4.充実してても問題ないよね?
「……うぅ~し!今日も終わったぜ!」
「お疲れ~」
学校が終わった。後は帰るだけ。
「じゃあ、また明日な」
「うん。ばいばぁ~い」
友達に手を振って教室で別れる。その瞬間、誰かにがしっと抱きつかれて、
「目覚君!帰ろ~」
一緒に帰ろうと誘ってくる声。この声、そして背中の感触。間違いないね。明里ちゃんだよ。
そして、その光景を見た友達を含めたクラスメイトは、
「「「「……えっ!?」」」」
困惑の声を漏らす。全員体が固まってるね。突然のことにビックリしてるんだろうけど。
僕は不満げな顔をしながら、
「明里ちゃん。学校だと極力関わらないようにしようって言っといたじゃん」
「アレは私が友達を作れるようにするためでしょ?友達作ったから良いじゃん。それに、見た感じ帰るのは1人でしょ?一緒に帰った方が楽しいよ~」
「いや、質問攻めにされるのが面倒なんだよ。それに、1人で帰っても暇が潰せるようにスマホも買ってあげたでしょ?」
「そうだけどさぁ~」
明里ちゃんは唇をとがらせる。文句を言いたいのは僕のはずなんだけどね?
僕は「はぁ」とため息をついて、
「まあ、知られちゃったし帰ろうか。質問攻めにされる前に逃げるよ!」
「らじゃ~」
明里ちゃんに呼びかけて、小走りで廊下を通る。廊下を走っちゃったダメって言われてるけど、小走りなら良いよね?え?ダメ?……まあ、バレなきゃ問題ないでしょ!
そして結局、2人で電車に乗って家に帰る。
「……ただいま」
「ただいまぁ!」
僕は少し疲れた声で、明里ちゃんは楽しそうに帰宅する。ちょっとムカつくね。僕が困ってるというのに明里ちゃんだけ楽しそうで。
ムカつくから腹いせに仕返ししてあげよう。手を洗った明里ちゃんをソファーまで引っ張って、……押し倒す。
「えっ!?ちょっ!目覚君!?」
「ふふふっ。約束を破る悪い子にはお仕置きだよ。……新しい制服を汚しちゃうことになるけど、仕方ないよね」
僕たちは制服を着たまま絡みついた。その後の洗濯がちょっと大変だったとだけ書いておこうか。
そんでもって、結局次の日に質問攻めに遭ったとも書いておこうか。さらにさららに、なぜか僕と同棲してることをものすごく自慢げに明里ちゃんが語っていたとも書いておこう。家出関連のことは話してないから、親戚だと思われてるのが救いだね。
……お仕置きがたりなかったかな?
数日後。
「ふふふぅ~ん」
「……楽しそうだね」
明里ちゃんが楽しげに鼻歌を歌ってた。最近ずっとこんな感じなんだよねぇ。テンション高すぎて怖いんだけど。
夜に押し倒したときも妙に積極的だし、何か裏があるんじゃないかって思ってる。
「そりゃあね。こっちの生活にも慣れてきて、外の世界ってこんなに楽しいんだって実感してさ。毎日が充実してるんだよ!」
「そっか。それは良かったね」
そう言われると僕も皮肉は言えない。逆に、思わずこっちまで笑顔になりそうだよ。幸せって言う雰囲気が全身から溢れてるよ。
「なぁ。四ノ原さんに小川」
「「ん?」」
2人で話していると、男子から話しかけられた。話しかけた男子の他に、こちらへ視線を向けてきてるグループが幾つか。これはわりと大きなグループからのお誘いだろうね。
「今日皆でボウリング行くんだけど、2人も一緒に行かね?」
「ん~。僕は行っても良いけど、……明里ちゃんはどうする?」
明里ちゃんにも意見を聞いてみる。僕は凄い賛成なんだけどね。久々に体育と2人の絡み合い以外での運動もしておかないと。
と思ってたんだけど、尋ねられた明里ちゃんは
「……ぼうりんぐ?」
と、かわいらしく首をかしげた。
「え?もしかして、ボウリング分からない?」
「う、うん。分かんない」
わぉ。分からないかぁ。確かに神道家にずっとこもってたら分からない物なのかもね。ここは折角だから僕が教えてあげるとしよう。
「僕たちも参加でよろしく!明里ちゃんに教えておきたいから!」
