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13.助けに入っても問題ないよね?

《side桜田美春》

「力を活用して、怪物化……」


その言葉で私は思い出す。今日、私が攫われる直前に起こっていたことを。

まず最初に起こったのは、変態の体調の悪化。力の9割くらいが失われ、怪物へと至る方向に変換されていた。確か最初は原因不明だったのに、目覚君が調べてみるように言って判明したんだよね。あのときに私は初めて怪物化の言葉を聞いたと思う。

そして次に起こったのが、変態を含めた数人の怪物化。これは力の何割が失われて体調が悪化するとかではなく、本当に怪物に変わった。勿論ほとんどはすぐに神道家が対処して沈めたけど、変態に関しては時間が掛かった。そして、それに手間取っている間に隙を突かれて私は攫われた。

それとここで行なわれている実験を併せて考えるとぉ、


「計画的な犯行かなぁ」


ここでの実験のために私は連れ去られた。そして、私を連れ去るために神道家の内部に何か仕掛けた。その仕掛けのやりようとここの研究が似ていることを考えると、かなりしっかり仕掛けをしてる。

っこれは計画的と考えて良いよねぇ。


「ん?どういう事ッスか?」


女の子は首をかしげる。私の呟きだけだと何が言いたいのか分からないよねぇ。でも、全部話してると時間が勿体ないし、今回は誤魔化しておこぉ。


「いやぁ。何でも無ぁい。ちょっと攫われたときのことを考えてただけぇ」


「ああ。そうッスか」


「うん。それよりもぉ、ここのことをもうちょっと詳しく教えてくれなぁい?」


私は情報を集める。怖くて仕方ないけどぉ、ここで泣いてる暇はない。少しでも速く脱出して、お姉ちゃんに会いに戻らないと!



《side小川目覚》

「……分かった。こっちもやれることはやるよ。1回頼りになりそうな知り合いに声をかけてからそっちに向かうね」


『うん。……ありがと』


僕たちはそこまで話して、1度電話を切る。かなり大惨事になったね。風花ちゃんもかなり辛そうだったよ。ここまで向こうが行動してるのは予想外。

色々関わっていそうなことを考えながらも、僕は風花ちゃんに言ったとおり頼れそうな所へ連絡を。幾つか役に立てそうという返信が返ってくる。

とはいえ、


「ほとんどの問題は解決してるって言って良いんだよねぇ」


こういう困ったことが起きたときのために細工は幾つかしてる。だから、どうにかなりそうではありそうだよ。


「そ、そうなんだ?」

「私たちには全く事情が伝わってきてませんけど、大丈夫そうなんですか?」


明里ちゃんと葵南ちゃんは僕たちの会話の一部しか聞こえていなかったみたいで、あまり事情は分かっていない様子。それに、風花ちゃんも焦ってたのかかなり支離滅裂な話をしてたからね。ゲームの知識が僕に無かったら理解は難しかったかもしれない。

有って良かったゲーム知識。


「移動しながら説明するね」


僕は急いで移動用の車を呼んで、神道家に移動する。事情を聞いたり、データを取ったりしないといけないから。

その移動の間、2人には簡単に事情の説明を。大事なのは、主人公君を含めた数人が怪物になっちゃったことと、美春ちゃんが攫われたことかな。


「えっ!?あの子が怪物に!?……神道家は最悪の想定を回避できなかったんですね。拘束しておけば良かったものを」


「いや。あの子以外にも一応怪物になった人はいたみたいだし、それだけじゃ足りないんじゃない?しかもそれに便乗する形で誘拐犯が来たんでしょ?あの子を拘束するだけじゃ対処しきれないよ」


葵南ちゃんが神道家へ文句を言い、明里ちゃんがフォローする。とはいえ、神道家に落ち度がないわけではないよね。というか、僕の視点から見れば落ち度だらけ。大きな失態だよ。

