理論なんだろうね。反応に困るから会社を潰すって。
色々と飛躍しすぎだよ。あと、どういう理論かと考えたけどたぶん理論が成り立ってないと思うんだよね。
「でも、僕がこの段階であそこまで大規模な攻撃を受けたんだから、皆の対策もしっかりしないとね。……とりあえず暫く家を移ろうか」
「はぁい」
「予定通り引っ越しですか。いない間に爆破とかされないと良いんですけど」
皆にはもうこういう事態があることを予想して引っ越しの準備をしてもらってる。必要最低限の私物だけ持ってもらって、
「じゃあ、しゅっぱ~つ」
まとめた荷物を持って車に乗り込んでもらう。この辺はまだまだ渋滞してるんだけど、そこは色々と解決方法がある。例えば、ちょっと袖の下を通せば、
ウゥゥゥゥゥウ~~~~~~!!!!!!
サイレンの音を響かせながら、僕達の乗る車が走っていく。どの機関の車輌に乗っているかは明言しないけど、緊急車両を使ってる。こうすれば流石に渋滞でとどまっている車たちも避けて通すしかない。
いやぁ~。簡単に通れて良いねぇ。
「す、凄い犯罪を犯してる気分っす」
「ハハハッ。かけてる迷惑以上に国にお金を落として貢献してるから良いでしょ」
「か、金持ちって怖いっす」
宿利ちゃんは少し挙動不審な感じ。こんなことが許されていいのかと葛藤しているみたいだよ。僕もちょっと罪悪感はあるけど、デパートの幾つかの階層を銃と爆弾で破壊してくような敵に対してはこれくらいしないと対応できないからね。
生き残るためだから許して欲しいな(上目遣い)
因みに、流石に1台に6人全員入るのは難しかったから2組に分かれて移動しているよ。僕が乗っている方には宿利ちゃんと明里ちゃんが乗ってる。
残りの3人は別の車輌だね。
「そろそろ渋滞区域を出ますので、乗り換えをお願いします」
「うん。ありがとねぇ」
流石にこういう車輌をずっと乗り回すわけにも行かないから、渋滞区域の大変なところを抜けたら一般車両に乗り換える。こういうところで乗る車輌を変えて、向こうに乗っている車を分からなくさせるって言う効果もなくはないかな。
僕は乗り換えた後の車輌で乗っていた人に状況を尋ねることにする。
「僕の監視は?」
「今のところ確認されていません。ヘリの時点で監視はなくなりましたし、その後の行動でも監視は付きにくいものかと」
「そう?じゃあ、家の方の監視はどうなってるか分かる?」
「そちらはかなりの数がいますね。それでも高い精度の防衛設備がありますので距離を開けなければなりませんし、まだ向こうは家の中にいると疑っている可能性も高いかと」
「なるほど」
家の防衛能力はかなり頑張って充実させたからなぁ。ドローンが飛んできても全部打ち落とせるようにはなってるよ。
……ここからは、どこまで誤魔化しきれるかが大事になっているね。