「わ、分かった。べつに投げるのは俺たちが教えてもいい」
「あっ。それは僕がやるから大丈夫だよ!」
「……そうか」
残念そうに肩を落とす男子。でも、目的はある程度果たせたから落ち込みすぎてはいないみたいだね。可愛い可愛い明里ちゃんを放課後の遊びに誘うという目的が果たせたんだから。
男子が去って行った後、
「……ねぇ。教わるのはあの人からでも良かったんじゃないの?」
不思議そうに明里ちゃんは質問してきた。
さすがは箱入り。ボウリング以外も分かってないなぁ。
「何言ってるの明里ちゃん。アレはたぶん距離を近づけたいとか、教えるついでに体に触れたいとか言うヤツだよ」
「えっ!?そうなの!?」
「そうだよ。何か教えるとか言う場合は合法的に密着できるチャンスだからね。男子からそういうことを言われたときは気をつけなよ。全部がそういう目的とは言わないけど、そういう下心の多い目的のこともあるから」
「わ、分かった」
その後ボウリング場へ。事前に基本的なルールと安全な投げ方だけ教えた。後は実際に見せてみて、現場で理解させるのが1番でしょ。
「ほいっ!……ストライク!」
カコカコカコーンッ!と言う気持ちのいい音と共にピンが取れていく。センターピンを捉えて全部倒せたよ。今のところ最低7本できてるからかなり順調。
一方の明里ちゃんはと言うと、
「あっ!?線越えちゃった!」
「ぎゃぁ!?ガーター!!」
かなり不調だね。初めてだからそんなモノなのかもしれないけど。
でも、僕が見るのは明里ちゃんではなく、それを眺めている男子達。あんまり上手くいかないと良い投げ方を教えるとか言って近づいてくる可能性があるんだよね。健全な距離感ならともかく体に触れさせてなんてあげないんだから!男子達が行動を起こそうと腰を浮かしたとき、僕は素速く明里ちゃんに近づいて、
「め、目覚君?」
「ほら。手はこうやって置かないと回転が掛かっちゃうよ」
「あぁ。うん。ありがと」
素速く改善点を指摘。こうすれば明里ちゃんは運動神経は良いから、
カコーンッ!
「わぁ!倒れた倒れた!」
「良かったね」
上手くピンを倒せる。上手くいったのを見て男子達は残念そうな顔をしてるね。男子からの密着の回避成功。そして、
「やったぁ~」
喜んだ明里ちゃんが僕に抱きついてくる。あぁ~、幸せな感触~。
でも、ここでずっとそうしているとクラスメイトから怪しまれる。抜け出さないと。
「明里ちゃん。次も投げられるから、行ってきたら?」
「あっ。そうだね。行ってきます!!」
球を持ってまた投げに向かう。腕を振り、最下点で球から手を離す。転がっていくボールはまっすぐに残ったピンへ向かって、
「スペア!!」
「おめでとう」
僕は素直な賞賛を。そして手を挙げて、
「「イエェ~イ!!」」
ハイタッチ。明里ちゃんとの身長差があるから、向こうはミドルタッチみたいになってるけどね。それでも明里ちゃんのはじける笑顔がまぶしいよ。ベッドの上の羞恥心と高揚感にまみれた顔も良いけど、こういう顔もたまには悪くないね。
「次々ぃ!!」
「えっ!?明里ちゃん待って!次は僕の番だからぁぁ!!!」
ただ、楽しくなって僕の時まで投げようとするのはやめて欲しかったけど。でも、気に入ったならまた連れてきてあげようかな。今度は2人で来ても良いかも。
結果としては僕が明里ちゃんに100点近く差をつけて勝利。明里ちゃんはまっすぐ転がると強いんだけど、3回に1回くらい回転をかけちゃうんだよね。ガーターも結構多かった。でも、その表情は満足げ。
「楽しかった?」
「うん!目覚君も色々教えてくれてありがと!」
「ふふっ。僕が教えたのはただの独占欲だから気にしないで」
「う、ん?…………え?」
僕の言葉に首をかしげる明里ちゃん。でも時間が経って理解したのか、その夜は向こうもかなり激しかった。まさか僕の方が押し倒される日が来るとは思わなかったね。
そんなこともありつつ、明里ちゃんとの学校生活も楽しんだ。