なんて思っていると車は神道家の建物に近づいてきて、


「うわっ!?凄い被害!」


「ここまで被害が出てるんですね。恐ろしいです」


見えてくる大損害を受けた神道家の建物。半壊してると言っても良いだろうね。激しい戦闘が起ったのが分かるよ。

僕たちはそこへ入っていく。するとすぐに出迎えがやってきて、


「小川様。こちらへどうぞ」

「まだ安全点検が終わっておりませんので、向こうの方へは行かないようにお願いします」


そう言われた次の瞬間だった。


「ゴアアアアアァァァァァァ!!!!!!」


雄叫びのような声。僕たちはその方向へ視線を向け、見たものを認識した瞬間僕は走り出す。


「「小川様!?」」

「「目覚君!?」


驚いてるけど、ゆるして欲しいね。

……はぁ。僕は自分で動くキャラではないんだけどなぁ。偉そうにふんぞり返って人に指示を出すのが性に合ってるんだけど。今回ばかりは仕方ないかなぁ。


「ゴアアアアァァァァ!!!」


振り下ろされる怪物の腕。僕はその前に立ち、防御の術でそれを防ぐ。

そして、怪物に襲われかけていた人に目を向け、


「……大丈夫?風花ちゃん」



《side桜田風花》

私は目覚君に連絡をとった後、神道家の人たちに目覚君が言っていたことを伝えた。やりとりの仲介役みたいになってるけど、今はそれでも良い。少しでも速く美春が助かるなら、何だってやる。

私の話を聞いた神道家の人は、


「分かったよ。小川様の対応はこっちでしておくから、あんたは安全な所へ移動しな」


「は、はい。ありがとうございます」


私は避難するように伝えられた。しかも護衛の人までつけてもらって、私は移動していく。

ただ、その間も連れ去られた美春のことで胸がいっぱいだった。だからこそ、


「ゴアアアアァァァァ!!!」


近づいてきていた化け物に気付かなかった。


「ここは私たちが抑えておきますから逃げ……ぐあっ!?」

「ごはっ!?」


護衛の人たちは、一瞬にして蹴散らされる。そんな強い力を持った怪物には見覚えが。

あの顔は、


「ア、オ゛ナァァァ……フヴガァァァァァ」


葵南や私を呼ぶ声。怪物の口からそれが漏れ出てくる。頭が回らなくて呆然としている私の前で、ゆっくりと化け物の手が伸ばされていた。

命の終わりを悟り、目の前が真っ白になる。ごめん。美春。私はもう会えそうにないわ。

なんて思った。でも、


「……大丈夫?風花ちゃん」


化け物の腕が私に届くことはなかった。代わりに1人の少年の、小さくて細い手が私に差し出される。彼はいつも通り和やかな笑みを浮かべていて、


「……め、ざめ、君?」


「うん。そうだよ。……早速で悪いんだけど風花ちゃん。力を貸してくれないかな?僕の力だとたぶん1分も防御が持たないんだよねぇ。僕一般人だから」


「え?」


あっけらかんと言う目覚君。私は驚くけど、目覚君の言葉を理解してそれどころではないことを悟る。1分も持たないって言うことは、


「ちょっと待って!すぐにやるから!!」


私が急いで術を行使する。こんなところで防御を突破されるわけにはいかない。この天使みたいなのに良いところでは助けてくれる王子様みたいな目覚君も、それに助けてもらった私も、ここで終わるわけにはいかない!!

私は防御だけじゃなく、攻撃の方にも力を使う。


「……変態退散よ!!」


思い切り、今出せる全力で術を使った。私はまだまだ未熟だけど、何もできないわけではない。ここでこの化け物になった変態を倒して、生き残ってみせるわ!!


「生き残ってやr……」


あ、あれ?意識が遠のいていくわ?なぜかしら!?

ちょっと!?折角術を使ったのに、結果が分からないじゃない!ごめんね目覚君!!

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