10.ヘリ脱出しても問題ないよね?
「えっ!?ギャアアァァァァ!!???」
「は、速い!銃を構えろ!!」
叫び声とと共に、銃声が聞こえてきた。どうやら更に下の階に諸々を設置する人がまだいたみたいなんだよね。爆弾が重点的に仕掛けられていたのであろう場所に向かって銃を乱射しているよ。そんな中、僕はまたその人たちがいる階層にも床に力をかける。そうしながら、僕は逆向きの風を起こして落下速度を緩和。
なかなか骨が折れる作業だよ。爆弾を警戒して探しつつ、落下死しないように落下速度を調整するなんて、後方で指示を出すだけのタイプの僕がやることじゃないんだよね。幸いなことに(?)爆弾はこれ以上しかけられてはいなかったみたいだからここまで崩れることはなかったけど。
なんか働かされてムカつくから、あの人たちの銃をちょっと操って、
「わっ!?銃が変な方向に!」
「え?あっ!そっちに向けるな!」
「そっちは外だぞ!?撃つのをやめろぉぉ!!!!」
仲間の制止する声が響く。でも、少し遅かったね。
すでに僕が術でちょっかいをかけた人の銃は外の窓ガラスに向いていて、バリバリと音を立てながら窓ガラスが割れた。で、僕が何を目指していたかって言うと、
「うおっ!?凄い風!?」
窓から吹き込む風。かなりここは高いところにあるから、遮るものが少ないんだよね。そのためその割れた窓からの風を受けて、銃を持った数人は顔を手で覆っている。
お陰で僕のことにも気付いてないようで万々歳。
「くそっ!すぐに下に降りるぞ!」
「「「了解!!」」」
恐らくリーダー的ポジションなのであろう人が指示を出し、全員階段の方に走っていく。なんとなくイタズラしたくなったからもう1回操作して、
「え!?キャアアァァァ!!!???」
「おい!?こっちに来る、なぁぁぁ!!???」
「っ!?巻き込まれるぞ!横にそれろ!!」
1番最後尾の人を階段で転ばせる。次々と前に走っていた人を巻き込んで落ちていき、狭い階段で避けることもできずに全員巻き込まれて転がっていく。
……うん。スッキリした。ちょっと撃たれたり爆発させられたりでストレス溜まってたからね。
それじゃあリフレッシュもできたところで、
「ばいば~い!」
僕は誰に対してというわけでもなく別れを告げ、跳躍する。その先にあるのはデパートの外。つまり、地面までまだまだ距離のある空中。
僕は、銃によって撃ち抜かれた窓に走ってそこから抜け出した。足元には、というか、僕の下方には沢山のドローンが階段を降りて来るであろうと想定された仮初めの僕を狙っている。読みが甘かったね。
僕は階段で降りたりなんかせず、
「よし!間に合ったね!!」
目の前に現われた縄ばしごを掴む。そして、縄ばしごの上にある縁に引きずられるようにして、ドローンを置いて大空を舞うのであった。
……うん。凄い格好良くない?なんかのスパイ映画っぽくて目茶苦茶ノリノリで走っちゃったよ。
で、何があったのかを説明するね。簡単に言えば、僕が窓から出てきたところをヘリが拾っていった、って話なんだけど、ちょっと簡単すぎるよね。
もうちょっと詳しく説明すると、まず僕は安全な(爆発しない)階に着地した段階で連絡を取ったの。連絡したら護衛関係の人がすぐに迎えに来てくれる素晴らしいボタンがあるから、それをポチッとしただけ。するとすぐに何かが空中から近づいてくる音がしたから、飛び乗れるように走って移動。出ることができるのは割れた窓ガラスだけだったから、そこへジャンプ。
抜け出した先にはまだヘリが来てなかったんだけど、即座に、回り込みつつ縄ばしごが降ろされ、僕がそれにしがみついた。というわけだよ!!
こういうアクションって楽しいね!
「……大変申し訳ありません」
「いやいやぁ。気にしないで」
無事にヘリで脱出できた後、ヘリの中で僕は頭を下げられていた。僕はそれに気にしていないと伝えている状況。
なぜ謝られているのかと言えば、
「護衛として御身を守らなければならない立場にもかかわらずこのようなことになり……」
「だから気にしてないって。それよりも対策を立てないと!!」
一応護衛という立場で、僕の身に危険が及んだときには助けてくれるという手はずにはなっている。
ただ、今回は何かあったみたいでそれが上手くいかなかったみたいなんだよね。僕を見失った時点でヘリは動かしていたみたいだけど、僕の正確な位置も分からなかったらしくて。僕が救出してもらうために連絡を取ってやっとGPSから位置を特定できるようになったんだとさ。
かなりこの護衛たちも腕が良いんだけど、それを対処できるんだから本当に厄介な敵だね。
「で、具体的に何があって僕を見失ったの?」
さっそく向こうへの対策を立てるため、話を聞いてみることにする。
自分たちの失態だからあまり話したくはない様子だけど、それでも仕事として割り切った様子で話が始まる。
「1階は小川様が見たとおり、人が大勢いたのです。そこで小川様の身の回りを守る数名が波を捌けずに押し戻されまして」
「ふむ。それで僕を見失った、と」
「はい。その通りでございます。大変申し訳なく」




