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8.潰しても問題ないよな?

《side桜田風花》

「……良いなぁ~。先輩達、目覚君と一緒に住めて」


目覚君達が帰って。私は妹の美春と共にゆったりとしていた。

美春は葵南と明里のことをうらやましがってるみたいね。


「美春、随分と目覚君のこと気に入ってるわね」


「だって目覚君可愛いんだもぉん。……しかも可愛いお弁当まで作れてぇ、他の家事もできてぇ。チート過ぎなぁい?私もやっぱり欲しいぃ」


「やっぱり欲しいって何よ」


私は少し呆れながら言う。最初から貰える予定なんて無かったんだから。というか、モノでも無いんだし。

と、思ってたら、


「でもぉ、お姉ちゃんだって目覚君のこと気に入ってるんでしょぉ?」


美春がそんなことを尋ねてきた。確かに私だって目覚君のことは嫌いじゃない。というか、私も可愛いものは好きだから、目覚君はかなり良いと思う。


「素晴らしいとは思ってるわ。でも、だからこそ困らせてその可愛さが失われるのが怖くて、弱いところを見せたくないのよ。だから、今はずっと一緒にいたくはないわね」


可愛い者は可愛いままでいてほしい。そんな我が儘が私の中にはある。困った顔をするより、ずっと笑顔でいて欲しい。

もちろん、それは美春もそうだけど。


「お姉ちゃんは相変わらずだねぇ。でもぉ、ちゃんと困ったときには頼らなきゃ駄目だよぉ?たぶん1番頼りになるのは目覚君なんだからぁ」


「それはそうね。神道家の人たちも、目覚君の名前を聞くたびに顔が青ざめるし」


神道家の人が、目覚君が来たと言ってきたときのことを思い出す。全速力で走り、肩で息をしていて、青い顔ですぐに向かうように言われた。それだけ怖がらせて焦らせる何かが目覚君にはあるんだと思う。


「目覚君ってぇ、どっちかと付き合ってたりするのかなぁ?」


「……それ、どっちかが凄く居心地悪いと思うのだけど」


美春の言葉に、私はその光景を想像する。

まず、明里と付き合っている場合。元気の良いはつらつとした明里と目覚君が付き合い、その様子を済の方で見つめる葵南。葵南も優しい瞳で何も言わずに見守るだろうけど、きっと心の中では寂しく思うと思う。

次に、葵南と付き合ってた場合。葵南は目覚君にだけ敬語を使ってるから、付き合ってるとしたら尽くすタイプだと思う。かいがいしく目覚君の世話を焼き、その様子を明里が眺める。明里の場合は感情が表に出やすいから、不満そうな顔で2人を眺めると思うのよね。


「確かにぃ、付き合ってない方が寂しいねぇ。どっちかと付き合ってるってことは無いかぁ」


「そうだと思うわ」


暫く目覚君達の話で盛り上がる。

そのまま夕食の時間まで楽しく穏やかに過ごせるかと思ってたんだけど、


「じ、神道さん。一緒にゲームでもしない?」


ノックもなしに部屋に入ってきて、そんなことを尋ねてくる少年が1人。ノックをしないのは、おそらくあわよくば着替え中を覗けたらとか考えてるからでしょうね。この子、すさまじいほどに変態で気持ち悪いし。


「遊ばないわ。私たちは今、姉妹の仲を深めてるんだから」


「そ、そっか。じゃあ、俺もその話に」


「姉妹の仲を深めてるって言ったよねぇ?私たちは2人で話したいんだけどぉ」


入ってこようとする子を、美春はばっさりと切り捨てた。顔に、気持ち悪すぎて受け入れられないと書かれているわね。気持ちは分かるわ。

私も追い返したかったけど、すんでの所でその言葉を止めて、


「……あぁ。話と言えば、明里達の下着はどうしてるのかしら?」


2人との会話で疑問に思ってたことを聞いてみる。私たちは決めつけて良いと思ってるけど、目覚君は冤罪の可能性もあるし確認だけはした方が良いと言っていた。一応目覚君の言葉だし、従ってみたのよ。

