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9.中身でも問題ないよね?

《side主人公》

「……仕方ないね。この際だからはっきり言って挙げるよ。今のあんたに、価値はほとんど無い」


「……は?」


俺の思考が止まる。


「あんたに価値があったのは、強い力を持っていて今後残す子供にも力があると思われたからだよ。でも、結局この間はあんたの半分くらいしか力の無い明里に負けたじゃないか。あの時点であんたの価値は大きく下がったんだよ」


「なっ……そ、そんな」


そんなところで俺の価値がいつの間にか下がっていた。そんなの知らなかった。確かに明里には負けてけど、アレは不意打ちみたいなものだったし、それに、


「で、でも、俺の子供の価値はあるんでしょう!?」


俺自身が弱くても、俺の子供も強い力を持つ。風花も強い力があるみたいだし、俺たちの子供はきっと凄い才能があるはずだ。

なんて、思ったのに。


「確かに価値はある。でも、今となってはその価値も大きく下がったよ」


「へ?」


価値はあるのは確かだと言う。だが、価値が下がった?


「あんたがお熱な桜田風花。その妹の桜田美春は、あんたよりも力が強いんだよ。もうあんたの子供じゃなくて、桜田美春の子供がいればそれで良いのさ」


「なっ!?そ、そんな!」


桜田美春。風花の妹で、一緒にいるところをよく見かける。将来の義妹なんて思ってたあの子が、


「う、嘘だ!俺より力があるやつなんて、いるわけがない!」


俺は否定する。そんなことがあり得るわけがないと。俺が1番なのだと。

だが、当主様は冷たい目をしたまま、


「私もそう思ってたよ。でも、違ったのさ。桜田美春はあんたの10倍近い力を持ってる。例え結婚相手が全く力の無い人だったとしても、子供はあんたより力が大きい可能性が高い」


「……そ、そんな」


美春だけじゃなく、その子供まで俺より力がある。そんなの、ありえるわけがない。きっと何か悪い冗談だ。

そんなことを思っていた俺に、当主様は冷ややかな目を向けて、


「だからあんたはもうほとんど用済みなんだよ。あんたよりもあの姉妹に労力を使った方がよっぽど良いね。余計なことしかしないあんたと違って、あの2人は仕事にもやる気があるし」


「…………嘘だ」


俺は否定したかった。そして、否定して欲しかった。


「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


だが、誰も否定はしてくれなかった。当主様の目は、どこまでも冷たいままだった。

俺の何かが大きく壊れていく。



《side小川目覚》

「ん?誰かから連絡が……あっ。風花ちゃんからだね」


僕のスマホが振動し、連絡が来たことを知らせてくる。連絡の主は風花ちゃん。チャットアプリに連絡は来ていて、


「え?何々?」


「風花から?何かあったんでしょうか?」


2人とも不思議そうな顔を。

僕は2人に知らせるためにも内容を見て、


「うわぁ」


思わず顔をしかめる。でも、仕方ないよね。


「2人の下着を盗んだの、やっぱりあの子だってさ」


「うわぁ~」


「最悪ですね」


2人の顔が歪む。僕も主人公君の行動は流石にどうかと思うところが多いね。本当に盗んじゃってたかぁ。

風花ちゃんルートの開設は諦めてはいたけど、これは完全に消滅したと考えた方が良いだろうね。流石に下着泥棒を好きにはなれないでしょ。


「風花と美春が可哀想」


「そうだね。あんな変態と一緒に暮らすことになるなんて。……明らかに昔以上にひどくなってるし」


「神道家は丸くなったけど、例の子がひどくなったのでプラマイ0かな。……神道家にどうやって注意するかは悩むね」


これは神道家が悪いとも言えないからね。確かに監視をしっかりしていないのは問題だけど、プライバシーに配慮するのも必要だし。逆にこれで風花ちゃん達のプライバシーにまで問題が及ぶのもマズいからね。悩むところだよ。


「……ん。追加でメッセージが来た」


風花ちゃんからもう1つ送られてくる。それが、


「……2人のものを被ったって言ってたらしい」


「「……うわぁ」」


2人ともかなり引いてるね。盗むだけじゃなくて被るのか……皆が気持ち悪いって思うのもよく理解できるよ。付き合ってすらいない相手の下着を被るなんて、そういうゲームの主人公だとしてもちょっとどうかと思うな。


「目覚君にやられるならまだしも、あいつにやられるのかぁ」

「目覚君ならどんど来いって感じなんですけどね。脱ぎたて渡しちゃうんですけど」


そう言いながら、2人はこちらをチラチラ見てくる。ついでに、少しズボンを下ろしたり、脚を広げたり。さりげないつもりなのかもしれないけどパンツを見せようとしてくるのはやめて欲しいね。


「……そんなことすると、下着じゃなくて本人を襲うよ?」


「「どうぞ」」


2人ともどうやらやる気みたい。主人公に自分のものを被られたのを想像して、僕に上書きして欲しいとか考えてるのかもしれないね。


「……こんな予定じゃなかったんだけどなぁ」


僕はそう口では言いながらも、喜んで2人を押し倒した。珍しく明里ちゃんが葵南ちゃんと同じくらい激しいのを求めてきて、すぐに2人は気絶した。……まあ、すぐにと言っても4時間くらい掛かったわけですが。


「主人公、どうするのかなぁ」


僕は気絶した2人を見ながら、懸念していることを呟く。

ここであの主人公が終わるとも思えないんだよねぇ。この間話をしてみた限りかなり自己中心的な思考の持ち主みたいだし、邪魔な僕を殺したいとか言っててもおかしくない。そして、ここで葵南ちゃんと風花ちゃんを諦めるとも思えない。


「でも、1作目と2作目の関わりは、僕としても気になるね」


今後の主人公がどう動き、どうやって続編と関わってくるのか。それが今僕にとっては不安で、そして楽しみな部分であった。

人生はこういうスリルも含めて楽しまないとね。



《side主人公》

「くそっ!」


当主様からきつい言葉をかけられた日から、俺は荒れていた。自分でも分かるくらいには荒れている。だからといって直す気もさらさらないけどな。

俺の不機嫌な様子に神道家の人たちは恐れ、学校の奴らは驚いたような顔をする。どちらも共通して、誰も近づいてこようとはしない。だが、それも当然だよな。俺だって明らかに不機嫌な様子のやつには話しかけようとは思わないから。


「ちっ!」


だが、分かっているからと言ってどうにかなるほど俺も柔軟ではない。というより、分かっている分だけに俺は余計に荒れる。

確かに俺たちの役目は人を守ることだが、あのガキを潰すこともやりたいし、働きたくもない。そうしたいと思うことと、それが叶えられないと分かることの両方が互いに互いを高め、俺の中の不満を増大させていく。

そんな時だった。


「よぉ。お前、随分荒れてんな」

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