18.ミッションコンプリートも問題ないよね?
「私はお姉ちゃんと一緒にいるんだけどぉ、学校の前に制服でご飯を食べてると変態はわざと箸を落としたりして屈んでぇ、お姉ちゃんのスカートの中を覗こうとしたりするのぉ」
「う、うわぁ。気持ち悪いッスね。……でも、攫われる前にいた学校にもそんな感じの男子いたッス」
「あっ。そうなの?じゃあまだこの話じゃ変態性が伝わらないかぁ」
少し悔しそうな顔をする美春ちゃん。変態性を伝えてドン引きさせたかったのかな。そんなところを頑張らなくても良いと思うんだけど。
「じゃあ次の変態エピソードねぇ。お姉ちゃんが自分の部屋にいるときとかは部屋の扉の前で待っててぇ、出ようとしたところをと丁度通りかかったみたいなフリをしてぶつかろうとするのぉ。そしてぇ、それとなく、というより、がっつりお姉ちゃんの胸とかお尻とかを触ろうとしてたねぇ」
「あっ。それは普通に気持ち悪いッス。学校の男子もそこまではしてなかったッスね」
「よぉし。変態を伝えられたねぇ。私の目標達成ぃ」
そんな目標を達成しなくて良いと思うんだけど。でも、どこか達成感溢れてやりきった表情をしてるから良いかな?そんなところで達成感を感じないで欲しいという気持ちはあるけど、あまりそこを気にしすぎてもね。
何を目指すかは個人の自由。
なんて考えてたら、何か感じる物があったのか横から、
「因みに私はその変態の許嫁だったんだけど、私がいるのに変態は美春のお姉ちゃんに告白したんだよ。最低だよね」
「う、うわぁ。最低ッス。……元気出して下さいッス」
宿利ちゃんは葵南ちゃんを励ますように声をかける。相当な恨みを感じ取れただろうからね。僕もちょっと圧を感じたよ。
でも、そんな宿利ちゃんに葵南ちゃんは首を振って、
「ああ。気にしないで。今は私も気にしてないから。目覚君に助けてもらって許嫁でもなくなったし」
「あっ。そうなんスね。それは良かったッス。……けど、目覚君ッスか」
僕に目が向けられる。僕はにへら~と笑っておいた。
可愛いでしょ?
「無邪気そうに笑ってるッスけど、さっきので腹黒なのは分かったッス。だまされないッスよ。……それで、目覚君って何者なんスか?」
「何者?」
僕は首をかしげる。僕は僕でしかないわけだけど、宿利ちゃんはそういう答えが聞きたいわけでは無いと思うんだよね。
僕は何者と言うべきか……。なんて悩んでいると、
「確かに気になるよね。一緒に住んでるけど、結局凄いって事しか分かってないんだよねぇ」
「一応大きい会社の株を沢山持ってるのは知ってるけど、それ以外の繋がりも沢山あるよね。……目覚君って何なんだろう?」
「あっ。親がお金持ちなだけかと思ってたけどぉ、目覚君自身もそんな凄い人なんだぁ。……目覚君って何なのぉ?」
他の3人からも質問される。
大株主って答えたら良いかと考えてたのに、葵南ちゃんがそれだけじゃないとか言っちゃったね。僕の回答をまた考えないと。
「うぅん。何って言われてもなぁ……あっ。でも、簡単に言えば運が強い人、かな。偶然に厄介事が降りかかってくることもよくあるし」
たまたま家出した明里ちゃんに出会うくらいには運が強いよ。どれだけ確率が低いことかとは思うけど、それでも出会うのが僕だから。
運が良いとは言えないけど、他にも沢山強運なエピソードは話せるよ。自慢はできないような悪運エピソードとか。
「確かに運は強いよね。目覚君と一緒にいると色々あるし。……でも、運が強い以外の理由で巻き込まれるトラブルも多いと思うんだけど?」
明里ちゃんが痛いところを突いてくる。確かに僕が動く影響で色々トラブルが起きてるところもあるからね。
明里ちゃんを取り返すときも、葵南ちゃんを引き取るときも、桜田姉妹を神道家に紹介するときも。
「うっ。そ、それは、運が良いのに加えて僕にお金があったりするのが問題だとは思うけどさ……何?明里ちゃんは助けられない方が良かったの?」
「え?あっ。い、いやいや。そういうことじゃないよい!ちゃんと感謝してるから!」
僕の反論で明里ちゃんは慌てる。さっきの言葉だとまるでトラブルを起こすのがいけない事みたいに聞こえたからね。
そんな僕たちの会話を聞いて、
「あっ。ここに居る人たちって全員何かしら目覚君に助けてもらってるんスね」
宿利ちゃんはどこか納得した表情でそんなことを言う。それを訊いた僕以外の3人は顔を見合わせて、
「「「確かにそうだねぇ」」」
同意した。
実を言うとって言うわけでもないけど、そうなんだよね。皆僕がゲームの知識と人脈チートを使って助けたんだよ。
助けたからこそ、皆僕の周りにいるんだと思うんだけどさ。
「そんなに人を助ける機会があるのは、確かに強運かもしれないッス」
「そうだね。運だけでは無いと思うけど、運も強いよね」
皆納得したように頷いている。納得してることが嬉しいことではないので釈然としないけど、皆仲良さそうで良かったよ。
なんていう風に暫く時間を過ごした。そして、
「目覚様。全ての作業が終了しました」
資料の押収と施設にいた人たちの捕縛と殺害、研究用の機械の解体など。それらが完了したらしい。頼んでた仕事が完了したって事だね。
「OK!じゃあ、帰ろうかな。神道家までお願いできる?」
「はい。では出発します」
車が動き出す。僕たちが乗ってる車以外は全て専用の倉庫に向かったよ。資料の保存とかしなきゃいけないからね。
僕たちの車が数分かけて神道家に到着すると、
「美春ううううぅぅぅ!!!!!」
「お姉ちゃあああああぁぁぁぁぁぁん!!!!!!!」
感動の再会が行なわれた。風花ちゃんと美春ちゃんは抱き合って再会を喜んでるね。目の端には涙も浮かんでる。
助けたときには怯えた様子は全く無かったけど、美春ちゃんも怖かったのかな?
暫く抱き合って泣いた後、2人は僕の方まで来て、
「「ありがとうございました」」
2人揃って深く頭を下げた。
「目覚君ありがとう。美春は最後の家族で、なくしちゃうんじゃないかって本当に怖かったの。ずっと感謝し続けるわ」
「聞いたよぉ。お姉ちゃんも助けてくれたんだってねぇ。私もお姉ちゃんは最後の家族だしぃ、私だけが助かってもお姉ちゃんがいなかったらたぶん自殺してたよぉ。本当にありがとね!」
それぞれお礼の言葉を言ってくる。喜んでくれてるみたいだね。ここまで感謝してくれると、僕も助けた甲斐があったというものだよ。
「ふふっ。2人が無事で良かったよ。頑張って鍛えて、もう何があっても危なくならないようにしてね」
「当然よ!美春は私が守ってみせるわ!!」
「当然だよぉ。お姉ちゃんは私が絶対鬼守るんだからぁ」
同じようなことを言う2人。素晴らしい姉妹愛だね。思わず僕まで笑顔になっちゃう。
そうして僕が和やかな気持ちになっていると、
「あのぉ。小川様」
「ん?何?」
神道家の人に話しかけられた。