でも、


「な、なんでそのこと知ってるんだ!?ま、まさか俺が被ってるところ見たのか!?」


慌てたように言う男の子。

私と美春は顔を見合わせ、


「「出て行って」」


強制的にその子を部屋から追い出した。今回の件は目覚君達に報告しておかないといけないわね。折角美春と楽しく話ができてたのに、最悪の気分よ。


「気持ち悪ぅ~」


さっきの子の言葉を思い出したのか、美春も顔をしかめているわ。全くもって同感ね。


「もう極力関わりたくないわね。今度から食事の時間をずらせないか家の人に聞いてみようかしら」


「そうだねぇ。そうしよぉ」



《side主人公》

風花の部屋から追い出された。今日こそ距離を詰めて、桜田さんから風花って呼び方を変えるつもりだったのに!


「クソッ!」


「ひっ!?」


俺の言葉を聞いて、すれ違った神道家の人が怯えた。……ちょっとあの人可愛かったな。

最近の俺はずっと機嫌が悪い。そして、良くないことばかり起こる。だが、その原因は分かっていた。あれもこれもあいつの所為だ。あの、葵南達を家に泊めてるガキ!あいつが葵南を家に入れた所為でこんなことになったんだ。

だから俺は、


「あのガキ潰してくれませんか?」


当主様にそう頼んでみた。

俺の頼みだし当主様ならすんなり頷いてくれると思っていたんだが、


「……はぁ?」


意外なことに顔をしかめられた。いつもなら大抵頷いてくれるのに。

俺が違和感を感じていると、


「……ガキって言うのは、誰のことを言ってるんだい?」


そんな質問をされた。

なるほど。そこが分からなかったんだな。確かにガキだけだと誰か分からないだろう。世界中のガキを全員潰すわけにも行かないだろうし。


「ああ。すみません。説明不足でしたね。……あの、葵南を家に泊めてるガキです」


「……あの人を潰してほしい、と言っているのかい?」


「ええ。その通りです。できますよね?」


神道家ならそのくらい余裕だろう。ちょっと裏社会の凄い人とも関わりがあるって聞いてたし、1人潰すくらいどうにだってできるはずだ。しかも、一人暮らしのガキならなおさらな。

だが、なぜだか分からないが当主様は頭を抑える。そして、


「……神道家は人を化け物から守るためにいるんだよ?なんで逆に人殺しをしなきゃいけないんだい」


そんなことを言ってきた。当主様は何を言ってるんだろうか?そんなの分かりきってると思うんだが。


「それは、俺が殺して欲しいからですよ。人を1人殺して俺が気持ちよく生きられるんですから良いじゃないですか」


俺は選ばれた存在だ。その辺の人間より何倍も偉い。強い力を持ってるし、やろうと思えば怪物なんてすぐに倒せる。まあ、面倒だから家の人に任せてるけどな。家の人が倒せるレベルの相手と俺が戦っても意味ないし。

そう思っていたんだが、


「……あんた、今のあんたにそれだけして機嫌を良くしてやるほどの価値があると思っているのかい?」


「…………は?何を言ってるんですか?」


当主様の言葉に困惑する。そんなの、あるに決まっているのだから。俺の機嫌が良いことは神道家の望みだろう?

それなのに当主様のこの反応はまるで、俺は必要ないみたいじゃないか。


「あんたは本当に愚かだね。それで都合の良い駒になるならまだ価値はあったんだけど」


「え?な、何ですか?何を言ってるんですか!?」


俺の問いに答えない当主様に、更に困惑を大きくしていく。

俺が愚かなはずがない。愚かなのは、俺に逆らうバカ達だろ?

そんな俺の思いは届かない。当主様は俺を冷たい目で見据えて、


「……仕方ないね。この際だからはっきり言って挙げるよ。今のあんたに、価値はほとんど無い」


「……は?」

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